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2章 約束と忘れた思い出
45.新米お父さん
しおりを挟む震える手を押え、コンコンと大きく、豪勢な扉を叩く
ギュッと大きな本を片手で抱え、返事が返ってくるを待った
「…どうぞ」
部屋の主ではなく、お付のメイドから入室の許可が出た。プロムスは、「ふー」っと深く息を吐いて深呼吸し、真っ直ぐ前を見つめ、扉に手を掛けた
「失礼します。
王弟殿下の治療に付いて書籍を──」
◇◆◇◆◇◆
「で?」
『いやぁ…そのぉ…』
屋敷でいつものように寛いでいた真夜は使い魔のネコに呼ばれ、鏡越しに異世界の魔王、カメロンと対話していた
「えぇ、聞いたわ。
この前時間が取れそうだから近いうちにこちらに来るって。
で?もう一度言って頂けるかしら?」
『申し訳ない…
緊急の仕事が舞い込んで来て行けなくなった…と子供たちに伝えては貰えないだろうか…』
「いやよ。」
『そこをどーにか!!』
「自分で言いなさい。それが誠意ってものよ
私、別にあなたが来れなくなったって関係ないのだけれど、シロエとクロエは楽しみにしていたの。」
真夜の言葉を聞いたカメロンは「ぐぅ」と唸り、机に倒れ伏した。鏡の向こうで呆れるようにネコが「ぬぁー」と鳴いている
「とってもいい子たちだから頭ごなしに怒りはしないわよ。
ただ少し寂しそうにわかったと言って2人が我慢するだけよ。
あーぁ、可哀想なシロエとクロエ…」
『ぐっ…わざとだろう魔女め…!!!
それがわかっているからこそ頼んでいるんだろう』
「それ、本気で言ってる?
貴方と話す時、あの子たち本当に楽しそうなのよ
なのに、どっかの誰かさんは無愛想で不器用だから、余り好かれてないって思ってるみたいなのよ?」
この前連絡が来た時、鏡の向こう側が消えた後にシロエとクロエは少し寂しそうに「自分たちの事はあんまり好きじゃないんじゃないか」と落ち込んでいたのだ
怖い顔で固まっているカメロンにさらに追い討ちをかけるように真夜は話す
「だから、私越しに用事が出来て来れなくなった…なんて言ったら、最近初めて顔を合わせた血の繋がった父親に要らないと捨てられたなぁんて、」
勘違いするんじゃない?と続けようとしたが鏡越しに伝わるほどの殺気にピタリと口を閉じた
『…わかった。俺から伝える』
「あら、覚悟を決めたの?新米お父さん」
『いや…ちょっと待ってくれ…あと1時間…いや…明日…明日伝える…』
「何言ってるのよ、時間かかりすぎ。
10分だけ時間をあげる。そしたらちゃんと伝えなさいよ」
『10分…?!短過ぎないか!?』
「さっさと伝えなさい、それともこれからヘタレ魔王って呼ばれたい?」
なんなら周りからの呼ばれ方もヘタレ魔王さまに聞こえるようにして上げると告げるとカメロンは、「わかった…わかった…」と両手を挙げた
『話す内容をまとめる…
そしたらちゃんと2人に話す』
「…全く、難儀なものね。普通に話せばいいのに」
ため息をつき、呆れたように、しかし、不器用ながらに子供と向き合う父親に真夜はほんの少し目元を緩めた
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