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第十話 ワイルドボアラッシュ!
しおりを挟む書きためた分が無くなったので、次回の更新はいつになるかちょっとわかりません。少しお待たせするかも分かりませんが、ご了承ください。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ギルドの指名依頼を受けて再びワイルドボアを狩るために、ライオネルは森に入った。森に入って少し歩いたところにワイルドボアがつけたと思われる傷のついた木を見つけて立ち止まる。
(確かに森の浅い所に縄張りの印があるな。まぁ理由は分からんが)
理由が分からないというより興味が無いライオネルは、茂みに隠れながら周囲の状況を観察する。すると、地面にほじくり返された跡を見つけた。それは点々と続いておりそれを追っていくと、地面をほじくり返しているワイルドボアを見つけた。ワイルドボアは夢中になって地面をほじくり返していて、ライオネルには気が付いていない。
(それなら、こっそり近づいてゴキッとやっちゃうか)
草むらからそっと這い出し、草の少ない部分を四つん這いになって、ワイルドボアの後ろから近づく。当然ライオネルはワイルドボアの風下に位置している。そしてある程度近づいたところで、全身に闘気を巡らしワイルドボアめがけて跳躍した。
「おりゃっ!」
ワイルドボアの背中に馬乗りになったライオネルは、突然の衝撃に目を白黒させている猪の下あごに手を掛けてから全体重をかけて背中から倒れ込むと、ゴキッと首から鈍い音をさせてワイルドボアは地面へと倒れた。
「楽なんだけど物足りねぇなぁ……」
そうぼやきながらワイルドボアの血抜きを手早くすまし、森を立ち去った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「あら、ライオネルさん。もう終わったの?」
「あぁ、昨日と変わらん。見つけて狩る、それだけだ」
昼頃にギルドへ戻ってきたライオネルは、解体所でもらった証明書を片手にカガシィーのいる報告カウンターに座り、証明書とカードをカガシィーに渡した。
「今回も最高評価ね。さすがだわ」
「慣れだよ、慣れ」
「いくら慣れって言っても、この短時間でワイルドボアを見つけて、なおかつ最高評価で狩ってくることは難しいのよ。だから、さすがね」
「お、おう……」
ライオネルを手放しで褒めるカガシィーに、ライオネルはなんだか気恥ずかしくなって頬をかいた。
「あれ、ライオネルさん、もう戻って来たんですか?」
「あぁ、コティーか」
「先輩がライオネルさんに指名依頼を出すって言ったときは、五級の人にはまだ早いと思ったんですが……。ライオネルさんって強いんですね~。フォレストタートルの時はアレでしたけど」
カウンターの奥から出て来たコティーまで感心したようにそう言った。
「褒めてるのか貶してるのか分からんな」
「褒めてるんですよ~」
「ならいいが……」
ライオネルがコティーと軽口を言い合っていると、依頼達成の処理を終えたカガシィーが報酬とカードをライオネルに渡す。
「依頼をこなしてくれてありがとう。評価に加点しておいたわ」
「あぁ、助かる。じゃあ俺はこれで……」
「ところでライオネルさん、明日もギルドに来るわよね?」
「? あぁ、来るつもりだけど……?」
前に狩ったワイルドボアよりも小ぶりだったためか、前よりちょっと少ない報酬の銀貨七枚を受け取ったライオネルは、席を立とうとしたところにカガシィーから声を掛けられた。
「明日もあなたに指名依頼を出すつもりだから、興味があったら今日みたいに報告カウンターに来てちょうだい」
「また指名依頼か。依頼の内容は?」
「ワイルドボア一頭の狩猟よ」
「ぐへぁ……またかよ……」
またワイルドボアを狩ることになりそうだとライオネルは口端をへの字に曲げながら嫌そうな顔をする。
「最近本当にワイルドボアが多いのよ。このまま最高評価で後何頭か狩ってくれば、四級に昇級できるから頑張ってね」
「え? もう昇級するほど点数溜まったんですか? すごい早くないですか?」
「そんなに依頼こなしてないけどなぁ……」
もうすぐ昇級できると言われてもライオネル自身昇級に魅力を感じていないので驚きはないが、依頼達成数と点数の数が釣り合わず首を捻った。
「今はまだ足りないけどワイルドボアを狩っていればすぐに上がるわよ。ワイルドボアを一人で、それも短時間で狩るなんて三級でも数人しか出来ないのよ? それにライオネルさんの依頼は指名依頼で、なおかつ無傷のワイルドボアを狩猟したことで最高評価。ワイルドボア一頭狩ってくるとライオネルさんにはいっぱい点数が入ってくるのよ」
「そういえばワイルドボアってそれくらいには強いんでしたね。ライオネルさんが簡単に狩ってくるからなんだか感覚が狂っちゃってたみたいです」
「なんだかよく分からんが、とりあえず明日また来て指名依頼を受ければいいんだな?」
カガシィーがコティーに色々と説明していたが興味のないライオネルはその説明を聞き流し、明日のことについてカガシィーに尋ねる。
「そう、これから何日かはずっと指名依頼を出すつもりだからよろしくね」
「はぁ……わかったよ」
「ライオネルさん、がんばです!」
「ありがとうコティー……」
この日からライオネルは三日間、ずっとワイルドボアを狩り続けた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ほら、終わったぞ」
「はい、お疲れさま。最高評価ね」
「もうワイルドボアは見飽きたぞ……」
「ライオネルさんが何頭か狩ってくれたおかげでワイルドボアの目撃も減ったから、今日で指名依頼もお終いね」
「本当か!? もういいんだな!?」
ライオネルはカウンターに手をつき、カガシィーの方へ乗り出さんばかりに喜んでいる。それもそのはずで、ライオネルはこの三日間ワイルドボアだけを狩り続けていたのだ。
ライオネルが初めての指名依頼を達成した翌日の朝、ギルドの受付でカガシィーはこう言った。
「ライオネルさん、一日でワイルドボア二頭くらい狩れるわよね?」
「……え?」
ギルドからの指名依頼は「ワイルドボア二頭の狩猟、期限は明日の朝まで」となっていた。その程度ならばと引き受けたライオネルは、早速森に出かけて夕飯時までにワイルドボアを二頭狩りギルドへと戻る。
その翌日、
「あなたなら三頭くらいいけるわよね?」
「ちょ、まっ……」
依頼は一頭増えて三頭狩ってこいというものなのに期限は一日という鬼畜具合。ライオネルもさすがに難色を示したが、評価点をさらに追加すると言われて渋々受けてしまった。連日森でワイルドボアを狩っていたせいで、森の少し奥に入らないとワイルドボアが出てこなくなっており、少し時間はかかったが何とか狩った三頭をギルドが無償で貸し出してくれた荷車に乗せて戻った。
このようにライオネルは三日間ワイルドボアだけを狩り続けた。それがやっと終わりを迎え、満面の笑みでカウンターに座っているライオネルの喜びもひとしおだ。
「えぇ、本当にありがとう。それと……」
カガシィーはいつもならすぐに返却するカードを再びカウンターの上の水晶にかざすと、カードの空白だったところに星が四つ浮かび上がってきた。
「はい、おめでとうございます。ライオネルさんは昇級し、四級となりました」
「おぉ~、これで四級の依頼も受けられるんだな」
「そうなるわね。それに六級、五級のカードよりも四級のカードはいろんなところからある程度の信頼があるの。ちょっとだけ動きやすくなったかもね」
「ほ~。あんまりカードを見せたことが無いからよく分からんがいい事なんだろう」
ライオネルはもらったカードを意味もなくいろいろな角度から見て楽しんでいるようだ。そんなライオネルを見ながらカガシィーはモジモジしている。
「その~、ライオネルさん?」
「なんだ~?」
「四級になったあなたに頼みたいことがあるの……」
「まさかまた指名依頼か!?」
いい笑顔で頷くカガシィーに対して、ライオネルは大きなため息をついた。
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