やり直しの大魔王の弟子

曇天

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第四十二話 守護神《ガーディアン》

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 祭壇の上には大きなピンク色の球体があった。
 それは卵のようだった。

「なんだこれ? デカイ卵? 
 それで、どうすんだ? デュエリア」 

「祈るのだ。
 マーメイドの守護者《ガーディアン》メルリール。
 我が声にその眠りより目覚めよ!」

 そうデュエリアが祈りを捧げると、卵がわずかに動いた。

「んー なにぃ? まだ眠いのじゃ」

 そうだるそうな声が卵から聞こえた。

「あかん! これはあかんやつや!
 帰ろう時間の無駄だこれ!」 

「何をいっている! 
 我らが守護者《ガーディアン》だぞ!
 おおきください!
 今マーメイド族が大変なんです!」

「えー マーメイド族ぅ? ああそういや眠るとき任せたっけ?
 んー あれね。
 行けたら行く」

 そういうと、スピーと寝息をたてた。

「お前ふざけんな! さっさとおきろ!」

 オレははらがたってガンガンと卵を叩く。

「やめるのじゃ! 
 まだ中身固まってないんだから、ちょっとトロっとしてるのじゃから!」

「止めよシンジどの!」

「いーんだよ! デュエリアこいつに似たやつをよーく知ってる。
 多分同じ系統だ。
 おい! 手伝ったらうまい飯食べさせてやるぞ」

「えっ!? ご、ごはん! ちよっとまって仕度するから!」

「仕度ってなんだよ! さっさとでてこい!」

 オレが卵を剣の柄でガンガン叩く。

「だから止めろというに! 女の子には仕度ってものがあるのじゃ! 
 お主もてないじゃろ!」

「うるせえ! そうだよ! ガッツリもてないよ! 
 だからこうしてやる!」

 ガンガン、ガンガンガ、ガンガンガガンガン。

「人の卵でリズムとるのは止めるのじゃ!」

 オレは柄で連打した。
 すると、卵にヒビが入り割れた。

「ふっふっふっ、永き時をこえ、いまこの現世に再び現れる......
 そうわらわこそは......」

「いいから行くぞ」

 オレは卵の中から女の子をひょいとつかむ。

「止めるのじゃ! 久しぶりの口上なんじゃから言わせるのじゃ!」

 それは幼いピンクの髪の女の子だった。

「おい、デュエリアこんなのがホントに使えんのか?」

「こんなのって何じゃ! 
 わらわはメルリール!
 さっさとごはん食べるのじゃ! ごはん! ごはん!」

「止めんかシンジどの!
 メルリール様食事はすぐ用意しますので、私は先に帰ります!
 シンジどのメルリール様を頼む」

 デュエリアは急いで戻っていった。

「お主シンジとか言ってたの。
 わらわをおぶるのじゃ」

「歩けよ」

「いやじゃ!
 わらわはなるたけ楽がしたいのじゃ」

「あいつとクリソツだな。
 しゃーない」

 オレは仕方なくメリエールを背負う。

「うむ、くるしゅうない」

 偉そうにメルリールはいった。

「お前いったい何なんだ? お前によく似た妖精を知ってるけど」

「妖精? ちがうのじゃ!
 わらわは精霊じゃ」

「いや、一緒だろ」

「ちがう。
 自然界の魔力が集まってうまれるのが妖精、そしてさらに上位なのが精霊、そしてそしてさらに上位なのが神じゃ。
 つまりわらわは神に近い存在なのじゃ。
 わかったな。 わかったら敬うのしゃ。
 なんなのじゃ! その疑いの眼差しは失礼な!」 

「疑ってはないよ。
 神ですらあんなのだったからな。
 妖精もあんなだったし、まあ精霊もこんなのだろう」

「なんなのじゃ! こんなのあんなのって......
 いや神にあったのか!? 
 そうかお主、転生者か!」

「そうだよ」

「ふぅん、わざわざこの世界を選ぶなんて変なやつじゃの。
 どうせ他の世界じゃ役立たずだったから、他の世界でワンチャンってとこじゃろ」

「ちがわい! この世界に来れば妖精ついてくるって言われたからだわい!」

(まあ半分当たってるけど......)

「妖精なんてお主の思ってるのと違うのじゃ。
 わらわたちもそうじゃけど、善でも悪でもないのじゃ」

「よく知ってるよ。
 オレの知ってるやつは悪よりだけどな」

「そうなのか。 
 まあよいわ。 ではいまの状況を簡潔に説明せよ」

 オレはメリエールにサハギンに襲われていることや、魔王ゼロ、三魔将のことを話した。

「十年前に魔王がのう。
 まあわらわが封印されてなかったら、そんな魔王はワンパンじゃけどな」

「封印ってまさか千年前の勇者カイか」

「そうじゃ、そうじゃ、あのカイじゃ。
 よく知ってるのう。
 って千年もたってるのか!!
 そうかそれでわらわの武勇伝が世の中に広まってるのか。
 うんうん」

「ううん、お前のことは全然知らん。 全然知らん」

「二回もいうな!
 いやなんじゃと! どういうことじゃ!
 わらわは大魔王ヴァルザベール様の四天王、界律のメリエールじゃ!
 有名じゃろうが!」

「えっ!? お前ベルの四天王なの!!」

「なにベルとは? そういやその剣グランドレインじゃないのか!」

 オレはベルのことを話した。

「そうなのか! ヴァルザベール様が復活なされたか!
 なら余裕じゃの、ゼロとかデコピンで倒せるわ!」

「いやそれがいまは魔力が少ないんだよ。
 だから魔王倒す力がないんだ」

「そんなはずは......
 そうか、この世界の為に」

 
 メリエールは何かを考えているように黙った。

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