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第二章 新世界と神々

進んだ先は鬼が出るか蛇が出るか-2-

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 嫌な予感が当たってしまった。
 「…どれくらい黒くなってる」
 聖少女は応える。
 「お腹の半分ぐらい…」
 聖少女の顔は暗く見える。
 「足は後にして腹を直さないと…ポーションを飲ませてくれないか」
 さっきのポーションを聖少女に渡す。
 「君にしかできない。ポーションを少しずつ、上げるんだ」
 聖少女はヤムの顔を撫でながら、「力を抜いて、ふかーく息を吸ってゆっくーり、はいて」と言う。ヤムは徐々に強張った顔から穏やかな顔になる。呼吸も少し早いが戻りつつある。
 「口を開けて」
 ヤムは口を開けない。強い意志を持って抵抗をしている。聖少女は親指でヤムの唇をなぞる。少し口が緩むが、まだポーションを飲ますには歯が壁になって入らない。
 「これを飲まないと、治らないよ」
 聖少女の感情がこもった言葉を言っても、ヤムの歯は開かない。聖少女は親指を無理やり、口から頬の内側に入れ、下にずらし、入る場所を作る。そこに少しポーションを流し込む。ヤムは苦しくなり口呼吸をした時にポーションを飲みこみむせかえる。
 「ちょっとずつでも飲もう」
 聖少女はそう言う。咳が落ち着き、ヤムは少し口を開ける。ちょっとずつ、口に流し込む。どうやら落ち着いたようだ。聖少女が腹部を見てみると、一部黒いしみのようになっている。聖少女は再び癒しの力で外から治す。
 腹部も完全とは言えないが、だいぶ良くなり、足の方も腫れが引けた。
 「なぜ、あの時ポーションを受け取らなかった」
 タスクが聞くと、ヤムは顔を下げる。
 「だって…ふくらんでるだもん」
 ヤムは恥ずかしさより嫌悪感の方が強いかそう答える。
 「ん、んん」
 タスクは聞き直す。
 「だ か ら、立ってるの見たらそれは嫌でしょ」
 ヤムは怒る、最後方は恥じらいなのか声が小さくなっていた。
 「そう言えば、なんで股間が膨れているのですか」
 聖少女が不思議そうに聞いてくる。本当に純粋に知りたいのだろう。
 「これはね…女神からの贈り物加護なんだよ…」
 タスクはほとほと呆れ返り、気の抜けた言い方をする。
 「女神様がですか…すごいです。それじゃあ、すごい加護なんでしょうね」
 聖少女は目を輝かして聞いて来る。タスクは複雑な顔をする。
 「ああ…とてもすごい加護だよ。これがあることで(女性に対して)無敵なんだ。(誰に対しても)」
 タスクは開き直り、明るく、爽やかに言う。
 「それ本当に…」
 ヤムが喋ろうとすると、聖少女が口に人差し指を添える。
 「ダメだよ、ヤム。女神様に疑いを向けちゃ」
 聖少女は、喋り終えると指を下ろす。
 「…でも、テム」
 ヤムは聖少女をテムと言う。
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