上 下
36 / 50
2章 約束と忘れた思い出

34.誓いと、懐かしく忌まわしい国

しおりを挟む

ついた、ついたのだ、私は
チリンと鈴を鳴らし、お行儀よく座り、眠っている人物を見つめる

あぁ、主よ。前世の私の同胞よ、心からの感謝を

叶わないと思っていた願いを叶えさせてくれてありがとう。
私の宝を守ってくれてありがとう
だから貴方の為に働きましょう。
我が前世の名はマギサ、今世は使い魔の三毛ネコ。
さぁ、もう一仕事、頑張りましょう

「にゃぁーん」

◇◆◇◆◇
「頭を上げてくれ」
「ですが…!」
「いいから。…はぁ、教えてもいいけど、まだ何処にも漏らさないで欲しい」
「…分かりました。」

やっと顔を上げた執事にほっと胸を下ろす
何から話せばいいかと悩んでいるとフレールが「そういえば…」と話し始めた

「何がどうなるか、どうするかなど決まっていませんが、先に名前だけでも聞いても…?」
「は、失礼しました。フェルト王国に仕えるプロムスと申します。」
「ご丁重に。私はグロッサから参りました、タージルです。」
「同じく、部下のフレールと申します。」

軽く自己紹介を終えるとタージルは膝に肘を付いて本題へとはいった

「さて、原因なんだけど、鉛がワインから少量発見されてね。
あぁ、出処は企業秘密って事で。」
「は、はぁ…鉛?鉛って…」

困惑するプロムスの様子に、少し違和感を持ったタージルは軽く説明を混じえながら聞いてみる

「鉛って、体内に入ると結構毒になるんだけれど…
知らなかった?」
「え、そんな…!!我が国では、入れ歯として鉛を…!!」
「入れ歯…?タージルさん、その場合どうなるんです?」
「まじぃ…??やばいな、早急に辞めさせた方がいいね…」

どう対処すればいいのか、早く母上に手紙を出さねば、と思っているとプロムスは顔を真っ青にさせている

「ど、どうすれば…」
「鉛を体内に取り入れさせないように今はするしかないね」
「そうですね…その様子だとフェルトにも治療法は無いようですし」
「えぇ…分かりました。」
「最悪、この事は話してもいい、思っている以上に現状が酷すぎる」

はぁ、と憂鬱な気分になりながらも今すべき事、これからやらねば行けない事の計画を脳内で立てて居るとフレールが「そう言えば」と話し始めた

「この国に鉛を輸出している国ってどこなんです?」
「えぇっと…元々はブジーア国からのもので、ブジーアの政治が安定しなくなってからは他の国…東の…」
「は??ブジーア??…フレール、そこら辺どうだったの」
「…初めて聞きました。なるほど、あの国は本当に…」

舌打ちをしそうなほど苛立ちを隠せないフレールに怯えるプロムスを庇いながら、タージルは頭を抱えた

「ブジーアは滅んでもなお面倒すぎる置き土産を置いていきやがった…」
しおりを挟む

処理中です...