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2章 約束と忘れた思い出
42.説得する勇気
しおりを挟む「んぁーこれどこが主犯なんだ…??」
「…何してるんです?」
頭を抱えながら地図と睨めっこをしているタージルを部屋に訪れたプロムスは怪訝そうな顔で見ていると、ちょうど紅茶を入れ戻ってきたフレールが説明する
「あぁ、いらっしゃい。プロムスさん
タージルさんは鉛で戦争を起こそうとしている国を絞ってるんです」
「…そういえばそんな話もありましたね。
見たところ、ダメなようですが…」
「や、だってね?鉛を下ろしている国、私の情報網に結構黒い噂が引っ掛かってて絞りきれないんだよ…」
地図を見つめていた顔を上げ、フレールから紅茶を受け取りながらタージルはそう言った。
ブジーア国が亡びる前ならば決め打ちしていたのだが、輸入の流れを見るにどうやらそうでは無いらしい
「ブジーア以外は国土の狭い小国。
フェルトみたいな国土も大きく、資源が埋まっている国はどこも喉から手が出る程欲しい…
まぁだから、どの国が犯人でも、全ての国が単独で個々に行動に起こしていても不思議では無いんだが……」
「でしょうね、ブジーアがこの国に狙いを定めていたのは多分、海と山の両方あるせいでしょうし」
「海なら魚などの海産物、山なら鉱山などが見つかる可能性があるから…ですね?」
答えの出ない議論を続けていると「みゃん」といつの間にかネコが行儀よくタージルの足元に座っていた
「お!姉上、おかえりなさい」
「みゃう、みゃん」
「あぁ、こちらですね…うわ分厚」
ネコの下げていた鞄から出てきたのはどう見ても質量のおかしい分厚い本。
その本に押し花で作られた栞が挟んであり、開くと確かに、求めていた治療法が書かれていた
「…え?あの質量が可笑しくないですか??」
「魔導具…いえ、付与魔法ですか?」
「お、フレール正解。多分これ空間魔法が付与されてるね」
「空間魔法…?!
それって勇者パーティの魔法職の者が使えたと言う伝説の…?!」
「へぇ、伝説なんだ。
…じゃあ私幼少期凄い鞄にダンゴムシとかどんぐりとか入れてたのか…」
プロムスが顔を青ざめさせながら説明するとそれを聞いていたタージルはボソリと小さな声量で子供の頃の無邪気さを呟き、フレールはそれを全力で聞かないふりをした
「と、とりあえずです。
王弟殿下に説明と説得の出来る材料は集まりました。
あとはプロムスさんが頑張るだけです。」
「えぇ…やはりやらなければいけないんです…?」
「大丈夫大丈夫、フレールの書いたシナリオは完璧だ。
私見てないけど」
「え」
不安になるような事を言うんじゃありませんとタージルの頭を叩き、机に置かれた分厚い本をプロムスへと差し出した
「頑張ってください。王弟殿下への説得に最後に必要なのはあなたの勇気です。」
「えぇぇ……」
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