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あやまち
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ジェイク王子がピクッとくちびるのはしを上げて、顔をひきつらせた。
「なんだと! そんな勝手が許されるとでも思っているのか?」
「なぜ、ドラゴンのぼくが、人間の許しを得ないといけない? あとからやってきて勝手に国をつくったのは人間のほうだ。ドラゴンのほうがこの土地に何百年も、何千年も前から住んでいる」
「だが、今は人間のものだ。カデール王国のものだ! この土地に住みたいのならば、王に従え!」
「それでは出ていけばいいのだろう? 言われなくても、ぼくは出ていくとも。チトセといっしょにね」
「チトセはおれのものだ! ほかは許せても、それだけは許さない! どうしてもって言うなら、きさまを倒す! おれと戦え!」
ジェイク王子は怒り狂っていて、アンドルーは落ち着きはらっていた。
「王子さまは、だれとケンカをしているの?」
「さあー?」
「あのローブのひと、とっても美しいわ」
「ええ、ステキねえ」
さっきまで笑顔だったひとびとも、とまどったようすで顔を見あわせていた。
なかには、のんびり会話をしていたり、やっかいごとに巻きこまれてはたまらないと、そうそうに逃げだしたりするひとも。
気づくといつのまにか音楽がやんでいて、お城の兵士たちがあちこちから何人も集まってくるのが見えた。
「おい、くせ者はあっちだ!」
「王子ー!」
「今お助けにまいります!」
みんな、槍や弓矢を持っている。
わたしは飛びあがった。
このままじゃ、アンドルーがつかまっちゃう!
大きなケガもしかねないよっ。
わたしはあわててふたりを止めに入った。
「ちょっとふたりとも! ケンカはダメだよ……! おねがい、ジェイク王子! アンドルーもやめて!」
わたしは必死になって、ふたりに訴えた。
けれども、
「あぶないからさがってろ!」
「そうだよ、チトセ。少しさがってて」
ふたりともにらみ合ったままだ。
魔法で透明になって身をかくしていたティファニーが、わたしの前に姿をあらわした。
「チトセ、今のうちに逃げましょう!」
「ええっ、そんなことできないよ!」
「けど、これはチャンスよ! みんながふたりに気をとられているうちに、ここを去るのよ! チカゲの手紙をアーレンに届けにいくんでしょう? アンドルーならだいじょうぶだから!」
頭では、ティファニーの言うことが正しいってわかっていた。
でも、どうしてもうなずくことができない。
「わかってる……! わかってるけど、ジェイク王子とアンドルーをこのままにしておけない!」
おばあちゃんだって、きっと、わたしと同じことを思うはず。ふたりの争いを止めるための行動をとるはずだ。
でも、どうしたらいいかわからない……!
すると、おろおろしているわたしに気づいて、アンドルーはニコニコ笑いかけてきた。
「心配しなくていいよ、チトセ。ぼくは強いから。すぐに片をつける……!」
とたんにラベンダー色の瞳が光って、アンドルーはまばゆい光に包まれた。
「ウオオオーッ!」
コトバにならないうなり声と、はげしい羽ばたきの音。
同時に、一陣の風が吹きあがる。
何が起きているの!?
わけがわからないまま、とつぜん放たれた強い、まぶしい光に顔をしかめる。
身動きできないでいたら、四方に飛んでいた、またたく光がおさまった。
ラベンダー色に輝くうろこ、大きなするどいかぎ爪を持ったドラゴンが、目の前に存在していた。
「なんだと! そんな勝手が許されるとでも思っているのか?」
「なぜ、ドラゴンのぼくが、人間の許しを得ないといけない? あとからやってきて勝手に国をつくったのは人間のほうだ。ドラゴンのほうがこの土地に何百年も、何千年も前から住んでいる」
「だが、今は人間のものだ。カデール王国のものだ! この土地に住みたいのならば、王に従え!」
「それでは出ていけばいいのだろう? 言われなくても、ぼくは出ていくとも。チトセといっしょにね」
「チトセはおれのものだ! ほかは許せても、それだけは許さない! どうしてもって言うなら、きさまを倒す! おれと戦え!」
ジェイク王子は怒り狂っていて、アンドルーは落ち着きはらっていた。
「王子さまは、だれとケンカをしているの?」
「さあー?」
「あのローブのひと、とっても美しいわ」
「ええ、ステキねえ」
さっきまで笑顔だったひとびとも、とまどったようすで顔を見あわせていた。
なかには、のんびり会話をしていたり、やっかいごとに巻きこまれてはたまらないと、そうそうに逃げだしたりするひとも。
気づくといつのまにか音楽がやんでいて、お城の兵士たちがあちこちから何人も集まってくるのが見えた。
「おい、くせ者はあっちだ!」
「王子ー!」
「今お助けにまいります!」
みんな、槍や弓矢を持っている。
わたしは飛びあがった。
このままじゃ、アンドルーがつかまっちゃう!
大きなケガもしかねないよっ。
わたしはあわててふたりを止めに入った。
「ちょっとふたりとも! ケンカはダメだよ……! おねがい、ジェイク王子! アンドルーもやめて!」
わたしは必死になって、ふたりに訴えた。
けれども、
「あぶないからさがってろ!」
「そうだよ、チトセ。少しさがってて」
ふたりともにらみ合ったままだ。
魔法で透明になって身をかくしていたティファニーが、わたしの前に姿をあらわした。
「チトセ、今のうちに逃げましょう!」
「ええっ、そんなことできないよ!」
「けど、これはチャンスよ! みんながふたりに気をとられているうちに、ここを去るのよ! チカゲの手紙をアーレンに届けにいくんでしょう? アンドルーならだいじょうぶだから!」
頭では、ティファニーの言うことが正しいってわかっていた。
でも、どうしてもうなずくことができない。
「わかってる……! わかってるけど、ジェイク王子とアンドルーをこのままにしておけない!」
おばあちゃんだって、きっと、わたしと同じことを思うはず。ふたりの争いを止めるための行動をとるはずだ。
でも、どうしたらいいかわからない……!
すると、おろおろしているわたしに気づいて、アンドルーはニコニコ笑いかけてきた。
「心配しなくていいよ、チトセ。ぼくは強いから。すぐに片をつける……!」
とたんにラベンダー色の瞳が光って、アンドルーはまばゆい光に包まれた。
「ウオオオーッ!」
コトバにならないうなり声と、はげしい羽ばたきの音。
同時に、一陣の風が吹きあがる。
何が起きているの!?
わけがわからないまま、とつぜん放たれた強い、まぶしい光に顔をしかめる。
身動きできないでいたら、四方に飛んでいた、またたく光がおさまった。
ラベンダー色に輝くうろこ、大きなするどいかぎ爪を持ったドラゴンが、目の前に存在していた。
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