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新世界と月の光

隣国 マトンセット-6-

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 疲れているが、話をして場を和ませたい。と俺は思った。
 「マトンセットには牛いるの」
 リリーファは息を切らせながら、答える。
 「いる…よ。な…んで」
 俺はリリーファに向き直り、手を差し伸ばしながら言う。
 「牛がいるなら、牛乳、肉、生クリーム、バター、チーズ、スープ色々出来るからさ」
 リリーファはタスクの手を取らないで上に進んでいく。
 そのまま進んでいくと、平野が出てくる。空も広がり燦々と太陽が注いでいる。
 少し進み後ろを振り返ると、麓の景色が見える。ここで休憩を取る。
 「崖を登らんといけんからな。たんと、食べんといかん」
 スレッジはサックの中から、肉の塊を出した。肉の塊を背負いながら来たのは大変だったろうと思う。
 「これを、好きな厚さで切ってサンドする」
 出てきたパンはバゲット。肉に負けないぐらいの硬さと弾力がある物だ。そのパンの上に青いトマト、サニーレタスのような物が乗り、ローストビーフが乗る。その上にサニーレタスそれでパン。食べごたえがありそうだ。
 スレッジは1cmの厚さで2枚のロングサンドウィッチを作った。リリーファは3mmの薄切りを5枚切り、綺麗に重ねてた。タスクは5mm厚さで一枚もらった。にくはまだ余っている。
 「余ってしまったな、肉」
 スレッジは俯きながら呟くように言う。俺は見かねてすぐに声をかける。
 「キノコが取れた後は、疲れてるし、お腹も減ってるよ。またその時に、食べよう」
 スレッジは顔を上げる。
 「そうだな、またその時に食べよう」
 リリーファは不機嫌である。
 「いいから、早く食べようよ」
 皆サンドウィッチを持ち、口に運ぶ……あまりの美味さに、食べることを止められない。皆無言の完食。
 空腹は最高のスパイスというが、その比喩じゃない。パンの硬さを乗り越えてほんのりとした、甘味。レタスのあおさ、瑞々しさ、シャキッとした食感。すぐに訪れるトマトの酸味。その後のローストビーフのタレの強い甘味、最後は塩味のからさで口の中で締めてくれる。口の中で最後まで残ってくれる、ローストビーフを噛み締めながら幸せなひと時は過ぎていく。
 「は~幸せ。お腹いっぱいでも、もっと食べたいのにな~。いっぱい食べられる人はいいな~」
 リリーファは満足げに満面の笑みを浮かべている。
 「我ながらいい出来だ。まだ余っているし、食べたい時はいつでも言ってくれ。後は帰ってから作り方を教える。」
 スレッジはリリーファの言葉を受け、まんざらでもなさそうだ。
 「美味かった…。一気に食べちゃったよ」
 満腹になり瞼が重くなる。寝っ転がる。大地と一体となる。皆も、寝そべる。叫び声が聞こえる。人間の声ではない。
 「ンガゴー」
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