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2章 約束と忘れた思い出
18.思い出せない名前と夢
しおりを挟む「ここは、どこ…?誘拐…?」
あぁ、これは夢か、前に見たものに似ている。
この声は辛くて悲しい時にいつも寄り添ってくれた優しい声。
彼女は誰だっけ?
「私より、年下の子達が居るんだ。
ダメよ、泣いたり、不安そうにしちゃ皆に心配かけちゃう…」
そう言って震える手を抑えるように握りしめ、唇を噛み締めた
…強がっていただけでずっと怖がっていたのか…
いつも無理に励ますのではなく、寄り添い優しく言葉をかけてくれて、彼女の傍はとても楽で心地よかった。
「聖女、か。
私はそんな凄い人には慣れないのにな…」
「何言ってんの!あんたは十分凄い子だよ」
「──さん…ありがとう」
これは、私の記憶ではない…?
知らない会話が目の前で起こる。
聖女だった彼女を励ましているのは…
仲間だったはずなのに未だ思い出す事は出来ない
「これは、誰の夢なのかしら」
夢とは記憶を整理するものだと言われている
なら私が今みているのは私の夢だと思っていた…
でもこれは違う、私の記憶では無い、でも誰に記憶でもない…?
「あれ?アップルパイ?」
「あ、真夜ちゃん!
焼き立てのアップルパイ、お1ついかが?」
「わぁい!いい匂いしてたから食べたいー!」
「それなら裕也を呼んできてくれないかしら?」
「んー?いいけど。あ、今日のデザートもしかして裕也からのリクエストか?」
「そうなの、好きって言っていたし、私も食べたかったし。」
「あ、あと1番最初の頃の約束?」
「覚えてました?それもあって今回作ってみたんです」
彼女は少し恥ずかしそうに目元を赤らめてそう言っていた
「ふーん?まぁ、そのぐらいの年の差は別にいいんじゃない?」
「まって真夜ちゃんなんの話?!」
なーんでもない!と言って記憶の中の私は階段をかけていく
あ、そう言えばあの2人は両片思いだったっけ?
結局どうにか進展する前に死んじゃったなと思い出す。
…エーデルとリオンに似てる気がする…
あの夫婦に感じていた既視感の理由がこの夢で分かった気がした
場面はまたあの辛くて苦しくて、悲しい場所に動く
いや、違うこれは…?
「どうして、なんで、先輩…」
「真夜ちゃん…約束もう果たせないじゃない…
バカ…バカ…!!」
私が、死んだ後のものか…
随分と泣かせてしまったようで、心が痛い
ごめん。
「マヤ、おきて!」
「エーデルがご飯だって!!」
声をかけられ。体を揺らされいる
まだ、眠い
「マーヤ!もうおきる時間よ!!」
「シロエ…全然起きないよ…」
「まって…まだ目が、あかないの…」
クロエの泣き出しそうな声に慌てて口を開くが随分と掠れたものになってしまった
無理矢理体を起こして目を擦る
「おきた!」
「もー!おそいわ!」
「えぇ、ごめんなさいね…
おはよう」
「「おはよー!」」
双子の元気な返事に微笑ましくなりながらも夢の内容を思い出す
彼女の名前を思い出す事は出来なかったけれど、きっといつか思い出せるのだろうか…
シロエとクロエに手を引かれ、ながら私はそんな事を考えていた
「眠り姫はだーれだ?」
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