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とつぜんのプロポーズ

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 おばあちゃんの手紙は、また、だれかにとられてしまわないように、肌身離さずドレスの下にしっかり忍ばせてある。
 念のために無事なのを確認してから、わたしは顔をあげた。
 さあ、ティファニーをさがさなくちゃ。
 どこにいっちゃったんだろう。
 きょろきょろしながら、手当たり次第さがしまわるうちに、カーニバルの会場から離れた、べつの庭にでてしまった。
 そこは月明かりに照らされた、しんとしずかな庭だった。ひとけがまったくしなくて、たいまつの明かりも少なく、見はりのひとも見当たらない。
 アンドルーといっしょにお城を抜けだすときに、ぴったりなルートのように思えた。
 お城のなかだからって、すべての場所にひとがいるわけじゃないんだね。
 そんなふうに庭のようすをうかがっていると、茂みの向こうにガサゴソと動くあやしい黒い影が見えた。
 だれかいる……!
 わたしはハッと立ち止まり、壁にピタリとからだを押しつけ息を殺した。
「へへへ、めずらしいものをつかまえたぜ!」
「売り飛ばせば金になる。おれたち、大金持ちになれるぞ!」
 興奮したような話し声。
 よく見ると、そこにいたのはふたり組の男のひとたちだった。
 そして、右側のひとの手にティファニーがつかまっていたんだ!
 抜けだそうと必死にもがくティファニーの姿を見たとたん。
 助けなきゃ!
 身をかくしていた壁から飛びだして、右側の男のひとのうでにしがみついた。
「ティファニーを返して!」
「チトセ!」
 ティファニーがわたしの名前をよぶ。
 わたしは男のひとの太い指をつかんで力をゆるめようとしたけれど、まったく歯が立たなかった。反対に両手をうしろにキリキリとねじり上げられてしまった。
「い、いた……離して……!」
 あまりの痛さに目を閉じて、うめき声をあげる。
 すると、ふたり組はニタニタ余裕たっぷりに笑った。
「なんだ? このおじょうさんは?」
「おれ、知ってるぜ。あんた、異世界のお姫さんだろ?」
「おっ、本当か!? そりゃあいい! さらっちまおうぜ!」
「おう、どこかに売り飛ばせば、さらに金になるな!」
 このひとたち、ひとさらいだ!
 どうしよう、このままじゃ、どこかに連れていかれる!
「だれか、助けてー!!」
 力の限り、思いっきりさけんだときだ。
 ピシッという音とともに、
「てっ!」
 わたしの手をねじりあげていた男のひとが声をあげる。
 また、ピシッ、ピシッ、と音が鳴った。
「だれだ!? 石を投げるやつは!」
「出てこい!」
 あたりかまわず、暗がりに向けてわめきちらすふたり組。
 石……?
「そういうおまえたちこそ、何者だ?」
 暗がりのなかから、ジェイク王子があらわれた。
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