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1章 出会いと記憶

7.武器の扱い

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カツカツと音が響く廊下を歩きながら魔女は一本後ろを歩く騎士に話しかけた

「ねぇリオン、貴方武器や防具の手入れってできたりするかしら?」
「手入れ…ですか?えぇ、まあ一通り出来るようにと騎士団に入った時に学びましたので出来ないことはないですが…」
「そう、なら今から行く倉庫にある武器とかを管理して欲しいのよ
まぁ、倉庫というよりあそこは武器庫か…」
「なぜこの屋敷にそんな部屋が…?
失礼ながら魔女さまに剣や槍などの武器は必要ないのでは?」

不思議そうに聞いてくるリオンに魔女はそうなのよと困った顔で返事を返す
あの部屋は元々魔女がこの屋敷に来た時から存在したもので中身の武器たちも最初からずっとあったものだった
それ故、よくわからず、放置していた。あと、この部屋の主は自分ではないと本能がずっと何かを訴えてくる
しかし、流石に手入れをしなければ錆びてしまうと一度手をとってみたが魔女は魔法が使える以外は普通の女の子だった為、武器の扱いなどてんでわかるわけが無かった

「私、この通り魔法があるから必要ないの
でも、手入れしないと錆びてしまうし、それは流石に可哀想だから、リオンができるならやってくれないかしら?」
「かしこまりました。…あぁ、でも、流石に魔道具などの武器の手入れは…」
「それは私が何とか頑張るわ
最悪、エーデルのお兄さんをここに呼べばいいし」

そう話していると話していた倉庫に辿り着き、ギィっと重圧感のある音をならし扉を開けた
中には一目見ただけで業物とわかるの剣や槍、銃などが置かれており、リオンはゴクリと無意識に喉を鳴らす

「これ…は…」
「すごいでしょう?知らない合間に増えていたりするし、それに珍しい物もあるみたいで錆びらせてしまうのも勿体無いのよ
これ、手入れとか管理とか…できる?」

申し訳なさそうに問いかけてくる魔女に武器に見惚れていたリオンはハッと意識を現実に戻し少し悩みながら慌てて答えを返した

「今の所、見た感じでは出来ない事はないですね
ただ、手入れ道具をそろえなくてはちょっと難しいかと…」
「手入れ道具ね、分かったわ
今度、あなた達に手紙を持ってきてくれた商人がこちらに顔を出すそうなの
来るときに持ってきてもらえるように手紙を出すわ
何が必要かリストアップしておいてくれないかしら」
「はい、お任せください
それにしても…この光景は圧巻ですね」

無造作に置かれていた剣を取るとずっしりとした重さと初めて持ったはずなのに長年使っていたかのように手になじむ感覚をリオンは感じていた
そして部屋の奥に置かれていた鎧をみてぎょっとする

「な、なぜここに王家に伝わる鎧が…!?」
「え?
あら、また増えてるわね。」

指をさしたまま固まっているのを無視し、魔女はペタペタと鎧を触った

「ん?あらこれ呪われてる」
「は?!ってあっ魔女さま呪われているとわかっているのにそうべたべた触ってはなりません!!あー!!!」
「うるさいわねぇ、大丈夫よ耐性あるし死ぬようなものじゃないもの
これ、正当な持ち主が現れないと祝福が呪いに変換するようになってるのね。面白いギミックだわ」

これかぶれるかしらと兜を取るとリオンのあー!!と一番大きい叫び声が屋敷中に響くのだった


◆◇◆

「リオン!!何が…魔女さま?!」
「あらエーデル、騒がしくしてしまってごめんなさいね」
「魔女さま!お願いですからそれから手を放してください!!」
「いーや。これは私が研究するわ」
「いえ…えーっと…?」

騒ぎを聞きつけたのかエーデルが部屋に駆けつけると何故かふわふわと浮き、何かを抱えた魔女と「とりあえず降りてきてください!!」と半泣きで頼み込みこむリオンの姿があったという…
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