夏が終わっても

師走こなゆき

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「なんだか怖いね」

 身を寄せてきた女の子は少し震えていたので、わたしは手をギュッと握ってあげた。

「ありがと」

 安心してくれたのか、女の子は少し笑ってくれた。彼女を勇気づけるためというよりは、自分が怖かったからだけど。

 その後、この女性の話で調子づいたのか、自分も幽霊だだの、自分は人を殺したことがあるだの不気味な話をする人が数人現れた。笑いをこらえていたり、明るい調子で言う人はあからさまにふざけてるんだろうけど、一人二人はこの世の終わりみたいな暗くて重い口調で言うから、わたしには誰が本当のことを言っていて、誰が嘘をついているのか。誰が生きている人で、誰が死んでいる人なのかわからなくなってしまう。

 あの人は生きてるんだろうか、この人は生きているんだろうか。もしかしたら、わたし以外みんな死んでいる人で。ううん。わたしだって実は死んでいて、それを自分で気づいていないだけなのかも。

 頭の中がぼんやりとして怖くなったわたしは、さっき以上の力で女の子の手を握った。自分はちゃんと地に足をつけてここに居るんだと確かめるために。

「ヒロさん、痛いよ?」
「あっ、ごめん」

 はっと我に返ったわたしは、慌てて手の力を緩めた。手を離すのは心細くてできなかった。

「どうしたの? あ、まさか、ヒロさんも怖かったんだ?」

 からかうように女の子が尋ねる。

「うーん。まあ。これだけ暗い上に、不気味な話を聞かされたらね」

 年下の女の子に怯えているなんて告白するのは恥ずかしくて誤魔化そうかとも思ったけど、それも格好悪い気がしてやめた。

「そっか。お姉さんでも怖いものがあるんだ」
「いつまで経っても怖いものだらけですよ」

 二人して冗談めいて言ってから、示し合わせたようにクスクスと笑った。悪くない雰囲気。このイベントに参加してよかったかもしれない、と初めて思えた。

「こらー、二人だけの世界を作らないー。次はあなたたちの番よー」

 突然、センカさんの声が飛んできて、わたしたちは授業中の私語を先生に注意されたみたいに姿勢を正した。二人だけの世界だなんて、そんな……。みんなの視線がこちらに集まっているように思えて、そちらを見ることができない。
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