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第二章 新世界と神々

これが味噌ですね。醤油こと-2-

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 店員は後ろに行き、直径15センチの土鍋を持ってきた。
 「豆腐を一丁でいいんですか」
 店員は優しく問う。タスクは、はっきりとそして簡素に応える。
 「はい」
 タスクが再び、見て回る。
 「何か、お探しのものがありますか」
 店員に声をかけられる。タスクは戸惑いながら応える。
 「あっ…ああ、鰹節あるかなっと思いまして…」
 タスクが言うと店員は目を大きくして、先ほどのお淑やかに喋り口調から変わり、大きな声で情熱があふれ出す。
 「なんですかそれ、初めて聞きました。もしかしてそれジャポメシアンですか。ここに来られたんだ、薄々はわかっていましたよ———」
 店員は尚も喋り続けるが、タスクは聞き流しつつ話をずらす。
 「…えーと、それじゃあ。醤油も貰えますか」
 タスクが言うと、店員は慌てふためきながら言う。
 「えっ、あ、はい。それでは、こちらの大きい物と小さな物どちらにしますか」
 大きいものは30センチぐらいの細長い塔型。小さいものは何箇所かくびれていて、模様が入っている。蓋ははひし形でちゃんと開けやすい。
 「それでは、小さい方で…」
 タスクは値段を見ずに選んだ。なぜなら持ち運びを考えれば妥当だからだ。しかし、大きいものはより倍の金額だ。店員は居ない。もう、後戻りはできない。
 「そうでしたー。それで…鰹節とやらはどうやって作るんですか」
 店員は醤油の小瓶を持って来ると、早口で聞いてくる。
 「まず、頭を落とし、皮を取って身にしたものを、沸騰するギリギリのお湯につけます———」
 タスクは細かい所を話し終え最後に仕上げをいう。
 「そして干す。それでもいいのですが、もっと良くする、一段階上の方法もあるんですが、知りたい出すか」
 タスクが言うと、店員は強い眼で訴えて来る。
 「ぜひ」
 店員が言うと、タスクは手で口を隠し、店員の耳に囁く。
 「なん…と、そのような事を……」
 店員は絶句している。タスクが離れ、店員の前に立つ。
 「こっちにカマンベールチーズってある。あるなら、同じじゃないかな」
 タスクが言うと、店員ははっとして納得するように頷く。
 「確かに———」
 店員が言うと、遠くから潑剌とした声が聞こえて来る。
 「蔵頭……ここに居たんですか~。探しましたよ」
 若い男は慌ててこちらに駆け寄って来る。接客していた、若そうな男を蔵頭と言う。
 若い男は蔵頭に耳打ちをする。蔵頭は表情はあまり崩さないが慌てた様子でタスクに話しかけて来る。
 「本日は色々貴重なお話を頂きありがとうございます。また、機会がありましたら、何卒よろしくお願いします…」
 蔵頭が早口で例を述べている。何かあったのだと察しはつくので話を切り上げることにした。
 「はい、それでは、何かあったのでしょ。ならそちらを先に行かれた方がいい」
 タスクが言うと、蔵頭は早歩きで扉に向かおうとする。
 「すいません、醤油と豆腐いただいてもいいですか」
 タスクが言うと蔵頭は思わず声を出してしまう。振り返り、若者に支持を出す。
 「あっ、すいません。倉本、これをお会計して。それじゃあ行って来る」
 倉本に渡し、蔵頭は扉の中に消えていく。倉本の返事も虚しく響く店内。
 「それでは、お会計でよろしいでしょうか」
 タスクは支払いを済ませる。 


 
 
 
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