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2章 約束と忘れた思い出

16.ネコはにゃーと鳴く

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「しかし…魔王ねぇ…」
「何か気になることでも?」

どういう人柄かわからないが、父親であるなら、いつかクロエが魔王になりたいというのならば、その道を閉ざさないものにするため挨拶をするのが筋ではないのか…
じいやにそれを言ってみると「そうですね」と頷かれた

「なりたいと言ったときにもう既にほかの候補生が居たのならばはそれは争いの火種となります故に…
手をまわしておくのがよろしいかと」
「でも私ここから出られないのよねぇ」

何故だかわからないが私がこの屋敷から一歩外界に出ようとするといつの間にか自室に戻っている、というのがたたあった
外にでなくても大体のことは屋敷内か知り合いの商人によって叶えられるのであまり不便には感じていなかった…が

「こうなると不便さを感じるわ…」
「ならばネコに頼めばよろしいのでは
ネコを媒体に繋げ、通信機のように使えばある程度話す事ができるのではないでしょうか?」
「そうね、ネコに頼みましょう
でもどの子が行ってくれるかしら…黒い猫は私と一緒で外に出られないし…」

屋敷中にいるネコ全ては把握出来ていないが一匹くらい外に興味がある子はいなかったかしらと考えていると「にゃぁ」と足元から鳴き声が上がった

「あら、あなたは…」
「おやおや、あなたが行ってくれるのですか?」

双子を見つけたオッドアイのネコはもう一度にゃぁと鳴き、足元にスリスリとすり寄ってくる
その頭を撫で、真夜は確認するためにその二色のキャットアイを見つめて言う

「一歩外に出たらもしかしたら帰れなくなってしまうかもしれない
私との契約は死ぬまで切れることはないけれど、それでも、本当に行ってくれるのかしら?」

すると今度は先ほどよりも力強くにゃぁと鳴き声が上がった。そしていつの間にかいたのか、黒い猫がクルクルと鳴きオッドアイの猫に体を擦り寄せた

「ほんと、あなたって神出鬼没ね
それじゃあネコ、魔王の件、お願いね」
「みゃぁー」
「随分とやる気満々のようですねぇ」
「怪我はしないようにね」

そういうと尻尾を腕に巻き付けゴロゴロと喉を鳴らし、オッドアイの猫は屋敷から飛び出していった

「さて、そろそろ戻りましょう。
あの二人がきっと泣き止んでいる頃ですぞ」
「えぇ、そうね
エーデルに全部任せてきてしまったけれど大丈夫かしら」

なんて言いながら立ち上がると「あれ?」と手にタオルと果実水を持って戻ってきたのであろうリオンが立っていた

「お二人ともなぜ廊下に?」
「お帰り、リオン。
あの子たちの父親について話していたのよ」
「父親?」

訝しげに聞いてくるリオンに、「あなたがあの子たちの養父にでもなる?」と揶揄い交じりに言ってみると「そ、そう言うのは軽く言うんじゃありません!!」と𠮟られてしまった

「あら残念。
それはそれとして、私、早く孫がみたいわ」
「?!魔女さまは祖母という年齢じゃないでしょう!」
「いえいえ、リオン殿、お嬢様はこれでもかなりの年月を生きていらっしゃいますよ」

じいやの言葉にえっとこちらを見てくるので私もニッコリと笑って答えた

「そうねぇ、ざっと百年くらいはこの屋敷に住んでいるかしら?」
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