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第二章 新世界と神々

進んだ先は鬼が出るか蛇が出るか

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 「そこで待ってろ」
 下を見ても、虫、蛇はいない。天井にもコウモリもいない。何かに追われたり、逃げ回ったわけではなさそうだ。
 彼らの元に着くと、戦士の足跡がある。
 「足跡を追っていたのか。なんで火の魔法を使ったところで待ってなかったんだ」
 魔法使いは恥ずかしそうに言う。
 「だって…魔法を使った後、足跡が見えたから」
 タスクは気が抜けてどっと疲れた。捻った足の痛みがぶり返してきた。
 「そうか…無事でよかった。ここで一旦休憩しよう」
 彼らは不満げや心配そうな顔をしている。
 「あいつらが心配なんだこんなところで油売ってる暇はないんだ」
 タスクは深呼吸する。
 「わかった。それじゃあ水分を取ろう。戦士を見つける前に倒れるぞ」
 皆は納得していないが、みずを飲む。その間に、タスクは足を冷やし、応急処置をしながら水を飲む。
 「皆は怪我ないか」
 一人一人が答えてくれる。
 「うん大丈夫」
 「大…丈夫」
 「ちょっとすりむいだけ」
 槍の子は擦りむいた箇所を見る。さほどひどくはなさそうだ。魔法使いの言い方的に、どこか、おかしいとこがないか聞き出そう。
 「痛い場所はどこにあるの」
 「平気だから」
 「呼吸が早い、お腹が痛いとかある」
 「うんうーん大丈…夫」
 これは強情だ、後々のことを考えると、ポーションを飲んだ方がいい。
 「わかった、それじゃあ…このポーションを飲んで落ち着くから」
 サックから取り出し、手渡そうとすると、手で弾かれる。とっさに水魔法を使いポーションの瓶を包み難を逃れた。
 (…ふぅ、よかった)
 タスクは安堵したと共に、今の言葉を発しているか、気になり皆を見る。皆はポーションの方を見ていた。
 (声には出していなかったか、よかった)
 ポーションを拾いに行って、戻ると、魔法使いが立ち上がっている。額からは汗が出ている。大粒でなかなか落ちない。脂汗というものだろう。相当きついはずだ。
 魔法使いは歩きだす。普段の半歩より狭い距離でかなり遅い。そして、すぐに倒れ込む。魔法使いを呼ぶ声が聞こえる。
 「ヤム」
 皆一斉に駆け寄る。
 聖少女が癒しの光を魔法使いヤムの胴体にあてる。むやみに当てても効果が無かったり、原因の場所まで届くのに時間がかかってしまう。痛む場所を見つけねば。
 「俺が、光を照らすから、晴れている場所や赤や黒くなっている所を見つけてくれないか。…そこを集中的に直せば良くなると思う」
 聖少女は頷き。ヤムの足を見る足首が赤く腫れている。すぐに光を当てる。徐々にだが腫れは小さくなっている。だが脂汗は止まらないどころか。増えているように思える。呼吸は浅く、呼吸の回数は少なく先ほどまでとは違う。
 「もしかしたら、足首以外にも怪我しているかも。お腹あたり見てくれないか」
 聖少女はローブのスカートを開け覗きこむ。
 「お腹が……黒い」
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