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第一章 士官学校時代編
探索依頼 前編
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セリアとソレーヌが入学して一ヶ月ほど経ったある日、突然校長に呼び出された。
校長が私たちに何の用事だと不審に思いながらも校長室のドアをノックして敬礼して部屋に入る。
「失礼します。セリア・フォン・フレーベルとソレーヌ・ベルジェ、参りました」
「わざわざ済まないね」
校長はセリアとソレーヌの顔を見て席から立ち上がると、来客用のソファに座ってくれと手招きした。
こういう立場の人間が自分たちのような下の人間、ましてや生徒に対して笑顔を振りまいて下手に出てくる時はロクな用件じゃない。
セリアとソレーヌはそう思いながらも手招きされるままに移動してソファに座ると早速本題を切り出した。
「それで、ご用件とはどんな事でしょうか?」
「それなんだ。実は昨日から行方不明になってる生徒を一人探し出して欲しい」
「はあ?」
セリアは思わず自分でも自覚するほど間の抜けた声を出してしまった。
「失礼ですが、それなら衛兵に依頼した方がよろしいかと思いますが」
「それが出来るなら君たちを呼んではいないよ。これは学校内の事情だ。それに衛兵が出動するような事件性があるかもわからない。だからまずはこの学校内でも優秀と評価の高い君たち二人に調査してもらいたいのだ」
「そう言われましても、行方不明者の調査など私たちも初めてですし、お役に立てるかどうか」
「その行方不明の生徒がエミリア・イグレシアスと聞いてもか?」
「エミリア・イグレシアス!」
セリアとソレーヌはその名を聞いて思わず身を乗り出した。
エミリア・イグレシアスは剣を持てば校内最強と言われていた女子生徒で、セリアとソレーヌも一度会ってみたいと思っていた人物であった。
女性としては長身の一七五センチから繰り出す剣は破壊力抜群で、一対一で戦えばセリアやソレーヌでも勝てるかという実力者である。
全校生徒が五百人以上いるこの士官学校でクラスも別々であり、噂には聞いていてもセリアたちはまだ会ったことがなかった。
「そのエミリアが行方不明に?」
「最後に姿を目撃されたのが昨日の午後で、それ以降姿を消してしまっている。彼女の盟友でもあるジュディ・ジャーヴィスも懸命に行方を追っているが、一人では捜索範囲も限定されてしまう。それで二人に協力してもらいたい」
「ジュディ・ジャーヴィスも捜索しているんですか?」
ジュディ・ジャーヴィスは槍の達人で、やはり槍においては校内では無敵の強さを誇る騎士候補生であった。
セリアとソレーヌがこの校内で唯一仲間に加えたいと思っていた二人の名前が挙がった事で、この一件に興味が湧いてきた。
「わかりました。その二人が絡んでいるとなれば私たちも協力しましょう」
セリアの返事に校長は少しだがしたり顔の表情を浮かべた。
「おお。協力してくれるか。ありがたい」
これは校長の思惑に乗せられたかなとセリアとソレーヌは思ってはいたが、ジュディとエミリアの二人と何らかの接点を持ちたいと考えていた矢先の事だったのであえて乗る事にした。
「校長、ここまでの経緯を詳しく聞かせて下さい」
エミリアは不敵な笑みを浮かべていた。
両手両足を縛られて上から吊るされ、身体中至る所に鞭で打たれた傷跡が痛々しくつけられているにも関わらず。
エミリアを拐っていったのは日頃からジュディとエミリアの二人に剣術の授業でやられていた貴族子息たちであった。
彼らにしてみれば一般市民であったジュディとエミリアにやられるのは屈辱以外の何者でもなかった。
その偏った怒りが起こした犯行であった。
まともに戦えば一対一どころか十対一でも勝ち目のないであろうエミリアに対して彼らは一人の女子生徒を金で買収した。
正義感の強いエミリアに女子生徒が「友人が複数人から暴力を振るわれているから助けて下さい」と助けを求め、エミリアが助けに行ったところをあらかじめ掘っておいた落とし穴に落とし、網で捕らえたのである。
エミリアも必死で抵抗したが、網に身体が絡んで身動き取れないところを十人がかりで寄ってたかって押さえつけられてはどうにもならなかった。
こうして捕らえられたエミリアは目隠しをされ、今いる場所に連れて来られた。
貴族子息たちの中でもリーダー格の男子生徒、ハインツ・ヨアヒム・ハプスブルクは笑いながらエミリアを見ていた。
彼の父親は伯爵に加えて帝国大臣の一人でもあり、学校内では教員たちも迂闊に口出し出来ない「お坊ちゃん」であった。
「さて、こいつをどうしてくれようか」
「決まっている。もう一人の邪魔者ジュディを誘き寄せるエサにするのさ」
「そいつはいい。餌がよければ釣れる魚もでかいという事か」
貴族子息たちの笑い声が飛び交う。
「二人揃ったところでまとめて始末してやる。ここは伯爵以上の身分しか入れない高官住宅街。この界隈で身分の低い一般人が二人ばかりいなくなったところで、うちのパパたちが極秘に処理してくれるさ。お前たちは行方不明のまま捜索打ち切りになり、そのうち忘れ去られる事になる」
ハインツがそう言うとエミリアは強気で言い返す。
「そうお前たちの都合の良いようになると思うな。私とジュディが揃えばお前たちの十人や二十人ものの数じゃない」
「強がりもその辺にしておけ」
再びハインツの鞭がエミリアの身体を容赦なく打ち付ける。
相当な痛みのはずだが、エミリアは声ひとつあげなかった。
エミリアはあたりを見渡したが、ここはどうやら食糧を保管する倉庫のようである。
伯爵以上の身分しか出入り出来ない場所という事は、高級将官の邸宅が並ぶハーフェンの南地区か。
(だとするとジュディがここまで来るのは難しいな。。私が自力で脱出するしかないか)
エミリアは両手両足を縛られ、満身創痍の状態からどう脱出するかを考えていた。
囚われてからほぼ一日、食事も水も口にしていない彼女の体力は限界に近づいていた。
セリアとソレーヌは早速調査を開始した。
校長の話しでは最後に姿が目撃されたのは校庭であったという。
校庭と言ってもこの士官学校内の校庭はハーフェンの宮殿内にあるので、綺麗に整備された緑の芝生の広場である。
戦術や乗馬の演習に使用するため、かなりの広さだ。
「こう言っては何だが、ジュディとエミリアの二人も君達と同様に一般市民の出身で、抜きん出た力を持っている事で日頃から貴族子息たちと対立していた。おそらくは、一部の貴族子息たちの仕業ではないかと私は睨んでいる。そうなると色々と面倒でな。とにかく内密に頼むよ」
最後に校長にそう言われてため息が出たが、ともかく動かない事には何も見えて来ない。
「ここで姿が見えなくなるとは、そもそもここまで一人で来る何か用事でもあったのか?」
セリアがまず不審に思ったのはその点である。
学校と生徒用の宿舎は隣接している。
だが、この校庭は宿舎とは反対方向だ。
授業以外で何か用事でもない限り、ここに来る事はあまり考えられない。
そう思っていると背後から人の声が聞こえた。
「エミリアがここに向かったのを目撃した生徒の証言では女子生徒が一緒にいたと言っていたそうだ。そうなると何かに巻き込まれた可能性が高い。おそらくはボクたちを目の敵にしていた貴族子息たち。。」
「お主は?」
「ボクはジュディ・ジャーヴィス。セリアにソレーヌ。二人の事は噂には聞いていて前から会いたいと思っていたんだ。その二人が一緒に捜索に加わってくれると聞いて嬉しいよ。エミリアはボクの大事な友人。何としても行方を探し出して、何か事件に巻き込まれているなら必ず助け出す」
「お主がジュディか」
ジュディは身長一六五センチで、ショートカットの金髪に青い瞳。
キリッと引き締まった表情にセリアとソレーヌは(噂通り、相当に腕の立つ人物のようだ)とその実力を雰囲気から感じていた。
女性だが自分を「ボク」と呼ぶ少し妙なところもあるが、セリアたちは気さくで明るいジュディに好感を感じていた。
「ジュディ、私たちもエミリアが無事でいる事を望んでいる。ここは協力して必ず見つけ出そう」
「もし、エミリアを見つけてくれたなら、そのお礼と言っては何だけど、ボクとエミリアは二人の仲間になり力になるよ」
その言葉はセリアとソレーヌにとっても願ったり叶ったりであった。
「ジュディとエミリアの二人には私たちもずっと会いたいし仲間に加えたいと思っていた。その二人の力を貸してもらえるなら私たちとしても申し分ない」
こうして三人は共に協力してエミリアを探す事となった。
一方、このエミリアの一件は皇女モニカの元にも報告されていた。
「エミリア・イグレシアスと言えば士官学校でも最強と評価の高い生徒だったな」
モニカは学校内でも評価の高い生徒はすべてチェックしている。
当然ジュディとエミリアもセリアたち同様に自身の配下に加えたいリストに入っていた。
「状況からの推測に過ぎませんが、おそらく日頃から彼女たちにやられている貴族子息たちの仕業でございましょう」
従者であるイリーナの推測にモニカも同意する。
「その可能性が高いな。くだらないプライドばかり高い奴らのやりそうな事だ。エミリアほどの実力者を拐って行ったとすれば相当な人数を掛けなければならないはず。イリーナ、この二日の間に高級将官の居住区で大人数による荷物などの出入りがなかったか調べてくれないか」
「高級将官。。一般の民間人が入れない地域に連れ去られていると?」
「あくまでも可能性の一つではあるがな。伯爵の子息が多いあの学校でそいつらが人を拐っていったのなら、まず考えられる行き先は高級将官居住区だろう」
「では、早速調べてみます」
「何かわかり次第報告をくれ。場合によってはジュディたちに居住区に入る許可を出す」
「御意」
セリアたち三人はエミリアの足跡を追うために校庭を入念に調べていた。
しばらくするとソレーヌが「セリア、ジュディ。ちょっと来てくれ」と声を上げたので行ってみると、不自然に掘られている穴を発見した。
「この穴、何だと思う?」
「こんな場所に穴を掘るのは不自然だな」
セリアが少し考えていたが、ジュディが穴の底からエミリアの髪を止めるピンが落ちているのを発見した。
「このピンはエミリアが髪を止めていたもの。そうか、エミリアはここに誘い込まれて落とし穴に落とされたところを捕まえられたのか」
ジュディは舌打ちした。
「まともに戦っては勝ち目がないので、小細工を弄したという事だ」
セリアは少し考えてから二人に自分の考えを伝えた。
「確か女子生徒と一緒だったと目撃証言があったな。その女子生徒を探しだして話しを聞こう。さらに詳しい事がわかるかも知れない」
セリアの意見にソレーヌとジュディも同意した。
校長が私たちに何の用事だと不審に思いながらも校長室のドアをノックして敬礼して部屋に入る。
「失礼します。セリア・フォン・フレーベルとソレーヌ・ベルジェ、参りました」
「わざわざ済まないね」
校長はセリアとソレーヌの顔を見て席から立ち上がると、来客用のソファに座ってくれと手招きした。
こういう立場の人間が自分たちのような下の人間、ましてや生徒に対して笑顔を振りまいて下手に出てくる時はロクな用件じゃない。
セリアとソレーヌはそう思いながらも手招きされるままに移動してソファに座ると早速本題を切り出した。
「それで、ご用件とはどんな事でしょうか?」
「それなんだ。実は昨日から行方不明になってる生徒を一人探し出して欲しい」
「はあ?」
セリアは思わず自分でも自覚するほど間の抜けた声を出してしまった。
「失礼ですが、それなら衛兵に依頼した方がよろしいかと思いますが」
「それが出来るなら君たちを呼んではいないよ。これは学校内の事情だ。それに衛兵が出動するような事件性があるかもわからない。だからまずはこの学校内でも優秀と評価の高い君たち二人に調査してもらいたいのだ」
「そう言われましても、行方不明者の調査など私たちも初めてですし、お役に立てるかどうか」
「その行方不明の生徒がエミリア・イグレシアスと聞いてもか?」
「エミリア・イグレシアス!」
セリアとソレーヌはその名を聞いて思わず身を乗り出した。
エミリア・イグレシアスは剣を持てば校内最強と言われていた女子生徒で、セリアとソレーヌも一度会ってみたいと思っていた人物であった。
女性としては長身の一七五センチから繰り出す剣は破壊力抜群で、一対一で戦えばセリアやソレーヌでも勝てるかという実力者である。
全校生徒が五百人以上いるこの士官学校でクラスも別々であり、噂には聞いていてもセリアたちはまだ会ったことがなかった。
「そのエミリアが行方不明に?」
「最後に姿を目撃されたのが昨日の午後で、それ以降姿を消してしまっている。彼女の盟友でもあるジュディ・ジャーヴィスも懸命に行方を追っているが、一人では捜索範囲も限定されてしまう。それで二人に協力してもらいたい」
「ジュディ・ジャーヴィスも捜索しているんですか?」
ジュディ・ジャーヴィスは槍の達人で、やはり槍においては校内では無敵の強さを誇る騎士候補生であった。
セリアとソレーヌがこの校内で唯一仲間に加えたいと思っていた二人の名前が挙がった事で、この一件に興味が湧いてきた。
「わかりました。その二人が絡んでいるとなれば私たちも協力しましょう」
セリアの返事に校長は少しだがしたり顔の表情を浮かべた。
「おお。協力してくれるか。ありがたい」
これは校長の思惑に乗せられたかなとセリアとソレーヌは思ってはいたが、ジュディとエミリアの二人と何らかの接点を持ちたいと考えていた矢先の事だったのであえて乗る事にした。
「校長、ここまでの経緯を詳しく聞かせて下さい」
エミリアは不敵な笑みを浮かべていた。
両手両足を縛られて上から吊るされ、身体中至る所に鞭で打たれた傷跡が痛々しくつけられているにも関わらず。
エミリアを拐っていったのは日頃からジュディとエミリアの二人に剣術の授業でやられていた貴族子息たちであった。
彼らにしてみれば一般市民であったジュディとエミリアにやられるのは屈辱以外の何者でもなかった。
その偏った怒りが起こした犯行であった。
まともに戦えば一対一どころか十対一でも勝ち目のないであろうエミリアに対して彼らは一人の女子生徒を金で買収した。
正義感の強いエミリアに女子生徒が「友人が複数人から暴力を振るわれているから助けて下さい」と助けを求め、エミリアが助けに行ったところをあらかじめ掘っておいた落とし穴に落とし、網で捕らえたのである。
エミリアも必死で抵抗したが、網に身体が絡んで身動き取れないところを十人がかりで寄ってたかって押さえつけられてはどうにもならなかった。
こうして捕らえられたエミリアは目隠しをされ、今いる場所に連れて来られた。
貴族子息たちの中でもリーダー格の男子生徒、ハインツ・ヨアヒム・ハプスブルクは笑いながらエミリアを見ていた。
彼の父親は伯爵に加えて帝国大臣の一人でもあり、学校内では教員たちも迂闊に口出し出来ない「お坊ちゃん」であった。
「さて、こいつをどうしてくれようか」
「決まっている。もう一人の邪魔者ジュディを誘き寄せるエサにするのさ」
「そいつはいい。餌がよければ釣れる魚もでかいという事か」
貴族子息たちの笑い声が飛び交う。
「二人揃ったところでまとめて始末してやる。ここは伯爵以上の身分しか入れない高官住宅街。この界隈で身分の低い一般人が二人ばかりいなくなったところで、うちのパパたちが極秘に処理してくれるさ。お前たちは行方不明のまま捜索打ち切りになり、そのうち忘れ去られる事になる」
ハインツがそう言うとエミリアは強気で言い返す。
「そうお前たちの都合の良いようになると思うな。私とジュディが揃えばお前たちの十人や二十人ものの数じゃない」
「強がりもその辺にしておけ」
再びハインツの鞭がエミリアの身体を容赦なく打ち付ける。
相当な痛みのはずだが、エミリアは声ひとつあげなかった。
エミリアはあたりを見渡したが、ここはどうやら食糧を保管する倉庫のようである。
伯爵以上の身分しか出入り出来ない場所という事は、高級将官の邸宅が並ぶハーフェンの南地区か。
(だとするとジュディがここまで来るのは難しいな。。私が自力で脱出するしかないか)
エミリアは両手両足を縛られ、満身創痍の状態からどう脱出するかを考えていた。
囚われてからほぼ一日、食事も水も口にしていない彼女の体力は限界に近づいていた。
セリアとソレーヌは早速調査を開始した。
校長の話しでは最後に姿が目撃されたのは校庭であったという。
校庭と言ってもこの士官学校内の校庭はハーフェンの宮殿内にあるので、綺麗に整備された緑の芝生の広場である。
戦術や乗馬の演習に使用するため、かなりの広さだ。
「こう言っては何だが、ジュディとエミリアの二人も君達と同様に一般市民の出身で、抜きん出た力を持っている事で日頃から貴族子息たちと対立していた。おそらくは、一部の貴族子息たちの仕業ではないかと私は睨んでいる。そうなると色々と面倒でな。とにかく内密に頼むよ」
最後に校長にそう言われてため息が出たが、ともかく動かない事には何も見えて来ない。
「ここで姿が見えなくなるとは、そもそもここまで一人で来る何か用事でもあったのか?」
セリアがまず不審に思ったのはその点である。
学校と生徒用の宿舎は隣接している。
だが、この校庭は宿舎とは反対方向だ。
授業以外で何か用事でもない限り、ここに来る事はあまり考えられない。
そう思っていると背後から人の声が聞こえた。
「エミリアがここに向かったのを目撃した生徒の証言では女子生徒が一緒にいたと言っていたそうだ。そうなると何かに巻き込まれた可能性が高い。おそらくはボクたちを目の敵にしていた貴族子息たち。。」
「お主は?」
「ボクはジュディ・ジャーヴィス。セリアにソレーヌ。二人の事は噂には聞いていて前から会いたいと思っていたんだ。その二人が一緒に捜索に加わってくれると聞いて嬉しいよ。エミリアはボクの大事な友人。何としても行方を探し出して、何か事件に巻き込まれているなら必ず助け出す」
「お主がジュディか」
ジュディは身長一六五センチで、ショートカットの金髪に青い瞳。
キリッと引き締まった表情にセリアとソレーヌは(噂通り、相当に腕の立つ人物のようだ)とその実力を雰囲気から感じていた。
女性だが自分を「ボク」と呼ぶ少し妙なところもあるが、セリアたちは気さくで明るいジュディに好感を感じていた。
「ジュディ、私たちもエミリアが無事でいる事を望んでいる。ここは協力して必ず見つけ出そう」
「もし、エミリアを見つけてくれたなら、そのお礼と言っては何だけど、ボクとエミリアは二人の仲間になり力になるよ」
その言葉はセリアとソレーヌにとっても願ったり叶ったりであった。
「ジュディとエミリアの二人には私たちもずっと会いたいし仲間に加えたいと思っていた。その二人の力を貸してもらえるなら私たちとしても申し分ない」
こうして三人は共に協力してエミリアを探す事となった。
一方、このエミリアの一件は皇女モニカの元にも報告されていた。
「エミリア・イグレシアスと言えば士官学校でも最強と評価の高い生徒だったな」
モニカは学校内でも評価の高い生徒はすべてチェックしている。
当然ジュディとエミリアもセリアたち同様に自身の配下に加えたいリストに入っていた。
「状況からの推測に過ぎませんが、おそらく日頃から彼女たちにやられている貴族子息たちの仕業でございましょう」
従者であるイリーナの推測にモニカも同意する。
「その可能性が高いな。くだらないプライドばかり高い奴らのやりそうな事だ。エミリアほどの実力者を拐って行ったとすれば相当な人数を掛けなければならないはず。イリーナ、この二日の間に高級将官の居住区で大人数による荷物などの出入りがなかったか調べてくれないか」
「高級将官。。一般の民間人が入れない地域に連れ去られていると?」
「あくまでも可能性の一つではあるがな。伯爵の子息が多いあの学校でそいつらが人を拐っていったのなら、まず考えられる行き先は高級将官居住区だろう」
「では、早速調べてみます」
「何かわかり次第報告をくれ。場合によってはジュディたちに居住区に入る許可を出す」
「御意」
セリアたち三人はエミリアの足跡を追うために校庭を入念に調べていた。
しばらくするとソレーヌが「セリア、ジュディ。ちょっと来てくれ」と声を上げたので行ってみると、不自然に掘られている穴を発見した。
「この穴、何だと思う?」
「こんな場所に穴を掘るのは不自然だな」
セリアが少し考えていたが、ジュディが穴の底からエミリアの髪を止めるピンが落ちているのを発見した。
「このピンはエミリアが髪を止めていたもの。そうか、エミリアはここに誘い込まれて落とし穴に落とされたところを捕まえられたのか」
ジュディは舌打ちした。
「まともに戦っては勝ち目がないので、小細工を弄したという事だ」
セリアは少し考えてから二人に自分の考えを伝えた。
「確か女子生徒と一緒だったと目撃証言があったな。その女子生徒を探しだして話しを聞こう。さらに詳しい事がわかるかも知れない」
セリアの意見にソレーヌとジュディも同意した。
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