あの約束のモンスターテイマー ~異世界転生モンスターテイム活躍譚~

曇天

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第十七話

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 山道を登る。 木々の間から見える山の斜面に畑が見えた。 ただしばらく人は来ていないのだろう道に草が生い茂っている。

「さっきは助かったよクエリア。 でもついてくるのは危険だぞ」 

「何か理由があるのだろう? ヒールが使える私も同行する。 でもなぜワーキャットを倒しにいくのだ」

 その時ラキナがフードをとろうとする。

「ラキナ!」

「トラいい、クエリアには話す」

 ルキナはそういってフードをとると獣の耳があらわになった。

「それは!? 君は獣人、モンスターなのか!」

「元々はワーキャットで、今はワーピューマだ」

 オレが説明した。

「ワーピューマ...... 上位モンスターか!」
 
 それからクエリアにルキナのことを話した。

「なるほど...... 仲間を探しに、それに帝国が絡んでいるのか」

 クエリアがしばらく目をつぶり考えている。

「それでこの事は黙ってて欲しいんだ」

「......ああ、もちろん。 人の世界ではモンスターは異端の存在。 なにをされるかわからんからな。 それに帝国が絡むなら私にも責任がある」

「責任......」

「......私はこのグランディオス帝国の皇女、クエリエルだ」

「皇女!?」

「こうじょってなに?」

 のほほんとルキナがいった。

「......この国の一番偉い人だ。 それで皇女様がなんでこんなところに」

「......皇女といっても政治的には飾りだ。 今や国は大臣のレゲンギルサに支配されているようなもの」

 苦悶の表情でクエリエルはいう。

「それで」

「レゲンギルサは世界を巻き込む戦争を企てている。 そして他国へと戦争の許可をだすには、私の父である皇帝の勅命が必要だ。 そして父上は病で勅命をだせる状態ではない......」

「つまり戦争をさせないために逃げてきた......と」

「......しかしなぜ戦争を仕掛けようとしているのかわかった気がする」

「ああ、モンスターへの実験で暴走させる方法を探ったのかも」

「かつて魔王を倒した勇者はある方法でその力を増大させたという話が帝国には伝わっているな」

 クエリアは腕を組みそう答えた。

「それが暴走か......」  

(オレは普通に使えたが転生者だからかな。 他にもこの力を使えるものがいるんだ。 トライが戦ったやつらみたいに)

「その方法がわかったら、兵士たちがすごい力をもつ。 他の国なんて簡単に倒せるだろうな」

「ああ、しかしそう簡単ではないらしい。 ほとんど制御できずに発狂暴走してしまうそうだ」

(だろうな...... 心臓を取り出したいほどの苦痛と衝動にかられる。 あれは危険だ)

「それでも強引に戦争を仕掛けようとしているのか」

「ああ、だから、利用されないように他国へと逃げようとしていた。 私がいないなら勅命は下せない」

「なるほど......」

「しかし、レゲンギルサの直属の魔法騎士団はどこの国にも網を張っているだろうし、逃げる場所がない......」

(どこの国にもか......)

「......なら、ひとつだけ安全な場所がある」

「どこだ。 教えて欲しい!」

「魔王島だ」

「魔王島...... 聞いてことがある。 たしかモンスターしかいない絶海の孤島だと...... そんなところに私一人では、いや死んでしまえばそれでおさまるか......」

「多分、死んでもその大臣が後継を名乗るだけだぞ」

「そうだな......」

「それに一人じゃない」

(皇女であることを明かしてくれた。 クエリエルは信頼できる......か)

 オレは背負った鞄をあけた。

「でてこい!」

 スラリーニョとポイルが飛び出してきた。

「なっ、モンスター! ちいさいがスライムとトードか! これは契約印!? まさかテイムしたのか!」

「ああ、これはオレの仲間。 他にも仲間がいる魔王島にね」

「モンスターテイムの力、魔王島、トラどのは何者なのだ」

「トラは魔王島のボスだよ」

 ラキナがいった。

「ボス!?」

「いや、ボスとか...... まあそうか、オレが統治してるんだ。 そこにいるモンスターたちをね」

「あの島を統治...... 信じられん。 帝国の書物にもそんな話でてこなかった」

 驚いてこちらをまじまじみている。

「まあ、どうするかは決めてくれ」

「いや、もちろん。 魔王島ならそうそうみつかることもあるまい。 行かせていただく」

「そうか、よろしくクエリエル」

「クエリアで頼む」

「わかったクオリア。 それじゃワーキャットを殺さないでくれ。 ある程度打撃を与えると、意識が戻る」

「了解した」

 その時ラキナの耳がピクピク動いた。

「何かくる! この匂い! ワーキャットだ」

 その瞬間、木々の間から風のように何かが近づく。 オレはディフロで手に入れた鉄のたてで防いだ。

 ーー光よ、その白き輝きを、うちふるわせよーー

「シャインウェーブ」

「ギャウ!」

 クエリアが放った光の帯にワーキャットは吹き飛ばされた。

「スラリーニョ捉えろ!」

 スラリーニョはその体を巨大にしてワーキャットを体の中に取り込む。 ワーキャットは暴れていたがぐったりして沈んだ。 スラリーニョはそれを吐き出した。
 
「な、なんだ、このスライム! 急に大きくなった」

 クエリアは驚いてスラリーニョをみている。

「スラリーニョはグレータースライムだよ」

「グレータースライム、高位のスライム...... 存在してたのか」

 ポイルにポーションをだしてもらい飲ませた。

「ガハッ! ここは......」

「トゥイル! 私だ」

「お前はラキナ生きていたのか...... その姿は...... ぐっ、頭が!」

「オレと契約しろ。 その苦痛が解除される」

「大丈夫! 契約して! 私も助かったから!」

「わ、わかった......」

 トゥイルというワーキャットと契約した。

「はぁ、はぁ、ああ、苦しくなくなった......」

 トゥイルは落ち着いたようだ。

「ラキナの知り合いか」

「ああ、同じ村のワーキャットだよ。 トゥイルみんなここにいるの」

「多分...... 意識を保てるときにみんなをみた。 なるだけ接触しないよう隠れていたが、どんどん自我を失って......」

「早くみんなを助けないと」

「ああ、次々行こう。 トゥイルはここで待っていてくれ」

 オレたちは山を巡り襲ってくるワーキャットたちをみんな契約していった。

「驚いたよ。 クエリアの剣と光、神聖魔法は助かる。 回復から攻撃まで万能だな。 皇女様なのに」

「信じられない魔法、モンスターを軽く越えてる。 クエリアすごい!!」

 ルキナは感心している。

「まあな最低限の戦闘技能は身に付けた。 それよりわたしの方が驚いているよ。 グレータースライムにエクスポーショントード、ワーピューマ、どれも高位のモンスターだ。 それに君の闇魔法、強力すぎる。 剣技はへたっぴだが」

「仕方ないだろ。 剣は誰も教えてくれなかったからな」

 クエリアは笑っている。

(少しは安心したのか)


 夜になるまえにワーキャット二十名を契約した。

「これで全員か、ルキナ」

「ああ! 村のワーキャットみんなだ! ありがとうトラ!」

 そういって抱きついてくる。 

「よ、よせやい! 照れるぜ」

「それよりワーキャットを運ばないと、二十もの数、人にばれたらことだぞ」

 クエリアはそういって腕をくんだ。

「このまま山を降りたら、村の人にばれるな。 仕方ないポイル、スラリーニョ頼みがある」

 オレたちはスラリーニョにワーキャットたちを囲わせて山を降りた。

「な、なんだ!? ワーキャット」

 村の人たちが驚いている。

「ええ、魔法で運んでいるんです。 全て山から討伐したのでもう安全ですよ」

「これ死んでるのかい......」

 昼にあったおばさんが聞いてきた。

「ええ、水の魔法の中においています動かないでしょう。 毛皮や爪を売るので運んできたんです」  

「動いてないわね。 それに確かに水に沈んでいるわ......」

「ありがとう! 冒険者さま!」

「これで畑が使える! 助かったよ」

 オレたちは夜のうちに村を出て港町に戻り、船へと乗り込み出向した。 町にはクエリアを探している

「ふう、何とかでられたな。 よしスラリーニョ、ワーキャットたちをだして」

「びゅー」

 スラリーニョは小さくなりワーキャットたちが船の甲板に出てきた。

「大丈夫......」

 ラキナが心配そうにそういった。 

「大丈夫だ。 死んでるように見せかけるために、スラリーニョにドーナツ状態にして中に、ポイルの作ったスリープポーションで寝かせてたから、外からならしんでるように見えただろうしな」

 ポイルにアンチスリープポーションを作ってもらい、ワーキャットたちに飲ませた。

「う、うん」

 みんなが目を覚まし始めた。

「おお! ルキナ!」

「みんな!」

 ルキナがワーキャットのみんなに抱きついている。

「本当に助かりました......」

 そうワーキャットの老人が頭を下げる。 ワーキャットの村の村長ファガーだ。

「ルキナに言ってよ。 あの子がみんなを探したんだから」

「......そうですか、あの子は不思議なこでしてな。 人間に近い容姿で魔力がけた違いでした。 それゆえ魔法使いに一人だけつれさらわれたのです」

「それでルキナだけ、あそこに...... あなたたちは」

「ええ、我らは一緒にあの山へと、他のものたちをなるだけ傷つけないため、隠れておりましたが、徐々に自制もきかなくなり、もはや諦めておりました。 それをトラ様に救っていただいたのです」

「そうか、その魔法使いのことは」

「いえ、しかし、紋様のようなものが服にありましたな」

「ご老人、これですか」

 そういってクエリアは首にかけた銀のペンダントを見せる。 それには紋様がかかれていた。

「ええ、それです。 それが服にありました」
 
「そうか、これは帝国の紋章だ。 やはり帝国が関わっているな」

「でもまあ、みんな救えたし、クエリアも魔王島に行けば安全だし、一応ハッピーエンドということで」 

「はっぴぃ? 何かはわからんが確かに一応の危機はさった。 臣民には悪いが今は戦争を防ぐことが先決......」

 クエリアはそういって考え込んだ。

「それなんだけど、他の国に亡命して、そのことを帝国の人に伝えればレゲンギルサってやつ失脚するんじゃないの?」

「そうなったら、レゲンギルサは私が洗脳されたとして、自分が後継者と即宣言しかねない。 そしてその国に派兵するだろう......」

 真剣な眼差しで遠くの海をみながらそういった。 その顔をみるとクエリアが抱えるものの大きさを感じ、なにもいえなくなった。

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