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ドラゴンのすみかへ

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「ここが、心当たりよ」と、ティファニーが指をさした場所を見たとたん、わたしはポカンと口をあけた。
 そこには、お城全体がスッポリ入ってしまいそうなほど、大きな入り口の洞窟どうくつがあったんだ。ひんやり、ジメジメとした空気がなかから漂ってくる。
「お城と同じ敷地に、こんな場所があるなんて……」
「ここはね、一部のものしか知らないの。もし知っていたとしても、好んで近づく人間なんていないわ」
「安全っていうこと?」
 きょとんとしたら、ティファニーは「フフッ」と意味ありげに笑った。
「さあ、どうかしら? それはチトセしだいね。だって、ここはドラゴンのすみかだもの」
「ドラゴンのすみか!?」
 わたしは怖くて、震えあがった。
「どっ、どうして、こんなとこに連れてきたの?」
「逃げるにしても、アーレンに手紙を届けるにしても、翼が必要よ。ドラゴンたちに協力を求めるのがいちばんなの」
「でっ、でもっ、協力なんてしてくれる……? わたしはドラゴンたちのこと知らないし、ドラゴンたちだって、わたしのこと知らないでしょう?」
「そのあたりは、だいじょうぶ。彼らはお姫さまが大好きだから、お友だちになりたがるはずよ」
「え、そうなの?」
「まあ、もっとも、大好きすぎて食べたがるドラゴンもいるけど」
「たっ、食べたがる!? そんな……!」
「そのときは、わたしがチトセを守るから! ただし、お行儀よく、彼らの機嫌を損ねないように気をつけてね」
 お行儀ぎょうぎよく、機嫌を損ねないように……?
 そうすれば、食べられないですむの?
 じゃっかんの、ううん、大きな不安があるけれど。
 もう、まごまごしている時間はないし、ドラゴンたちにおねがいする道しか残されていないんだ……。
「う、うん、わかった……!」
 わたしは意を決してから、洞窟のなかへと足を踏みいれた。
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