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王子さまの気の毒な事情

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 思わず、あ然とした。
 えー、何これ。この、王子さまらしい態度!
 わたしに対する態度と、一八〇度ちがうじゃーん!
「いいえ、話をはぐらかすのはおよしになって! わたくしの気持ちはご存じでしょう?」
 キレイな女の子はだいたんにも、ガバッとジェイク王子のうでに抱きついた。
 わあっ!
 スゴい、ラブシーンだ!
 どっ、どうしよう!
「エイプリル! 客人の前だぞ!」
 ジェイク王子もおどろいたらしく、口調がもとに戻っちゃっている。突きはなすこともできないらしく、されるがままだ。
 もしかすると、王子にも太刀打ちできない相手なのかも?
 とりあえず、わたしもなんとかしなくちゃって思って、両手で顔をおおった。……と言っても、指のあいだからシッカリのぞいちゃっていたけれども。
 やがて、
「客人……?」
 彼女はやっと、わたしの存在に気づいてくれた。
 王子にくっついていたからだを離し、
「まあ、ジェイクさまの客人でいらしたのね? わたくし、てっきり、台所の下働きのむすめかと……」
 小さく首をかしげる。
「あー、こんなかっこうをしているから……」
 そもそも逃げだすために着ている服だもん。
 正直に言うわけにもいかず、時間かせぎのためにエプロンのシワをのばしていると。
「あなた、だれ?」
 んんっ?
 おかしいな。彼女の瞳が一瞬、するどくなったような。
 その態度にとまどいつつ、わたしは自己紹介をはじめた。
「わたし、ちとせです……。あの、みんなには『異世界の姫』って言われているみたいだけど、ぜんぜん姫じゃあないです! ふつうの子で……!」
「そうなの、あなたがうわさの……。わたくしはエイプリルです。よろしく」
 わたしの頭のてっぺんからつま先まで見るように、じろじろと見られちゃった!
 エプロンの布をつまんでいた指に、思わずキュッと力が入る。
 彼女はわたしと対照的に、自信たっぷりに笑った。
「わたくしたち、これから大切な話があるの。部外者のあなたは遠慮してくださらないかしら?」
「!」
 この、エイプリルさんって女の子、ちょっとやそっとじゃお目にかかれない芸能人みたいにとってもキレイ。でも、なんか感じわるいなあ。
 けれど、ジェイク王子の部屋から去る口実を与えてくれた!
「えっと、そ、それじゃ、失礼しまーす……!」
 わたしとティファニーは、そそくさと部屋をでていった。
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