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意外な手紙のあて先

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 お城の再建工事がはじまった。
 ジェイク王子もアンドルーも、おおぜいの職人さんたちといっしょに汗を流して、毎日働いた。
 わたしもエプロンをつけて、台所のお手伝いをしたんだよ。もちろん、ティファニーといっしょにね。
 バスケットにサンドウィッチやからあげ、フルーツなんかをたくさんつめて、ふたりのところへ昼食を運ぶ。
「王子ー! アンドルー! お弁当を持ってきたよー!」
 おーい、と手をふったら、バサバサッ、頭上で羽ばたきの音がした。ジェイク王子を背に乗せて、アンドルーが地上におりてくる。
 ジェイク王子がとびおりると、アンドルーはひとの姿に変身した。
「あー、腹へった!」
「わあ、おいしそう!」
 広げたピクニックシートの上にわれ先にとすわり、「「いただきまーす!!」」と大きな声でいう。
 ふたりとも、ずいぶんおなかがすいているみたい。お行儀がわるいのもお構いなし。手づかみでドンドンたいらげていく。
「す、スゴい……! ブラックホールみたい!」
「あなたたちねー、少しくらい遠慮ってものを知らないの?」
 ティファニーとともに、あ然としていたら、
「あっ、きさま! それはおれのだぞ!」
「へー、どこに名前が書いてあるのさ?」
 おかずをとりあって仲よくケンカをはじめた。
「もう、しょうがないなあ」
「チトセったら、あまいわよ」
 ティファニーは不満そうに言った。
「え、そう? とっても楽しそうだけど……」
「言われてみれば、兄弟みたいね」
「そうしたら、どっちが兄で弟になるの?」
「!」
 わたしとティファニーは「フフッ」と笑いあった。
 アーレンさんがおばあちゃんのもとへ去ってから、おだやかな日々がいくにちか流れた。
 わたしも、このカデール王国での暮らしになじんできた。
 けれど、まったく不安がないわけじゃない。
 わたしがカデール王国にやってきたのは、おばあちゃんの手紙をアーレンさんに届けるためだと思っていた。なのに、なんにも変化が起きなかったから。
 このまま、ここで暮らすことになるのかな……。
 わたしはどうしたらいいんだろう。
 はあー、とため息が勝手にこぼれちゃう。
 ボーッと考えごとをしていたら、
「どうした、チトセ? 食べないのか?」
 ジェイク王子が心配そうに聞いてきた。
「ううん、食べるよ。ただ、ちょっと、向こうでお母さんたちが心配してないかなあ、って思ったら、胸がキュッとして苦しくなってきて……」
「だいじょうぶよ、チトセ。きっと帰れるわ。チカゲと同じように」
 やさしいティファニーのはげましに「うん」とうなずく。
 すると、ジェイク王子はわたしの手をとった。
「それまでは、ここにいるといい。おれのそばに……。本当のところ、帰ってほしくないのだけどな」
 意味深なコトバにドキッとして、わたしは目を見ひらいた。
「え?」
「あの騒ぎで忘れたのか? おれはそなたにプロポーズしたのだぞ?」
 ニヤリといたずらっ子のように、わたしに歯を見せて笑う。
 そのあと、グイッと肩を抱きよせられ、ジェイク王子の胸に飛びこんじゃった!
「きゃっ♡」と、ティファニーがさけぶ。
 ひえ~!
 びっくりして目をまわしていると、反対側から引っぱられ、今度はアンドルーにうしろから抱きしめられていた。
「ジェイク王子、お忘れなく。チトセはおれのお姫さまだ!」
 とたんに、ジェイク王子は怒りだした。
「きさま、くっつきすぎだろ! ドラゴンの分際ぶんざいで……!」
「王子こそ!」
 ぐぬぬぬ、っとにらみ合って、今にもケンカしそうなふたり。
 ふたりのあいだにはさまれながら、わたしは飛びあがった。
「や、やめてよ~! ケンカはしないって約束したでしょっ」
 なのに、いつもこの通りだ。
 これでは帰れる日がきたとしても、安心して帰れないよー!
 
 結局、わたしが家に帰れたのは、ずっとずっとあとのことだった。
 それまでには、いろんな事件が起きた。
 冒険もたくさんしたんだよ。
 けど、それはまたべつのお話でね。



 おしまい!


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