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2章 約束と忘れた思い出
28.魔法のミルクティー
しおりを挟む薄暗い部屋の中、真っ白の何も書かれていない本を閉じ、真夜はふぅ、と深く息を吐き目を瞑っていた
コンコンとノックが響き、「はい」と静かに返事をする
「失礼します、魔女さま」
「あら、エーデル。何かあった?」
「いえ、その…シロエちゃんとクロエくんが…」
「何があったの?」
「マヤぁ~!」
エーデルの後ろに居たのだろうか、泣いているシロエとクロエが飛び出し真夜に抱きついた
グリグリと頭を撫でるとぎゅうっと先程よりも強く抱きつかれる
「あらまぁ、2人ともどうしたの」
「どうやら、怖い夢を見たみたいで…」
「マヤ、シロエいい子にするからいなくならないで」
「クロエも!クロエもなんでもするからすてないで」
「まぁまぁ、どうしてそんな事を言うの?
あなた達はもううちの子です。捨てるだなんて絶対しないわよ」
グズグズと泣きながらいやいやと頭を振る双子を両手でぎゅっと抱きしめポンポンと背中を撫でるとほっと安心したように息が吐かれる
「シロエ、クロエ、どんな夢を見たのか教えてごらん?
夢って言うのは誰かに話せばそこでおしまい、叶わなくなる物なの
だから悪夢を見たのなら話してごらんなさいな」
「…ほんと?」
「ほんとのほんと」
「はなしても、おいてかない?」
「置いてかないわ、だって私は魔女ですもの」
トン、トンと、ゆっくりとしたリズムで背中を叩いているとシロエとクロエは落ち着いてきたのかゆっくりと話し始めた
「マヤも、エーデルもみんなみんなシロエたちをおいてって、」
「それで、クロエたちを引き離そうとしたこわい人たちにさらわれちゃう」
「それは怖かったわねぇ…
大丈夫、絶対そんな事にはならないし、させないわ」
「「ほんとのほんと?」」
「ホントよ。心配なら、そうね
魔法の飲み物を飲みに行きましょ」
ニンマリといたずらっ子のように笑った真夜に双子は首をかしげ、ハラハラと見守っていたエーデルも「魔法…?」と首を傾げた
◇◆◆◇
「いーにおい!」
「ほんと、いい匂い」
顔を見合わせて言う3人の前にくすくすと笑いながら、真夜はミルクティーを置くと、わぁと小さな歓声が上がった
「あれ…?魔女さま、これ普通のミルクティーじゃ…」
「えぇ、そうよ。ジンジャーティーのミルクティー
ジンジャーは体をあっためる効果があるし、いいかと思って」
ふんわりと爽やかな生姜の香りとはちみつが入っているのかまろやかな甘みがほっと落ち着く
「ぽかぽか!」
「ふわふわ~」
「もう、寝ても怖い夢みなさそう?」
「「うん!」」
さっきまでわんわんと泣いていたのが嘘のようにニコニコと笑う双子の頭を撫でて「じゃあベッドまで行きましょうね」と魔法で食器を片しながら言った
「あぁ、エーデル。」
「はい、魔女さま。」
「あなたに伝言、夜空のペンダントは然るべき場所に返した。だそうよ?
後は私が全部やるから貴方もおやすみ」
「へ…??え、あっはい!?ありがとうございます」
はやくはやくと双子に手を引かれた真夜はまだ混乱しているエーデルに「じゃあいい夢を」と言葉を残して寝室へと向かった
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