やり直しの大魔王の弟子

曇天

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第五十二話 投獄

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「なんで、こんなことに......」

 オレはのぞきの罪で捕まり大きな牢の中にいた。 
 腕には魔法の手錠がかけられ、中には大勢の囚人がいる。

「まさか、王国を救った英雄様がのぞき魔に転落とは人生わからんもんたなあ」 

 チョビヒゲのオッサンが話しかけてくる。

「ちがわい!」

「わかってるって。
 勇者様といえど男の欲望を抑えきれなかったんだな......」

「わかってない!
 幽霊に体を乗っ取られたんだよ!」

「ウンウン、そういいわけしたい気持ちも分かるよ」

「違う......
 といってもムダか。
 でおっちゃんは何で捕まったんだよ」

「おっちゃんじゃなくてビヨルドだよ。
 俺は盗賊だったのさ。
 魔力を消せるマントを手にいれたまではよかったが、その姿を見れる
 メガネが出回っちまって御用さ」

(リーゼルが作ったやつか......)

 その時牢の前に兵士がやってきた。
 面会だということだった。
 ついていった部屋でベルとメルアがまっていた。

「元気そうじゃない。
 泣いてるかとおもったけど」

 メルアががっかりしたようにいった。

「泣いてたまるか! でいつ出られんの」

「うむ、それがな......
 実は一年ほど牢獄に入らねばらん」

「はーー!!?
 なんで!? なんでなの!!
 のぞきだよ!! 一年って重すぎない!!」

「うむ、それがな。
 裁判が行われて、保釈金でよいとのことだったのだが......」

「だったら!」

「いやよ。
 なんでのぞき魔に保釈金払わないといけないのよ」

「とメルアが突っぱね。
 更に裁判官を中傷しまくってな。
 怒った裁判官が一年の収監としてしまったのだ」

「おま!!」 

「しょーがないじゃない!
 幽霊に取り憑かれたっていってんのに、ふざけないでくれとか言い出すのよ!
 頭が固いんだから頭きちゃう!!」  

「ふざけんなよ!
 お前のせいで刑重くなってんじゃねーか!!」

「そもそもあんたがえろいからでしょ!
 ちょっとは牢屋の中で反省してなさいよ」

「不可抗力だろーが!」

「まあまあ取りあえず、減刑を求めるから少しまってくれ」

 ベルはオレたちをなだめると帰っていった。

「まってーー! お願い出してーー!」

 オレの声はむなしく牢屋に響いた。   

「なんてこった......
 保釈金けちられて懲役一年......」

「なんだい? ずいぶん落ち込んでるじゃないかダンナ」

「ああ、ビヨルドって言ったっけ」

「そうだよ。
 でダンナいい話があるんだけどどうだい?」

 そういって耳うちしてきた。

「なんだよ。
 牢屋でいい話なんてなんもないだろ」   

「実は俺に知り合いがいてな。
 今日すごい差し入れが届くんだよ。
 ダンナにも分けてやろうと思ってな」

「まあ、なんかくれるんならもらうけど」

「そうだけど、ただって分けにゃあいかないんだ」 

「金ならないから、ぱーす」

「金じゃねーよ魔力さ。
 あんたかなりでかい魔力もってんじゃないの」

「そう?」 

(そういや、まえベルが魔力が普通の人間よりもってるっつってたっけ)

「その、魔力ちょっとばかりこの石にくれねーか」

 そういうとビヨルドは隠した緑に輝く石を見せてきた。

「これに魔力を込めればいいのか」

 オレは言われるまま、石に魔力を込める。

「あんがとよ。
 今日、夜に礼拝室にきてみな」

 笑顔でそういうとビヨルドは他の囚人にも話しにいったようだ。

「なんかくれんのかな。
 確かにここの飯はうまくないから、ウマイもんくれればいいな。
 こんなときは楽しいことを考えよう」

 やることのないオレは夜を楽しみにベッドに寝た。


 夜オレは礼拝室にいった。
 そこにビヨルドと他の囚人数名がいた。

「おうダンナまってたぜ」

「ビヨルドのおっちゃん、なにくれんの?」

「ちょっと待ってな。
 いまから始めるからな」

 そういうと昼オレに見せた緑の石を壁においた。

「それって魔力を入れた石だよな。
 それでなにするんだ」

「こうするんだよ」

 そういうと呪文のようなものを唱える。
 唱え終わった瞬間、壁は爆発した。
 
「うお!!」

「さあ、行こうぜ!」

「はあ!? これなに!?」

「脱獄だよ、脱獄、ほれ」

 そういうと他の場所でも連続した爆発音がする。
 そして大きな声が聞こえている。

「おい! 脱獄だなんてオレはしないぞ!」

「だけどよダンナ。
 もうあんたも共犯なんだぜ。
 いかねえならしょうがない。
 じゃあなあばよ!」

 そういうとビヨルドは他の囚人と逃げていった。

「あばばばばば、どうしよう、どうしよう」


 オレは部屋に走ってくる音を聞いて逃げ出してしまった。

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