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退廃くんとカメラ子ちゃん P.3
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♯♯♯
ホームルームが終わり下校時間。僕はいつものように教科書等の荷物をバッグに詰め込んで、部活や補習では使われない空き教室へと向かおうとした。放課後に友達と集まって携帯ゲームをするためだ。一度帰ってから、もう一度集まるのは時間がかかるし、家の方向もバラバラなので、どこに集まるのかも決めるのも面倒だ。自分のクラスですれば面倒はないのかもしれないが、居残って勉強をする真面目な子や、楽しく談笑しているクラスメイトの邪魔をするのは気が引ける。そのため、いつも誰も居ない空き教室に集まることにしている。
友達に目でサインを送り、本日の戦場へと向かおうとする。
「ちょっと来て」
言うが早いか、僕はかばんを持つ手を引っ張られ、教室から拉致された。友達は困惑と憐れみが混ざったような表情で僕を見るだけで、助けてくれようとはしなかった。いや、桂木さんの行動に不意をつかれて、動けなかったのかもしれない。
「ま、待ってよ桂木さん」
「いいから」
下校時間の生徒で混み合った廊下を、桂木さんは僕の手を引き突き進んでゆく。生徒の間をすり抜け、道を開けさせ、他の生徒にぶつかることなく進んでゆく桂木さん。大して僕は桂木さんに振り回される勢いで他の生徒に何度もぶつかり、その度に「ごめんなさい」「すみません」と謝った。
校舎を出て、辿り着いたのは校舎裏だった。
学校の塀と校舎に挟まれ、木々の間からしか日の差し込まない、ジメジメとした校舎裏。不良と呼ばれる人たちがたまり場として飲酒、喫煙、賭博、喧嘩、違法薬物、セックスをしているというどこまで信じて良いのか分からない噂もあり、善良な一般生徒は近寄らない場所だ。父の吸っているのと似たタバコの匂いと吸い殻があるのだから、少なくとも喫煙は本当なのだろう。薄暗く他人の目に晒されにくいアンダーグラウンドな雰囲気が彼らを惹きつけるのだろうか。
「さてと……はじめよっか」
桂木さんの言葉に、僕の身体は一度、ブルリと身震いをした。写真のモデルを断った報復に衆人の目の届かない場所で暴力を振るわれるんじゃないかと思った。同時に、不良達がセックスをしているという噂から、少し期待している自分も居た。
彼女が自身のカバンに手を入れ、ゴソゴソとなにかを探り始めた。武器か?
僕は「ごめんなさいっ」と頭を下げ、声を張り上げ謝った。
「え? なに?」
彼女の驚いた声を聞いた僕は、恐る恐る顔を上げる。彼女の手にはナイフのような鋭く鈍い色をした物ではなく、丸くて淡いピンク色をしたカメラがあった。
「えっと……ナイフは……?」
「は? そんな怖い物、持ってないし」
「僕を刺すつもりで呼び出したんじゃあ」
僕の返答を聞き、彼女は「くくっ……バっカじゃないの」と笑いをこらえきれず吹き出した。
僕は自分の考えすぎた妄想に恥ずかしくなり、頬が熱くなり彼女の顔が見られなくなった。
ホームルームが終わり下校時間。僕はいつものように教科書等の荷物をバッグに詰め込んで、部活や補習では使われない空き教室へと向かおうとした。放課後に友達と集まって携帯ゲームをするためだ。一度帰ってから、もう一度集まるのは時間がかかるし、家の方向もバラバラなので、どこに集まるのかも決めるのも面倒だ。自分のクラスですれば面倒はないのかもしれないが、居残って勉強をする真面目な子や、楽しく談笑しているクラスメイトの邪魔をするのは気が引ける。そのため、いつも誰も居ない空き教室に集まることにしている。
友達に目でサインを送り、本日の戦場へと向かおうとする。
「ちょっと来て」
言うが早いか、僕はかばんを持つ手を引っ張られ、教室から拉致された。友達は困惑と憐れみが混ざったような表情で僕を見るだけで、助けてくれようとはしなかった。いや、桂木さんの行動に不意をつかれて、動けなかったのかもしれない。
「ま、待ってよ桂木さん」
「いいから」
下校時間の生徒で混み合った廊下を、桂木さんは僕の手を引き突き進んでゆく。生徒の間をすり抜け、道を開けさせ、他の生徒にぶつかることなく進んでゆく桂木さん。大して僕は桂木さんに振り回される勢いで他の生徒に何度もぶつかり、その度に「ごめんなさい」「すみません」と謝った。
校舎を出て、辿り着いたのは校舎裏だった。
学校の塀と校舎に挟まれ、木々の間からしか日の差し込まない、ジメジメとした校舎裏。不良と呼ばれる人たちがたまり場として飲酒、喫煙、賭博、喧嘩、違法薬物、セックスをしているというどこまで信じて良いのか分からない噂もあり、善良な一般生徒は近寄らない場所だ。父の吸っているのと似たタバコの匂いと吸い殻があるのだから、少なくとも喫煙は本当なのだろう。薄暗く他人の目に晒されにくいアンダーグラウンドな雰囲気が彼らを惹きつけるのだろうか。
「さてと……はじめよっか」
桂木さんの言葉に、僕の身体は一度、ブルリと身震いをした。写真のモデルを断った報復に衆人の目の届かない場所で暴力を振るわれるんじゃないかと思った。同時に、不良達がセックスをしているという噂から、少し期待している自分も居た。
彼女が自身のカバンに手を入れ、ゴソゴソとなにかを探り始めた。武器か?
僕は「ごめんなさいっ」と頭を下げ、声を張り上げ謝った。
「え? なに?」
彼女の驚いた声を聞いた僕は、恐る恐る顔を上げる。彼女の手にはナイフのような鋭く鈍い色をした物ではなく、丸くて淡いピンク色をしたカメラがあった。
「えっと……ナイフは……?」
「は? そんな怖い物、持ってないし」
「僕を刺すつもりで呼び出したんじゃあ」
僕の返答を聞き、彼女は「くくっ……バっカじゃないの」と笑いをこらえきれず吹き出した。
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