あの雪の日の友達

師走こなゆき

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「仲、良いんだね」
「そりゃあ、ナエとはずっと一緒だからね。もちろんサキともだけど……」そこまで口に出して、わたしはサキを見る「って、知ってるでしょ?」

 不思議なことを尋ねられて、わたしは苦笑した。

「どうした? 誰か居る?」

 理由を考えようとしたところで、ナエが口を挟んできたので、思考がそっちに向けられる。

「ああ、うん。ちょっとね。サキ……」
「で、こんな朝早くに何の用よ? まさか、声が聞きたかっただけとか言わないでしょうね」
「あはは、そんなはず無いよー。ところでさ、小さい頃、雪の日に遊んだ友達がいたこと覚えてる? コユキちゃんっていうんだけど……」
「は?」

 そこで、わたしは思い出せる限りの情報を話した。ナエはまだ眠たいらしく、時折欠伸をしつつも、なんとか最後まで話を聞いてくれた。

「誰それ? そんな子いた?」
「居たよ。居たはず。……居たよね?」
「わたしに聞くな。ああ、でも雪の日でしょ。なんかあったような……」

 思い出そうとしてくれているのか、電話越しにううんと唸る声が聞こえてきた。腕を組みながら頭を捻っている様子が浮かんできたので、わたしが「がんばれ。がんばれ」と応援すると「うるさい」と一蹴されてしまった。寒いのはその素っ気ない態度のせいか、冷たい風が吹いているせいか分からなかった。

 体温が下がってきて凍えそうになり、その場で足踏みをしていると、電話の向こうからナエの動く音と、何かが滑る音、恐らく、カーテンが開かれる音が聞こえた。

「おー、ほんとに積もってるねえ」

 ナエが感嘆の声を上げるが、家を出た時のわたしほど楽しそうには聞こえなかった。元々、ナエは大人っぽいところのある子だからか。それとも、わたしが歳の割にはしゃぎすぎたのか?

「あっ」
「何か思い出した?」
「ああ、いや、でも、楽しい思い出だったんでしょ?」
「うん。それは間違いないよ」
「なら違うか……」

 ナエはそれきり黙ってしまった。何かを隠しているようなどこか煮えきらない口調。思わせぶりに言ったくせに。

「もう、気になるから言ってよ」

 口籠るナエに苛立ったのか、それとも寒さに耐えきれなくなりつつあるのか、自分でも分からかなかったけど、口から出た言葉はどこか棘ばっていた。

「……分かった」

 躊躇したように間をおいてから、ナエは重々しく口を開いた。
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