上 下
20 / 50
2章 約束と忘れた思い出

18.思い出せない名前と夢

しおりを挟む

「ここは、どこ…?誘拐…?」

あぁ、これは夢か、前に見たものに似ている。
この声は辛くて悲しい時にいつも寄り添ってくれた優しい声。
彼女は誰だっけ?

「私より、年下の子達が居るんだ。
ダメよ、泣いたり、不安そうにしちゃ皆に心配かけちゃう…」

そう言って震える手を抑えるように握りしめ、唇を噛み締めた
…強がっていただけでずっと怖がっていたのか…
いつも無理に励ますのではなく、寄り添い優しく言葉をかけてくれて、彼女の傍はとても楽で心地よかった。

「聖女、か。
私はそんな凄い人には慣れないのにな…」
「何言ってんの!あんたは十分凄い子だよ」
「──さん…ありがとう」

これは、私の記憶ではない…?
知らない会話が目の前で起こる。
聖女だった彼女を励ましているのは…
仲間だったはずなのに未だ思い出す事は出来ない

「これは、誰の夢なのかしら」

夢とは記憶を整理するものだと言われている
なら私が今みているのは私の夢だと思っていた…
でもこれは違う、私の記憶では無い、でも誰に記憶でもない…?

「あれ?アップルパイ?」
「あ、真夜ちゃん!
焼き立てのアップルパイ、お1ついかが?」
「わぁい!いい匂いしてたから食べたいー!」
「それなら裕也を呼んできてくれないかしら?」
「んー?いいけど。あ、今日のデザートもしかして裕也からのリクエストか?」
「そうなの、好きって言っていたし、私も食べたかったし。」
「あ、あと1番最初の頃の約束?」 
「覚えてました?それもあって今回作ってみたんです」

彼女は少し恥ずかしそうに目元を赤らめてそう言っていた

「ふーん?まぁ、そのぐらいの年の差は別にいいんじゃない?」
「まって真夜ちゃんなんの話?!」

なーんでもない!と言って記憶の中の私は階段をかけていく
あ、そう言えばあの2人は両片思いだったっけ?
結局どうにか進展する前に死んじゃったなと思い出す。
…エーデルとリオンに似てる気がする…
あの夫婦に感じていた既視感の理由がこの夢で分かった気がした

場面はまたあの辛くて苦しくて、悲しい場所に動く
いや、違うこれは…?

「どうして、なんで、先輩…」
「真夜ちゃん…約束もう果たせないじゃない…
バカ…バカ…!!」

私が、死んだ後のものか…
随分と泣かせてしまったようで、心が痛い

ごめん。





「マヤ、おきて!」
「エーデルがご飯だって!!」

声をかけられ。体を揺らされいる
まだ、眠い

「マーヤ!もうおきる時間よ!!」
「シロエ…全然起きないよ…」
「まって…まだ目が、あかないの…」

クロエの泣き出しそうな声に慌てて口を開くが随分と掠れたものになってしまった
無理矢理体を起こして目を擦る

「おきた!」
「もー!おそいわ!」
「えぇ、ごめんなさいね…
おはよう」
「「おはよー!」」

双子の元気な返事に微笑ましくなりながらも夢の内容を思い出す
彼女の名前を思い出す事は出来なかったけれど、きっといつか思い出せるのだろうか…
シロエとクロエに手を引かれ、ながら私はそんな事を考えていた









「眠り姫はだーれだ?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

公爵令嬢は逃げ出した!

百目鬼笑太
ファンタジー
ジョセフィナは先代皇帝の皇后だった。 即位の日、現れた龍により皇帝と帝国は呪われた。 龍を倒すべく異世界より聖女が召喚される。 呪いは解かれず皇帝が亡くなると、ジョゼフィナが皇帝殺しの罪を着せられてしまう。 次代皇帝と聖女によって抗うことも出来ずに刑は執行された。 そうして処刑されたはずのジョゼフィナは、気がつけば10歳の頃に逆行していた。 公爵家? 令嬢? 皇太子妃? 聖女に異世界転生? そんなものより命と自由が大事です! 私は身分を捨てて冒険すると決めました!

彼女の幸福

豆狸
恋愛
私の首は体に繋がっています。今は、まだ。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

ある公爵令嬢の生涯

ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。 妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。 婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。 そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが… 気づくとエステルに転生していた。 再び前世繰り返すことになると思いきや。 エステルは家族を見限り自立を決意するのだが… *** タイトルを変更しました!

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...