あの雪の日の友達

師走こなゆき

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「何年前だっけ? すごく雪が積もった日。あの日、カズサ、ベッドで寝てたはずなのに夜中のうちに居なくなっちゃってさ。カズサの家の人とわたしの家で一緒に探したんだよ」
「へ? 何の話?」

 わたしは小さな頃の友人の話を尋ねたはずだ。それなのに、何故か友人の口からは全く覚えのない話を聞かされている。

 わたしの反応を無視して、ナエは続ける。

「もう少しで警察に連絡しようってなった時、カズサってば急に家に帰ってきたんだ。みんなで探し回ってたのに、誰にも見つからずに。帰ってきてからずっと、怖い女の子に連れて行かれる。帰ってこれなくなるって泣いてたんだよ」
「えっと? 本当に何の話?」
「いや、だから、前に雪が積もった時の話でしょ? カズサ、楽しい話なんて一つもしてなかったよ? それきり、熱出して雪が溶けるまで寝込んじゃってたし」

 冗談だと受け取って笑うべき場面なのか、真剣に聞くべき場面なのか判断に迷って、わたしは困ってしまう。こんなおかしな冗談を言う子だったろうか?

「そういえば、あの日、カズサが家に帰ってきたのもこれくらいの時間だったっけ? 雪が珍しいからって、夜中に出ていくこと無いでしょ」
「は?」

 意味の分からない発言にわたしの口からは、空気が漏れ出したような妙に高い声が出ていた。

 しかし、スマートフォンの画面隅に表示された時間を見ると、午前四時過ぎが表示されていた。スマートフォンの時計表示の故障を疑って辺りを見回すけど、真っ暗な夜空に人気のない公園。公園の中央に立てられた時計も四時過ぎを指していた。

 間違いなく夜明け前。どうしてこんな時間に出歩いているのかと、自分の正気を疑いそうになる。

 狼狽えているわたしの様子なんて電話の向こうに伝わるはずもなく、ナエは続ける。

「ところで、誰と一緒にいるの? こんな朝早くから遊んでくれる友達なんてよく居たね」
「え、えっと、だから、サキだよ」

 混乱しながらも、なんとか言葉を絞り出す。隣にサキが居なければ、今すぐにでも助けを求めたい気持ちでいっぱいだ。

 少し間が空いて、ナエからの答えが返ってくる。

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