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とつぜんのプロポーズ
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待ちに待ったカーニバルの夜がはじまった。
お城の庭の噴水を中心とした広場を取り囲むようにして、布を張った露天まででていた。
ピーチ色のぼんぼりのような形をした照明。
続々とつめかけるひとびとに、明るい音楽。
想像していたよりもずっと、ずっと、にぎやかで楽しい雰囲気だったんだ。
けれど、わたしはさっきからガマンを強いられていた。
というのも、まるでサイン会や握手会のように、わたしの前に長い行列ができていたからだ。
「はーい、みなさーん! 異世界の姫に会いたい人は先に整理券をとってくださいねー。横入りは厳禁ですよー!!」
マエダさんがメガホンを手にしながら、テキパキと誘導している。
みんな、わたしをひとめでも見ようと、城下町から集まってきたらしい。
「きゃー、異世界の姫!」
「ホンモノだ~!」
「がんばってくださーい!」
わたしは笑顔でこたえ、ヒラヒラと手をふりつづけたけれど。
こんなときにかぎって、ティファニーは「城内のようすを見てくるわ」ってどこかへいったきり戻ってこない。
わたしはずっと笑顔を保っているものだから、顔の筋肉はひきつってくるし、手はつかれてくるし、もうガマンの限界だー!
アンドルーがわたしたちを迎えにくるまでに、ティファニーをさがしださなければ。
そのためにも、ひとりになる必要があった。
「マエダさん、マエダさん!」
わたしはマエダさんの服を引っぱって、こちらにふり向かせた。
「チトセおじょうさま、どういたしましたか?」
「あ、あの、ちょっとだけ、休けいをとっていいですか? お、おトイレにもいきたいし……」
「おトイレ……?」
マエダさんはそうつぶやいたあと、なぜか赤面した。
「これは、これは! マエダとしたことが……! 異世界の姫も、われわれと同じなのですねー。失礼いたしました!」
マエダさんはあわてたように、ふたたびメガホンを手に取った。
「お並びのみなさまー! ただ今より三十分ほど休けいに入りまーす! チトセおじょうさま、ご退室ー!」
わたしがイスから立ちあがると、「わあっ」とまわりから歓声があがった。
「おおっ、異世界の姫が動いたー!」
う!
なんか、ちょっと、恥ずかしい。
「ど、どーも、どーも!」
とりあえず、ペコペコ頭をさげる。
わたしはパチパチとたくさんの拍手に見送られながら、フクザツな思いで会場をあとにした。
お城の庭の噴水を中心とした広場を取り囲むようにして、布を張った露天まででていた。
ピーチ色のぼんぼりのような形をした照明。
続々とつめかけるひとびとに、明るい音楽。
想像していたよりもずっと、ずっと、にぎやかで楽しい雰囲気だったんだ。
けれど、わたしはさっきからガマンを強いられていた。
というのも、まるでサイン会や握手会のように、わたしの前に長い行列ができていたからだ。
「はーい、みなさーん! 異世界の姫に会いたい人は先に整理券をとってくださいねー。横入りは厳禁ですよー!!」
マエダさんがメガホンを手にしながら、テキパキと誘導している。
みんな、わたしをひとめでも見ようと、城下町から集まってきたらしい。
「きゃー、異世界の姫!」
「ホンモノだ~!」
「がんばってくださーい!」
わたしは笑顔でこたえ、ヒラヒラと手をふりつづけたけれど。
こんなときにかぎって、ティファニーは「城内のようすを見てくるわ」ってどこかへいったきり戻ってこない。
わたしはずっと笑顔を保っているものだから、顔の筋肉はひきつってくるし、手はつかれてくるし、もうガマンの限界だー!
アンドルーがわたしたちを迎えにくるまでに、ティファニーをさがしださなければ。
そのためにも、ひとりになる必要があった。
「マエダさん、マエダさん!」
わたしはマエダさんの服を引っぱって、こちらにふり向かせた。
「チトセおじょうさま、どういたしましたか?」
「あ、あの、ちょっとだけ、休けいをとっていいですか? お、おトイレにもいきたいし……」
「おトイレ……?」
マエダさんはそうつぶやいたあと、なぜか赤面した。
「これは、これは! マエダとしたことが……! 異世界の姫も、われわれと同じなのですねー。失礼いたしました!」
マエダさんはあわてたように、ふたたびメガホンを手に取った。
「お並びのみなさまー! ただ今より三十分ほど休けいに入りまーす! チトセおじょうさま、ご退室ー!」
わたしがイスから立ちあがると、「わあっ」とまわりから歓声があがった。
「おおっ、異世界の姫が動いたー!」
う!
なんか、ちょっと、恥ずかしい。
「ど、どーも、どーも!」
とりあえず、ペコペコ頭をさげる。
わたしはパチパチとたくさんの拍手に見送られながら、フクザツな思いで会場をあとにした。
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