63 / 67
最終章 最後の戦い
最終決戦。稀決死の滅天悪
しおりを挟む
「俺の気に誘われてのこのこ死にに来たか。虫ケラども」
狭間法元は本部内に入った聖菜たちの姿を捉えたモニターを見て片手で頬杖をつきながらにやりと笑う。
「愛梨、闘技場の準備は出来ておろうな?」
「無論でございます。いつでもお出向き下さい」
本部ビルの裏庭には法元が作らせた小さな闘技場があった。
闘技場と言っても単純に四方が高い壁で覆われただけの芝生の庭であるが、法元はそこを最終決戦の場と選んだのだ。
理由は簡単だ。全員を始末したあとで埋めるのが簡単だからだ。
「ひと足先に闘技場に行っている。奴らを裏庭まで連れて来い」
「かしこまりました」
本部ビル内に乗り込んだ聖菜たち。
その時、館内に草刈愛梨の声が響き渡る。
「藤村雪乃、それに刀祢美里の娘もいるようだな」
「草刈愛梨か?どこにいる?」
雪乃が声を上げると愛梨は高笑いする。
「あははは。法元様は裏庭に作った特別闘技場でお待ちだ。お前たちに勇気があるのなら来るがいい。逃げるなら今のうちだぞ。今なら逃げても追わぬ。自分で逃げるか死ぬか選ぶといい。あっはははは」
愛梨はそれだけ言うとスピーカーの電源を切った。
「相変わらずの法元信奉者ぶりだな。私たちの覚悟はとうに決まっている。みんな、裏庭に行くぞ」
聖菜は黒澤真美に耳打ちして尋ねる。
「今のは誰ですか?」
「草刈愛梨と言ってね。十五年前から法元の熱狂的な信者でその信奉ぶりが認められて側近にまで上り詰めた女よ。頭のてっぺんからつま先に至るまで法元に心酔している狂人と言っていいわね」
「カルト教教団の心酔者ですか。厄介ですね」
「私たちの戦う相手は法元ただ一人。愛梨など法元がいなくなれば糸の切れた凧のようなもの。突っかかってこない限り相手にしなくていいから」
「わかりました」
聖菜たちは愛梨がスピーカーで言っていた裏庭へと到着する。
すでに腕を組み、仁王立ちで待ち構えていた法元の姿を全員が捉えた。
「来たな虫ケラども」
聖菜は初めて対峙した狭間法元を見て内心驚いていた。
どう見ても二十代である。
元は七十代と聞いていたが、幼虫の力によって若返り、人間離れした能力と霊力を手に入れた人間とはこんな風になるものかと。
だが、こいつはお母さんの仇。
十五年前にお母さんも今の私と同じ気持ちでこの男と対峙して戦ったのだと思うと怒りだけでなく何が感慨深いものも感じていた。
「お前が狭間法元か」
「俺様を呼び捨てにするとはいい度胸だな。貴様があの女の娘か。手足の何本かへし折った上で首根っこを掴んで母親の元に連れて行ってくれるわ」
そのひと言で聖菜の怒りに火がついた。
「涅槃(ねはん)より甦れ般若、夜叉」
聖菜が式札を取り出して念を唱えようとしたところを那由多が止めた。
「聖菜、ダメだ。般若と夜叉ではそいつには敵わない。美里もそうだった」
「なんですって?」
「あいつと互角にやり合える式神は青龍しかいない。でも青龍はまだ聖菜を主と認めていない」
青龍。。そう言えば一番強力な式神を私はまだ使えなかったんだな。
聖菜は今ある自分の力で戦う決意をする。
「式神が使えないとなると私が神楽で直接戦うしかない」
「虫ケラども、恐怖と絶望に打ちひしがれるがいい」
法元が霊力を放出させると、その場にいた全員が体に電流を当てられたような痺れを感じた。
「体が痺れる。何という霊力。。」
初めて法元と対峙する稀は今まで出会った事のない巨大な霊力に驚きを隠せない。
それは聖菜も同様であった。
「さすがにお母さんがやられた相手。。だけど私はお母さんの仇を討つ」
聖菜は聖剣神楽を取り出すと法元に斬りかかる。
だが、剣がまともに体に当たっているにも関わらず法元は涼しい顔をしている。
「霊力を剣に集中させて攻撃しているのに微動だにしない。。」
「お前如きが俺に立ち向かって来たところで死ぬだけだ」
強力な霊力とほとんどの攻撃を寄せ付けない防御力。
聖菜の母、美里ですら勝てなかった相手である。
「聖菜、一人で。。」
真美がそう言おうとしたとき、稀が言おうと思っていたことを先に言ってくれた。
「聖菜さん、一人で戦おうなんて思ってはダメですわ。私たちも一緒です」
「和花(のどか)、真美さん。。」
神宮寺稀を本名で呼ぶのは聖菜だけである。
稀は呪いの藁人形を取り出して念を込めると右腕をへし折ろうとする。
だが、藁人形の腕はまるで鋼のように硬く、いくら折ろうとしても折れなかった。
「そんな。。呪術が効かない」
稀は藁人形を諦めて霊弾を打ちながら紫式部で斬りかかる。
しかし聖菜同様、霊弾も霊力を込めた紫式部の攻撃も法元には通じない。
「お前は志穂を倒した神宮寺とかいう奴か。面白い」
「霊弾を受けても微動だにしない。。」
これまで数々の強敵を倒してきた稀の霊力であったが、法元の前にはほぼ無力であった。
聖菜の神楽と稀の紫式部に加えて雪乃も霧氷剣を構えて法元に斬りかかる。
「桐子、明日香!」
雪乃の声に妹の桐子と西巻明日香も持っている翠玉剣と白鵬丸を振りかぶった。
桐子は雪乃の妹なだけあり、剣術の心得があった。
翠玉剣を中段に構えて袈裟斬りからの一文字斬りと連続攻撃を仕掛けるが、法元の体と霊体はびくともしない。
西巻明日香は念力で相手の腕や足をへし折る力を持っているが、稀の呪いの藁人形も通じないのだ。
明日香は懸命に念力で法元の動きを封じようとするが、抑える事が出来なかった。
「なんだ? 貴様らは。虫ケラが何匹揃ったところで虫は虫よ。大人しく踏み潰されるんだな」
聖菜を苦しめた桐子と明日香の力も法元の前では無力に等しかった。
二人と一緒に凛も一緒に攻撃を仕掛けるが、やみくもに斬りかかっても法元には通じない。
斬ったそばから回復するからだ。
「いくら聖剣でも一本ではダメだ。全員で一斉に斬りかかるんだ」
雪乃が聖剣を持つ五人にそう叫ぶと、聖菜、稀、凛、桐子、明日香は互いに目配せし合い、タイミングをはかって全員で斬りかかる。
合わせて六つの聖剣が一斉に法元に襲い掛かった。
法元の脳に埋め込まれたハザマ幼虫「閻王」は自身の身に危険が迫っている事を察知した。
閻王が脳から法元の体全体に強力なパワーを送りだし、法元の全身から巨大な電磁波がスパークするような霊気がほど走る。
「きゃあああ」
聖菜、稀、雪乃、凛、桐子、明日香の六人はまるで高圧電流に当てられたような衝撃を体に受けて全員が弾き飛ばされ倒れた。
雪乃と凛は十五年前に戦った時よりもパワーアップした法元に驚くしかなかった。
「私たちもレベルアップしたが、法元はそれ以上に力を付けているという事か」
「結界で眠っていたのになおこの力。。やはり七本の聖剣すべて揃わないとダメなのか」
聖剣を持った六人で斬りかかってもこの有り様で、真美と瑠奈・莉乃は迂闊に動く事も出来ない。
そんな中、稀が一人立ち上がると聖菜に向けてこれまでのお礼を言う。
「聖菜さん、あなたと出会って私の人生はとても楽しくて豊かなものになった」
稀は体内に気を溜め込んでいた。
「私がこの力を手に入れたのも恨み晴らし屋として活動しているのも、たった一人の親友であるあなたを助けるため。それを果たす時が来ましたわ」
稀の気が膨張し始める。
「瑠奈、莉乃。私が居なくなった後は聖菜さんに付き従いなさい。それが私の最後の指示です」
「稀様、いけません。。おやめ下さい」
「聖菜さん、これから放つのはあなたのお母さんである美里さんの御霊(みたま)から教わった技です。今の私の力では一撃放つのが精一杯。命と引き換えの技なのです」
それを聞いて聖菜は稀を止めようとするが、さっきの法元の攻撃で体が痺れて動けない。
「どうして? どうして和花は動けるのに私の体は動かないの?」
「神宮寺稀の防御結界がそれだけ強力という事だ」
真美の言葉に聖菜は唇を噛んだ。
稀は自身の霊力を最大限に放出する。
「これは。。」
「凄い! 神宮寺稀はこれほどの霊力を持っていたのか」
桐子と明日香も驚きの表情を浮かべるほどの高い霊力であった。
稀の全身から電流がスパークする光と音が発せられる。
稀は己の能力を極限まで高めた反動から全身の筋肉が痙攣を起こし、口からは血が流れ出ていた。
「稀、やめて! それ以上やったら死んでしまう」
桐子の声が聞こえなかったと言えば嘘になるが、稀は聖菜を助けるためなら自分の命を投げ出してもいいと思っていた。
「聖菜さん、お別れです」
稀は右手の人差し指と中指をつけてのばす刀印の印相を取る。
「神宮寺稀の最強法術、滅天悪(メテオ)」
印を縦に切ると翔が立つ地面に巨大な五芒星が描かれて強力な結界が張られ、天空の雲が渦を巻き、その中心から巨大な光の玉が落ちてくる。
天空から高速で落下した光の玉は翔の身体を地面に叩きつけた。
超重力により押しつぶされそうになるのを必死で堪える法元
「ばかな。。これは俺を封じ込めたあの女の技」
光の玉は法元の体の上で大爆発を起こした。
その凄まじい威力を封じ込めるために五芒星の結界を敷いたのだ。
その激しい光に全員の目が眩み、何が起こっているのか視覚で確認する事が出来ない。
十秒ほどの時間が経ったてあろうか。
ようやく光が収まり視界が開けた聖菜の目に映った光景は我が目を疑うものであった。
稀の命がけの最強魔術「滅天悪(メテオ)」も通じず、稀は力を使い果たして崩れ落ちるように倒れた。
「今のは俺も一瞬ひやりとしたぞ」
そう言って右手で服についた埃をはらう仕草をする法元。
左手はすでに意識のない稀の首を掴んでいた。
「お前はあの女からその技を学んだようだが、まだ技の力が未熟のようだな。おかげで助かった訳だが」
法元が腕に力をいれると首の骨が折れる音がし、稀の身体は無造作に投げ捨てられた。
「のどかあああ」
聖菜の悲痛な叫びも虚しく、投げられて倒れた神宮寺稀こと佐々木和花の身体から生気が感じられなくなった。
狭間法元は本部内に入った聖菜たちの姿を捉えたモニターを見て片手で頬杖をつきながらにやりと笑う。
「愛梨、闘技場の準備は出来ておろうな?」
「無論でございます。いつでもお出向き下さい」
本部ビルの裏庭には法元が作らせた小さな闘技場があった。
闘技場と言っても単純に四方が高い壁で覆われただけの芝生の庭であるが、法元はそこを最終決戦の場と選んだのだ。
理由は簡単だ。全員を始末したあとで埋めるのが簡単だからだ。
「ひと足先に闘技場に行っている。奴らを裏庭まで連れて来い」
「かしこまりました」
本部ビル内に乗り込んだ聖菜たち。
その時、館内に草刈愛梨の声が響き渡る。
「藤村雪乃、それに刀祢美里の娘もいるようだな」
「草刈愛梨か?どこにいる?」
雪乃が声を上げると愛梨は高笑いする。
「あははは。法元様は裏庭に作った特別闘技場でお待ちだ。お前たちに勇気があるのなら来るがいい。逃げるなら今のうちだぞ。今なら逃げても追わぬ。自分で逃げるか死ぬか選ぶといい。あっはははは」
愛梨はそれだけ言うとスピーカーの電源を切った。
「相変わらずの法元信奉者ぶりだな。私たちの覚悟はとうに決まっている。みんな、裏庭に行くぞ」
聖菜は黒澤真美に耳打ちして尋ねる。
「今のは誰ですか?」
「草刈愛梨と言ってね。十五年前から法元の熱狂的な信者でその信奉ぶりが認められて側近にまで上り詰めた女よ。頭のてっぺんからつま先に至るまで法元に心酔している狂人と言っていいわね」
「カルト教教団の心酔者ですか。厄介ですね」
「私たちの戦う相手は法元ただ一人。愛梨など法元がいなくなれば糸の切れた凧のようなもの。突っかかってこない限り相手にしなくていいから」
「わかりました」
聖菜たちは愛梨がスピーカーで言っていた裏庭へと到着する。
すでに腕を組み、仁王立ちで待ち構えていた法元の姿を全員が捉えた。
「来たな虫ケラども」
聖菜は初めて対峙した狭間法元を見て内心驚いていた。
どう見ても二十代である。
元は七十代と聞いていたが、幼虫の力によって若返り、人間離れした能力と霊力を手に入れた人間とはこんな風になるものかと。
だが、こいつはお母さんの仇。
十五年前にお母さんも今の私と同じ気持ちでこの男と対峙して戦ったのだと思うと怒りだけでなく何が感慨深いものも感じていた。
「お前が狭間法元か」
「俺様を呼び捨てにするとはいい度胸だな。貴様があの女の娘か。手足の何本かへし折った上で首根っこを掴んで母親の元に連れて行ってくれるわ」
そのひと言で聖菜の怒りに火がついた。
「涅槃(ねはん)より甦れ般若、夜叉」
聖菜が式札を取り出して念を唱えようとしたところを那由多が止めた。
「聖菜、ダメだ。般若と夜叉ではそいつには敵わない。美里もそうだった」
「なんですって?」
「あいつと互角にやり合える式神は青龍しかいない。でも青龍はまだ聖菜を主と認めていない」
青龍。。そう言えば一番強力な式神を私はまだ使えなかったんだな。
聖菜は今ある自分の力で戦う決意をする。
「式神が使えないとなると私が神楽で直接戦うしかない」
「虫ケラども、恐怖と絶望に打ちひしがれるがいい」
法元が霊力を放出させると、その場にいた全員が体に電流を当てられたような痺れを感じた。
「体が痺れる。何という霊力。。」
初めて法元と対峙する稀は今まで出会った事のない巨大な霊力に驚きを隠せない。
それは聖菜も同様であった。
「さすがにお母さんがやられた相手。。だけど私はお母さんの仇を討つ」
聖菜は聖剣神楽を取り出すと法元に斬りかかる。
だが、剣がまともに体に当たっているにも関わらず法元は涼しい顔をしている。
「霊力を剣に集中させて攻撃しているのに微動だにしない。。」
「お前如きが俺に立ち向かって来たところで死ぬだけだ」
強力な霊力とほとんどの攻撃を寄せ付けない防御力。
聖菜の母、美里ですら勝てなかった相手である。
「聖菜、一人で。。」
真美がそう言おうとしたとき、稀が言おうと思っていたことを先に言ってくれた。
「聖菜さん、一人で戦おうなんて思ってはダメですわ。私たちも一緒です」
「和花(のどか)、真美さん。。」
神宮寺稀を本名で呼ぶのは聖菜だけである。
稀は呪いの藁人形を取り出して念を込めると右腕をへし折ろうとする。
だが、藁人形の腕はまるで鋼のように硬く、いくら折ろうとしても折れなかった。
「そんな。。呪術が効かない」
稀は藁人形を諦めて霊弾を打ちながら紫式部で斬りかかる。
しかし聖菜同様、霊弾も霊力を込めた紫式部の攻撃も法元には通じない。
「お前は志穂を倒した神宮寺とかいう奴か。面白い」
「霊弾を受けても微動だにしない。。」
これまで数々の強敵を倒してきた稀の霊力であったが、法元の前にはほぼ無力であった。
聖菜の神楽と稀の紫式部に加えて雪乃も霧氷剣を構えて法元に斬りかかる。
「桐子、明日香!」
雪乃の声に妹の桐子と西巻明日香も持っている翠玉剣と白鵬丸を振りかぶった。
桐子は雪乃の妹なだけあり、剣術の心得があった。
翠玉剣を中段に構えて袈裟斬りからの一文字斬りと連続攻撃を仕掛けるが、法元の体と霊体はびくともしない。
西巻明日香は念力で相手の腕や足をへし折る力を持っているが、稀の呪いの藁人形も通じないのだ。
明日香は懸命に念力で法元の動きを封じようとするが、抑える事が出来なかった。
「なんだ? 貴様らは。虫ケラが何匹揃ったところで虫は虫よ。大人しく踏み潰されるんだな」
聖菜を苦しめた桐子と明日香の力も法元の前では無力に等しかった。
二人と一緒に凛も一緒に攻撃を仕掛けるが、やみくもに斬りかかっても法元には通じない。
斬ったそばから回復するからだ。
「いくら聖剣でも一本ではダメだ。全員で一斉に斬りかかるんだ」
雪乃が聖剣を持つ五人にそう叫ぶと、聖菜、稀、凛、桐子、明日香は互いに目配せし合い、タイミングをはかって全員で斬りかかる。
合わせて六つの聖剣が一斉に法元に襲い掛かった。
法元の脳に埋め込まれたハザマ幼虫「閻王」は自身の身に危険が迫っている事を察知した。
閻王が脳から法元の体全体に強力なパワーを送りだし、法元の全身から巨大な電磁波がスパークするような霊気がほど走る。
「きゃあああ」
聖菜、稀、雪乃、凛、桐子、明日香の六人はまるで高圧電流に当てられたような衝撃を体に受けて全員が弾き飛ばされ倒れた。
雪乃と凛は十五年前に戦った時よりもパワーアップした法元に驚くしかなかった。
「私たちもレベルアップしたが、法元はそれ以上に力を付けているという事か」
「結界で眠っていたのになおこの力。。やはり七本の聖剣すべて揃わないとダメなのか」
聖剣を持った六人で斬りかかってもこの有り様で、真美と瑠奈・莉乃は迂闊に動く事も出来ない。
そんな中、稀が一人立ち上がると聖菜に向けてこれまでのお礼を言う。
「聖菜さん、あなたと出会って私の人生はとても楽しくて豊かなものになった」
稀は体内に気を溜め込んでいた。
「私がこの力を手に入れたのも恨み晴らし屋として活動しているのも、たった一人の親友であるあなたを助けるため。それを果たす時が来ましたわ」
稀の気が膨張し始める。
「瑠奈、莉乃。私が居なくなった後は聖菜さんに付き従いなさい。それが私の最後の指示です」
「稀様、いけません。。おやめ下さい」
「聖菜さん、これから放つのはあなたのお母さんである美里さんの御霊(みたま)から教わった技です。今の私の力では一撃放つのが精一杯。命と引き換えの技なのです」
それを聞いて聖菜は稀を止めようとするが、さっきの法元の攻撃で体が痺れて動けない。
「どうして? どうして和花は動けるのに私の体は動かないの?」
「神宮寺稀の防御結界がそれだけ強力という事だ」
真美の言葉に聖菜は唇を噛んだ。
稀は自身の霊力を最大限に放出する。
「これは。。」
「凄い! 神宮寺稀はこれほどの霊力を持っていたのか」
桐子と明日香も驚きの表情を浮かべるほどの高い霊力であった。
稀の全身から電流がスパークする光と音が発せられる。
稀は己の能力を極限まで高めた反動から全身の筋肉が痙攣を起こし、口からは血が流れ出ていた。
「稀、やめて! それ以上やったら死んでしまう」
桐子の声が聞こえなかったと言えば嘘になるが、稀は聖菜を助けるためなら自分の命を投げ出してもいいと思っていた。
「聖菜さん、お別れです」
稀は右手の人差し指と中指をつけてのばす刀印の印相を取る。
「神宮寺稀の最強法術、滅天悪(メテオ)」
印を縦に切ると翔が立つ地面に巨大な五芒星が描かれて強力な結界が張られ、天空の雲が渦を巻き、その中心から巨大な光の玉が落ちてくる。
天空から高速で落下した光の玉は翔の身体を地面に叩きつけた。
超重力により押しつぶされそうになるのを必死で堪える法元
「ばかな。。これは俺を封じ込めたあの女の技」
光の玉は法元の体の上で大爆発を起こした。
その凄まじい威力を封じ込めるために五芒星の結界を敷いたのだ。
その激しい光に全員の目が眩み、何が起こっているのか視覚で確認する事が出来ない。
十秒ほどの時間が経ったてあろうか。
ようやく光が収まり視界が開けた聖菜の目に映った光景は我が目を疑うものであった。
稀の命がけの最強魔術「滅天悪(メテオ)」も通じず、稀は力を使い果たして崩れ落ちるように倒れた。
「今のは俺も一瞬ひやりとしたぞ」
そう言って右手で服についた埃をはらう仕草をする法元。
左手はすでに意識のない稀の首を掴んでいた。
「お前はあの女からその技を学んだようだが、まだ技の力が未熟のようだな。おかげで助かった訳だが」
法元が腕に力をいれると首の骨が折れる音がし、稀の身体は無造作に投げ捨てられた。
「のどかあああ」
聖菜の悲痛な叫びも虚しく、投げられて倒れた神宮寺稀こと佐々木和花の身体から生気が感じられなくなった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
声を聞いた
江木 三十四
ミステリー
地方都市で起きた殺人事件。偶然事件に巻き込まれた女性占い師みさと。犯人を追う益子君と福田君という幼なじみの刑事コンビ。みさとは自分の占いに導かれ、2人の刑事は職務と正義感に従い犯人を追いつめていく。
旧校舎のフーディーニ
澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】
時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。
困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。
けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。
奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。
「タネも仕掛けもございます」
★毎週月水金の12時くらいに更新予定
※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。
※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる