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2章 約束と忘れた思い出

24.メイド服とサンドウィッチ

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「お!…ふーん…?」

元々持ち込んでいた本を暇つぶしに読んでいたタージルは小鳥から受け取った手紙を見て「んー」と首を傾げた

「タージルさん…?
ってあ、手紙届いたんですか?」
「うーん、じいやも無茶を言うねぇ…
ねぇ、フレール。
君、使用人の立ち振る舞い方ってわかる?」
「え?」

フレールの問いを無視して、にっこりと笑ってタージルは「ちょっとお願いがあるんだけど…」っと何かを企むように小声で言った


◆◇◆◇◆

「(~~!!なんで僕はメイド服なんかを着てるんだ!!!)」

長い廊下をしずしずと歩きながら、事の始まりを思い出す
タージルに使用人の立ち振る舞い方に付いて困惑しながらも、それを采配する立場の主であった事から「少しだけ…」と頷くと「あぁ!よかった!」と先程よりも深い笑みを浮かべメイド服を渡された。

「…は?」
「それを来てキッチンにちょっと忍び込んできて欲しいんだ」
「いや…いやいやいや!
僕は男ですし、そもそもメイドなんて仲間内だと顔を知らない人間なんていたらおかしいでしょう…?!」
「え~?フレールって中性的な顔してるしいけるって!
それに、私達が軟禁されているこの屋敷は元々貴族の出入りが激しいからね。
そこら辺の貴族のお付って事にしどけばバレやしないさ」
「あのそれだけじゃなくて普通に僕が女装したくないんですが」

必死の抵抗もタージルの「あーはいはい、スリーツーワン!」の掛け声で魔法が掛かり、無駄になってしまった

「フレール、君の任務はもう中身のないワインボトル、又はその中身をちょっとはんかちで採取してきてくれ。
あとは~、あ!怪しまれないよう、サンドウィッチでも作ってきてくれると私が嬉しいかな!」
「それ、絶対ワインは次いででしょう…」

なんて会話を思い返しながらキッチンの入口ではぁ…と深いため息をついた
…ここに来るまで誰にもあわなかったが…ここから先はそうもいかない…
意を決してフレールは戦場へと体を進めた──

「あら?貴方どこの家の方?」「初めて見る顔ね」
「あっ…えっと…」
「…あぁ、ごめんなさい、お忍びね?」「お腹でもすいたの?」「大変ねぇ」
「その、はい。軽食を造りに…」
「ならあそこにひと塊に置いてある食材は好きに使っていいはずだわ」「それ以外は持ち込みよ」「さて、私もそろそろ持ち場に戻ろうかしら」

──はず…だったのだが…なんだろう…何かを勝手に察して全然気付かれも不審にも思われない…
とても、助かる、のだが…男としてのプライドが…!!
そう胃をキリキリとさせながら、調理をする振りをしながらワインボトルの中身の回収を終わらせる
聞き耳を立てていたが、どうやらきな臭い噂が幾つかある貴族がこの屋敷に泊まっているようだ…
部屋で待っているはずのタージルは大人しく待っているだろうか、とフレールは気が重くなりながらも完成したサンドウィッチを皿にのせ、未だ噂話に盛り上がっているキッチンか抜け出すのだった
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