3 / 4
最初のサヨナラと砂時計の繰り返し
しおりを挟む
病院内を足速に進み、震える体を抑え、目的のプレートが書かれたドアをガラリと力任せに開いた
扉の向こうには、目が痛くなるような真っ白な病室で沢山の管に繋がれた彼女が眠っていた
1歩部屋に入ると鼻を劈くようなアルコールと薬品の匂い、
そしてお見舞いの品として置いてある花にしては違和感を感じるほどに強い香りがふわりと、俺の体を包み込んだ
そっと近寄り、眠る彼女を覗き込む
呼吸器で覆われた顔は青白く
病衣の裾から見える腕は枯れ木のように細く
触れたら折れてしまいそうなほど記憶にある彼女よりも随分とやせ細っていた
そして植物だろうか…?病衣に隠れてはいるが身体中に根を張っているように見える
ピッピッピッと鳴る機械音が、まだ彼女が生きていると、証明しているようで何だか心地いい
閉じられていた目は、次第に薄らと開き、
驚いたような、しかし力ない様子でこちらを凝視していた
じわりと霞む目からずっと抑えていた、
流す資格も無いはずなのにこぼれ落ちそうなほどの涙をおさえようと、ごめん、ごめん!と声にならない言葉が喉元にせり上がってくる
「ごめん、本当はきみのことが好きなんだ」
「でも、俺なんかより、先輩と居る方がお似合いだとおもって、」
「こんな事になってるなんて知らなくてごめん、知ろうとしてなくて、ごめん」
「もう、遅いかもしれない
っでも!」
「こんなどうしようもないほどに、
バカな俺だけど、それ以上に
どうしようもなくきみが、好きなんだ」
結局、涙はぽたり、と零れ
彼女の青白く薄い肌におちた
「ぁ…」
小さく彼女が呻く、はくはくと口を開き何かを答えようとしてくれている
「あり、が…ぉ、ご、め ね」
かすれた声でぽつり、嬉しそうにそう答え
皮膚の薄い肌を伝い涙を零した彼女は、
とても、綺麗だった
ピーーーーーーーーーーーーーーーー
長い、長い機械音が静かな病室で
うるさいほどに鳴り響く
あぁ、これはもう叶うことの無い失恋だ
それは何も知らなかった、知らず諦めた自分の自業自得で罰だった
張り裂けそうな程に胸が痛い
しかし彼女の方がずっとずっと、
もっと痛かっただろう
辛かっただろう
ごめん、ごめんとまた繰り返し、もう意味も届くことも無いのに謝る言葉が口から零れた
あぁ、いつの間にか流れていた涙が止まらない
息が上手く吸えない
体が上手く動かない
はくはくと意味の無い動きをする口元を抑え
俺はだらりと彼女の眠るベッドに体を預けるしかなかった
ぽろり、口から零れ落ちた花弁は
美しい程の青だった
扉の向こうには、目が痛くなるような真っ白な病室で沢山の管に繋がれた彼女が眠っていた
1歩部屋に入ると鼻を劈くようなアルコールと薬品の匂い、
そしてお見舞いの品として置いてある花にしては違和感を感じるほどに強い香りがふわりと、俺の体を包み込んだ
そっと近寄り、眠る彼女を覗き込む
呼吸器で覆われた顔は青白く
病衣の裾から見える腕は枯れ木のように細く
触れたら折れてしまいそうなほど記憶にある彼女よりも随分とやせ細っていた
そして植物だろうか…?病衣に隠れてはいるが身体中に根を張っているように見える
ピッピッピッと鳴る機械音が、まだ彼女が生きていると、証明しているようで何だか心地いい
閉じられていた目は、次第に薄らと開き、
驚いたような、しかし力ない様子でこちらを凝視していた
じわりと霞む目からずっと抑えていた、
流す資格も無いはずなのにこぼれ落ちそうなほどの涙をおさえようと、ごめん、ごめん!と声にならない言葉が喉元にせり上がってくる
「ごめん、本当はきみのことが好きなんだ」
「でも、俺なんかより、先輩と居る方がお似合いだとおもって、」
「こんな事になってるなんて知らなくてごめん、知ろうとしてなくて、ごめん」
「もう、遅いかもしれない
っでも!」
「こんなどうしようもないほどに、
バカな俺だけど、それ以上に
どうしようもなくきみが、好きなんだ」
結局、涙はぽたり、と零れ
彼女の青白く薄い肌におちた
「ぁ…」
小さく彼女が呻く、はくはくと口を開き何かを答えようとしてくれている
「あり、が…ぉ、ご、め ね」
かすれた声でぽつり、嬉しそうにそう答え
皮膚の薄い肌を伝い涙を零した彼女は、
とても、綺麗だった
ピーーーーーーーーーーーーーーーー
長い、長い機械音が静かな病室で
うるさいほどに鳴り響く
あぁ、これはもう叶うことの無い失恋だ
それは何も知らなかった、知らず諦めた自分の自業自得で罰だった
張り裂けそうな程に胸が痛い
しかし彼女の方がずっとずっと、
もっと痛かっただろう
辛かっただろう
ごめん、ごめんとまた繰り返し、もう意味も届くことも無いのに謝る言葉が口から零れた
あぁ、いつの間にか流れていた涙が止まらない
息が上手く吸えない
体が上手く動かない
はくはくと意味の無い動きをする口元を抑え
俺はだらりと彼女の眠るベッドに体を預けるしかなかった
ぽろり、口から零れ落ちた花弁は
美しい程の青だった
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く
ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。
逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。
「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」
誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。
「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」
だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。
妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。
ご都合主義満載です!

夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる