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第一章 士官学校時代編
シャローラとティファ 出会い編
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シャローラ・オルブライト
十八歳。ティファたちと同じ士官学校に通う学生だ。
シャローラそれほど裕福とは言えない家庭の出身であった。
父親はネープ民族、母親はユージット民族で父の血筋を引いたシャローラは容姿端麗であった。
身長は一六〇センチ。黒に青みがかかったのセミロングヘアにアイスブルーの瞳。シルクのような白い肌はまるで歩く芸術品のようであった。
もっとも本人は自身の容姿には全く無関心であったが。
彼女は裕福でない家柄もあり、男子にはモテても同性の女子たちには嫉妬も多分にあったが、家柄が槍玉に挙げられて、見下されるという人生を過ごして来た。
そのためか、その連中を見返してやりたいという気持ちが強かった。
士官学校は彼女にとって自分を売り込み、見下していた連中を見返す絶好のチャンスだった。
彼女は懸命に学務に励み、成績は優秀で将来を期待される学生の一人になっていった。
そんな彼女にそれまでの生き方を考え直すきっかけを与える人物が現れた。
それがティファであった。
「私、知り合って最初の頃はティファにめちゃくちゃライバル意識燃やしてたよね」
シャローラはいつものように放課後のコーヒーハウスでティファと話しながら照れ笑いする。
「そうだったっけ?私、シャローラは常に可愛いって印象しかないから」
「そんなお世辞言っても何も出ないよ」
「お世辞じゃないんだけどな。シャローラは自分の事となると謙虚だから」
そんな他愛のない会話をしながらシャローラはティファと出会った時の事を回想していた。
今を遡ること二年前。
キルス歴一〇九三年九月。
十六歳になったシャローラは士官学校に入学した。
ここは一般市民のために作られた学校ではあるが、十二歳から十五歳までの三年間、一般教育課程を受けた者の中から志願して教授からの推薦状のある者だけが入れる学校であった。
現代でいう大学のようなものである。
シャローラは一般課程もトップクラスで卒業し、教授の推薦と自身も志願しての入学だった。
同じ時期にティファとパトリシアも入学していた。
あまり乗り気じゃなかったのに、教授の推薦で仕方なしに入学したティファではあったが、ここへの入学は戦術や過去の歴史を学べるという利点もあり、何だかんだ言ってもそれなりに学校生活を楽しんでいた。
パトリシアは父親がシュミット国王の側近であったため、早くから父のあとを継ぐために勉学に勤しんでいた。
育った環境も思惑も違う三人が一つ屋根の下で学ぶ事となった。
三人の誰一人として、将来自分がタスタニアの命運をかけて戦う事になるとは想像すらしていなかった。
パトリシアはティファが最も重要と考えている後方支援、兵站と物流が得意で詳しく、パトリシアはこれから自分が学ぼうとする戦略・戦術に関しての知識があるティファに興味を抱き、同じクラスの二人がすぐに打ち解けるのに時間は掛からなかった。
だが、その仲は長く続かなかった。
入学して僅か半年後、パトリシアの父レオポルトは長年の建国の疲労に加えて流行り病にかかってしまい、回復を願うも虚しくこの世を去ってしまう。
父を突然失ったパトリシアの悲しみは深く、ティファもどう声をかけていいのかわからないほどであった。
そして、生前レオポルトが娘のパトリシアをシュミット国王の側近として用いるように言い残していた事から、国王直々の命令によってパトリシアは半年で士官学校を中退し、国事に入る事となった。
「せっかく知り合えたのに残念だよ。でも事情が事情だもんね。偉大なお父さんの後を託されて大変だろうけど頑張って。それしか言えないのがもどかしい」
「父は父。私は私だよ。私には父の代わりなんて出来ないし、それだけの知識も経験もない。だから父とは違うやり方で国王を補佐出来ればなと考えてる。ティファ、卒業したら一緒に仕事をしよう。ひと足先に行って待ってるから」
二人は握手して互いの健闘を誓い合った。
「そうそう、隣の校舎に一人凄いって評判の子がいるから興味があったら逢いに行ってみたら?」
パトリシアが最後に思い出したようにティファに伝えた。
「この学校に来る人たちだもん。みんなそれなりに凄いよ。機会があって会えれば縁があるんだろうし、会えなければ縁がなかったというだけの事。その子と縁があるのなら放っておいてもいつか逢えるでしょ」
ティファの返事にパトリシアは思わず笑ってしまった。
「ティファらしいっちゃ、らしいね。その子の名前はシャローラ・オルブライトっていうらしいよ。そんなに凄い子なら縁あって仲間になれたらいいね」
「そうだね」
何だか予想外の会話で別れの挨拶が終わってしまったけど、最後は笑顔でパトリシアを見送るティファだった。
「パトリシアがお父さんの後を継いで学校を離れるって聞いた時は驚いたし、私と同い年でもうオルジュの中枢に入るなんて凄いなって思った」
ティファが当時の事を思い出してシャローラに話すとシャローラも時折人差し指を顎に当てる仕草をしながら当時を思い起こしていた。
「私はその時は別のクラスで、パトリシアの事は担任教授から国王の命令で中退するって聞いて知った程度だった。なのに突然私のクラスまで来て呼び出されたんだよ。最初は何かと思ったよ」
パトリシアは退学の日にティファと別れた後、シャローラに会いに行っていた。
「あなたがシャローラね。私はパトリシア・シュトリツェル。今日でこの学校を退学しちゃうからよろしくねって挨拶も変だけど、よろしくね」
「そのパトリシアさんが私に何の用ですか?」
「ティファニー・オブ・エヴァンスって子、知ってる?」
「知らない。名前も聞いた事ない」
「じゃあ今後は覚えてもらって、出来れば会って友人として付き合ってもらえたらと思っている」
「どうして私がそのティファニーと友人にならなきゃいけないんですか?」
「ティファもあなたもいずれこの国を背負って立つ存在となる。今のうちに知り合って友好を深めておけば必ず将来の役に立つと思うよ」
「将来なんて、明日の事すらわからないのに、そんな事まで考えていません」
「まあ、そう言わずに。いずれ出会う事になると思っているけど。それを言いに来ただけ。じゃあ元気で勉学頑張ってね」
パトリシアはそれだけ言うとシャローラの前から立ち去っていった。
「あの人そんな事いいにわざわざこのクラスまで来たわけ?変な人」
ふん。と鼻で息をしてシャローラは何事もなかったかのように席に戻った。
しかしこの日以降、シャローラの中でティファの事が頭の中で動き始めていた。
「ティファニーか。。そんなに凄い子なら一度くらい会ってやってもいいかな」
そんなある日の事。
偶然だが、ティファとシャローラが初めて顔を合わせた。
この学校にはクラス別の授業以外に選択項目の授業があって、戦略・戦術、地政学、政治学の中から自分のやりたい項目を選択して授業を受けられるシステムがあった。
ティファとシャローラは戦略・戦術の授業を選択し、二人はそこで対面する。
対面と言っても実際に話をした訳じゃなく、出席の際に名前を呼ばれた時に、お互いにあの子がティファ、シャローラ。と知ったという程度でだった。
「見た目まるっきり普通の子だけど、何かそんなに凄いんだろう?」
シャローラのティファに対する第一印象は他の人たちと違わずにそれであった。
「最初にティファを見た時は全然普通の女の子って印象しかなかったんだよね。それは今でもそうなんだけど」
「そりゃそうだよ。全然普通の女の子だもん」
「それが深く知るとそうでもないってわかるんだけどね」
「深くってどこまで私の事知ってるの?」
「いつも朝寝坊してレイラに起こされてるところまでかな」
シャローラは笑いながらそう冗談を言ったが、内心は違った。
普段は全く普通の女の子なのに、いざ戦いが始まるとまるで別人のようになる。
表情も性格も。
十八歳。ティファたちと同じ士官学校に通う学生だ。
シャローラそれほど裕福とは言えない家庭の出身であった。
父親はネープ民族、母親はユージット民族で父の血筋を引いたシャローラは容姿端麗であった。
身長は一六〇センチ。黒に青みがかかったのセミロングヘアにアイスブルーの瞳。シルクのような白い肌はまるで歩く芸術品のようであった。
もっとも本人は自身の容姿には全く無関心であったが。
彼女は裕福でない家柄もあり、男子にはモテても同性の女子たちには嫉妬も多分にあったが、家柄が槍玉に挙げられて、見下されるという人生を過ごして来た。
そのためか、その連中を見返してやりたいという気持ちが強かった。
士官学校は彼女にとって自分を売り込み、見下していた連中を見返す絶好のチャンスだった。
彼女は懸命に学務に励み、成績は優秀で将来を期待される学生の一人になっていった。
そんな彼女にそれまでの生き方を考え直すきっかけを与える人物が現れた。
それがティファであった。
「私、知り合って最初の頃はティファにめちゃくちゃライバル意識燃やしてたよね」
シャローラはいつものように放課後のコーヒーハウスでティファと話しながら照れ笑いする。
「そうだったっけ?私、シャローラは常に可愛いって印象しかないから」
「そんなお世辞言っても何も出ないよ」
「お世辞じゃないんだけどな。シャローラは自分の事となると謙虚だから」
そんな他愛のない会話をしながらシャローラはティファと出会った時の事を回想していた。
今を遡ること二年前。
キルス歴一〇九三年九月。
十六歳になったシャローラは士官学校に入学した。
ここは一般市民のために作られた学校ではあるが、十二歳から十五歳までの三年間、一般教育課程を受けた者の中から志願して教授からの推薦状のある者だけが入れる学校であった。
現代でいう大学のようなものである。
シャローラは一般課程もトップクラスで卒業し、教授の推薦と自身も志願しての入学だった。
同じ時期にティファとパトリシアも入学していた。
あまり乗り気じゃなかったのに、教授の推薦で仕方なしに入学したティファではあったが、ここへの入学は戦術や過去の歴史を学べるという利点もあり、何だかんだ言ってもそれなりに学校生活を楽しんでいた。
パトリシアは父親がシュミット国王の側近であったため、早くから父のあとを継ぐために勉学に勤しんでいた。
育った環境も思惑も違う三人が一つ屋根の下で学ぶ事となった。
三人の誰一人として、将来自分がタスタニアの命運をかけて戦う事になるとは想像すらしていなかった。
パトリシアはティファが最も重要と考えている後方支援、兵站と物流が得意で詳しく、パトリシアはこれから自分が学ぼうとする戦略・戦術に関しての知識があるティファに興味を抱き、同じクラスの二人がすぐに打ち解けるのに時間は掛からなかった。
だが、その仲は長く続かなかった。
入学して僅か半年後、パトリシアの父レオポルトは長年の建国の疲労に加えて流行り病にかかってしまい、回復を願うも虚しくこの世を去ってしまう。
父を突然失ったパトリシアの悲しみは深く、ティファもどう声をかけていいのかわからないほどであった。
そして、生前レオポルトが娘のパトリシアをシュミット国王の側近として用いるように言い残していた事から、国王直々の命令によってパトリシアは半年で士官学校を中退し、国事に入る事となった。
「せっかく知り合えたのに残念だよ。でも事情が事情だもんね。偉大なお父さんの後を託されて大変だろうけど頑張って。それしか言えないのがもどかしい」
「父は父。私は私だよ。私には父の代わりなんて出来ないし、それだけの知識も経験もない。だから父とは違うやり方で国王を補佐出来ればなと考えてる。ティファ、卒業したら一緒に仕事をしよう。ひと足先に行って待ってるから」
二人は握手して互いの健闘を誓い合った。
「そうそう、隣の校舎に一人凄いって評判の子がいるから興味があったら逢いに行ってみたら?」
パトリシアが最後に思い出したようにティファに伝えた。
「この学校に来る人たちだもん。みんなそれなりに凄いよ。機会があって会えれば縁があるんだろうし、会えなければ縁がなかったというだけの事。その子と縁があるのなら放っておいてもいつか逢えるでしょ」
ティファの返事にパトリシアは思わず笑ってしまった。
「ティファらしいっちゃ、らしいね。その子の名前はシャローラ・オルブライトっていうらしいよ。そんなに凄い子なら縁あって仲間になれたらいいね」
「そうだね」
何だか予想外の会話で別れの挨拶が終わってしまったけど、最後は笑顔でパトリシアを見送るティファだった。
「パトリシアがお父さんの後を継いで学校を離れるって聞いた時は驚いたし、私と同い年でもうオルジュの中枢に入るなんて凄いなって思った」
ティファが当時の事を思い出してシャローラに話すとシャローラも時折人差し指を顎に当てる仕草をしながら当時を思い起こしていた。
「私はその時は別のクラスで、パトリシアの事は担任教授から国王の命令で中退するって聞いて知った程度だった。なのに突然私のクラスまで来て呼び出されたんだよ。最初は何かと思ったよ」
パトリシアは退学の日にティファと別れた後、シャローラに会いに行っていた。
「あなたがシャローラね。私はパトリシア・シュトリツェル。今日でこの学校を退学しちゃうからよろしくねって挨拶も変だけど、よろしくね」
「そのパトリシアさんが私に何の用ですか?」
「ティファニー・オブ・エヴァンスって子、知ってる?」
「知らない。名前も聞いた事ない」
「じゃあ今後は覚えてもらって、出来れば会って友人として付き合ってもらえたらと思っている」
「どうして私がそのティファニーと友人にならなきゃいけないんですか?」
「ティファもあなたもいずれこの国を背負って立つ存在となる。今のうちに知り合って友好を深めておけば必ず将来の役に立つと思うよ」
「将来なんて、明日の事すらわからないのに、そんな事まで考えていません」
「まあ、そう言わずに。いずれ出会う事になると思っているけど。それを言いに来ただけ。じゃあ元気で勉学頑張ってね」
パトリシアはそれだけ言うとシャローラの前から立ち去っていった。
「あの人そんな事いいにわざわざこのクラスまで来たわけ?変な人」
ふん。と鼻で息をしてシャローラは何事もなかったかのように席に戻った。
しかしこの日以降、シャローラの中でティファの事が頭の中で動き始めていた。
「ティファニーか。。そんなに凄い子なら一度くらい会ってやってもいいかな」
そんなある日の事。
偶然だが、ティファとシャローラが初めて顔を合わせた。
この学校にはクラス別の授業以外に選択項目の授業があって、戦略・戦術、地政学、政治学の中から自分のやりたい項目を選択して授業を受けられるシステムがあった。
ティファとシャローラは戦略・戦術の授業を選択し、二人はそこで対面する。
対面と言っても実際に話をした訳じゃなく、出席の際に名前を呼ばれた時に、お互いにあの子がティファ、シャローラ。と知ったという程度でだった。
「見た目まるっきり普通の子だけど、何かそんなに凄いんだろう?」
シャローラのティファに対する第一印象は他の人たちと違わずにそれであった。
「最初にティファを見た時は全然普通の女の子って印象しかなかったんだよね。それは今でもそうなんだけど」
「そりゃそうだよ。全然普通の女の子だもん」
「それが深く知るとそうでもないってわかるんだけどね」
「深くってどこまで私の事知ってるの?」
「いつも朝寝坊してレイラに起こされてるところまでかな」
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