夏が終わっても

師走こなゆき

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「わたし、友達がいないんです」

 わたしの告白に、参加者が少しどよめいたのを感じた。憐れむような空気。この話を口にすればどんな反応があるか、予想していたとはいえあまり居心地のいいものではない。

「ああ、いえ。いじめとかじゃないですよ。ちゃんと学校で話す子もいますし。ただ、その子達が友達かって訊かれると答えられないんです。知り合いと友達の境目ってどこだろう。友達の定義はなんだろう。わたしは友達だと思っていても、相手は友達って思ってくれていないかもしれない。そう考えると、本当はわたしに友達なんていないんじゃないかって」

 全員が押し黙る。慰めてほしいとか、哀れんでほしいとか、反応を期待していたわけではないけれど、反応がないのも、それはそれで辛い。

 きっと、クラスメイトのみんなはわたしが友達だと言えば受け入れてくれるだろう。もっと単純に考えても大丈夫だとは思う。わたしだけが面倒な考えをしていることは分かっている。

 それとは別に、わたしに友達が理解できない本当の理由も理解している。

 わたしにはアイナという友達がいた。小学生の頃のクラスメイト。静かで大人しい子で、彼女がわたしを一番の友達だとことあるごとに言ってくれたから、わたしも安心して友達だと明言できた。

 それなのに、わたしはアイナを見捨ててしまった。

 思い出したくもない、記憶。

「さて、色々あったけど宴もたけなわ。最後は私ですね」
「大トリなんだから、すごいのをお願いしますよー」

 口を開いたセンカさんを、キイロさんとエナガさんが囃し立て、ハードルを上げる。きっと、最初に秘密を告白させられた仕返しだろう。

 最後、という単語にわたしは深く息を吐いて、胸を撫で下ろした。聞き馴染みのないイベント、それも知り合いのいない一人ぼっちで参加、その上、気味の悪い話をする人に、誰にも、お母さんにも明かしたこともない秘密を見知らぬ人たちの前で話した。慣れない状況に自分で思っている以上に疲労していたらしい。

「このイベントを開催しようと思った理由を告白しようと思います」

 意識の端っこでセンカさんの声を拾う。

 けれど、夏の終わりに新しい挑戦をしたせいか、はたまた、ずっと抱えていた秘密を打ち明けたせいか、思い返せば悪くない気分。

「私は幽霊に会いたかったんです」

 感慨深く噛みしめるわたしに冷水を掛けるような話を、センカさんは淡々と続ける。

「お盆の夜に墓地に集まって花火。これだけ不謹慎なことをすれば、幽霊だって怒って一人くらい出てくれると思ったんです。あ、特に深い意味はないですよ。ただの好奇心」

 数人が悲鳴を、楽しそうに声を上げる人もいるなか、センカさんがこちらを向いてにやっと笑った。

「もしかしたら、幽霊とお友達になったりして?」

 ノーセンキュー。わたしはげんなりと口をへの字曲げた。
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