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出会いと別れ

解き放たれる禁術-2-

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 その晩はいろんなものを揚げ、天ぷらパーティーをした。あれだけの天ぷらを食べたのだ朝起きてちょっと胸焼けしたのだろう、リリーファ、スレッジは気持ち悪そうだ。
 「大丈夫、今から野菜スープ作るから」
 薬草は苦い。単にアク抜きが甘いからだと思う。水を飲んでもらって、待ってもらうことに。
 薬草を煮出していると強烈な匂いが、立ち込める。すぐに窓を開け換気。一旦にじるを取り出す。出汁だったら一番だしになるだろう。にじるも使えるかも知れないから取っておく。
 また煮出した頃、野菜を切る。匂いは収まった。そこに、葱、生姜、ニンニク、大根を入れ一煮立ち。
 その間に具材を切った後野菜と薬草を取り出す。匙で一口味見をする。野菜の甘みそして薬草のえぐみは最後にふわっと感じるぐらいだ。ここに塩胡椒を加え再度味見。塩胡椒が味を引き立たせてくれてくれている。
 二人にスープだけ渡した後野菜を入れ柔らかくなるまで待つ。
 「うん、最後苦い感じがふわっとくるけど美味しい」
 リリーファはすすりながら少しずつ飲んでいる。
 「ああ、こんな薬があるならいつでも飲みたい」
 スレッジは一口で半分飲んでしまった。すぐにおかわりと言われそうだ。
 スレッジは器を持ってタスクの元へ行く。
 「おかわりはあるか、なかなかいける」
 タスクは返事をし鍋を回し、野菜を摘む。
 「ちょっと待って……もうちょいか。野菜が柔らかくなったらできあがりだからもうちょっと待って」
 リリーファも飲み終わったみたいで、器を持ってくる。
 タスクは野菜の味見をしてみると、柔らかくまだシャキシャキ感が残っている最高のタイミングで出す。
 「美味しくできてる」
 二人から器をもらって、スープをそそぐ。野菜の落ちる音、スープをはねる音。食欲を誘う音。
 「おお、また野菜が入って味がまろやかになった。最後の苦さが気にならなくなった」
 続いて、リリーファが続く。
 「本当だー…」
 二人とも夢中に食べてくれる。リリーファは飲み干しこちらを不思議そうに見つめている。
 「タスクはなんか、モヤモヤってした感じないの」
 味見してる分タスクの方が食べているがなんともないように見える。いつもより俊敏にさえ感じられる。
 「う~ん、揚げ物とか慣れてるからかな、このぐらいだったら三日間だべてたしね」
 学生時代のことを思い出す。カツ丼、天丼、ロースかつ定食油物ばかり食べていたな。
 二人の顔をふと見ると、冒険初日に怪物を見た時の驚き方をされてタスクも同じような顔になる。
 「えっ、あ、まぁこれは慣れ、慣れだよ。後は辛くなったら薬草のスープとか飲めば治るから」
 タスクはいそいそとリリーファとスレッジの食べた食器を片付ける。
 (あれ本当に言ってる、胃袋化け物だよ)
 (ああ、嘘をついているようには見えなかった。現にタスクはピンピンしとる)
 二人は耳元でヒソヒソ話している。タスクのことを言われているのは明白、油のことを言っているのだろう。
 二人も元気になったことだし、図書館に行くことにする。
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