やり直しの大魔王の弟子

曇天

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第三十七話 魔煌晶《マジッククリスタル》

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「大丈夫かシンジよ」
 
「な、なんとかギリギリたえた......
 一回女神が見えたような気がしたけどな」  

 オレは生まれたての小鹿のような足取りで歩いていた。

「まったく! ろくなことしないわね!
 わたしが手を抜いたからその程度ですんだのよ!」 

「い、いや少し体を貫通してましたけど......」

 リーゼルが震えて言う。

「で、帰りはまたオアシスによるよね」  

 オレがいうと、メルアが振り返り。

「今度は両腕体を貫通することになるわよ」

 鬼の形相でそういった。


 砂漠を歩いて行くと、唐突に遺跡のようなものが見えてきた。

「ここだ」

「でも魔力もなんにも感じないぞ。
 もうとられたんじゃないの」

「魔煌晶《マジッククリスタル》は魔力を遮断する魔法で守っておる。
 だから魔力は感じないのだ」

「この遺跡にお宝はないの?」 

「そうだな。
 ダミーとして宝物がいくつかおいてあったはずだ」

 それを聞いたメルアは走っていった。

「モンスターはいるんですか?」

「うむ、他にはいないレアモンスターがおる」

 それを聞いたリーゼルは走っていった。

「エッチなものはあるんですか」

「ない」

「じゃあゆっくりいこうぜ」

 オレはベルとゆっくり遺跡に向かった。
 

 遺跡の中は外とは違いひんやりとしていた。

「こんな簡単に入れたら盗掘されちまうだろ」 

「いいや、この遺跡には特殊なモンスターたちがおる。
 不用意に近づくものはいるまい」

「きゃあ!!」  

 さきにいったメルアたちの叫び声がした。
 追い付くと、メルアとリーゼルの体に霜が降りていた。

「な、なんなのベル......
 き、急にでてきたモンスターが氷のブレスをはいたんたけど......」 

「さ、寒いです!」

「うむ、ここは盗掘避けに氷属性のモンスターがうまれるようにしておるのだ」

「それでひんやりしてるのか」 

 オレたちはモンスターをなんとか倒しながら前に進む。

「こいつら固いな氷のような体にまた魔力のシールドか!
 しかもブレスや魔法を使うからリブーストでパリィもできないし、厄介だな」 

「うむ、我はリーゼルのゴーレムキラーでなんとか斬れるがな......
 シンジ、リバーストを使え」

「そうだった! よし!」

 オレはリバーストで後方や上から魔法弾を多数バウンドさせ撃ち出し倒す。

「みろ! リバーストを応用したリバウンドだ! 
 複数の魔力弾を跳ねさせ敵を倒すのだ!」

「何それ! 新しい魔法!! シンジのくせに生意気!」

「ほっとけ!」

 オレたちはモンスターを倒しながら遺跡内を降り進んだ。

「どこ! ベルお宝どこ!」

「まずは、魔煌晶《マジッククリスタル》の確保が優先だ。
 ほらもうすぐ最下層につく、この奥の部屋にある」

 その部屋は周囲に五本の柱がたち中央に丸い台座がおかれていた。
 台座の上には赤く光る大きな水晶がキラキラと光り輝いている。

「これかベル。
 確かに魔力は感じないな」

「うむ、なんとか誰かの手にわたる前に見つけられたか。
 よし早速壊そう」

「えっ! 使わないのか!」

「我のこの体ではクリスタルから少しづつしか魔力を取り込めんのだ。
 その間に奪われては元も子もないからな。
 壊してしまう方が安全だ」

「じゃああたしにちょうだいよ。
 わたしなら魔力を取り込めるんじゃない」

「止めておけメルア。
 一気にこの量の魔力を体に取り込んだら爆散してしまうぞ」

「うん...... じゃあ止めとく」

「では魔煌晶《マジッククリスタル》を取り出すか」

 ベルが何か呪文を唱え台座からクリスタルを持ち上げた。

「お待ちなさい」

 後ろから声をかけられる。
 オレたちはすぐ武器を構えた。

「お前は!?」

 燕尾服に仮面をした男がいつの間にか後ろにいた。
 それは人形師《ドールマスター》だった。

「それをこちらに渡していただけますか。
 渡していただければ、この間の無礼を水に流して、楽に殺してあげましょう」

「全然水に流してねーじゃねーか!」   

「貴様やはりこの魔煌晶《マジッククリスタル》を探していたのか」

「それはこちらのセリフですよ。
 なぜあなたたちが魔煌晶《マジッククリスタル》のことを知っているのです。
 これは遥か昔の遺物のはず......
 まあ、いいでしょう。
 どうせ殺してしまうのですからね」
 
「へへーん、ここじゃアンデッドなんていないもんねー」

 メルアが挑発する。

「ご心配には及びません。
 あなた方が倒したアイスゴーレムやフリーズウルフの体がありましたから、ほら」

 そういうと、人形師《ドールマスター》の後ろから倒したモンスターたちが現れる。

「ず、ずるいわよ!」

「私は人形師《ドールマスター》。
 なんでも人形にして操れるのですよ」

 仮面の下で笑っているのが分かる。

「しゃーない行くぞ!」

 オレたちは動いた。
 モンスターたちをベルとリーゼルが砕く。

「させませんよ!」

 人形師《ドールマスター》は床から壁をせりだした。
 
「甘いわ!」

 メルアが壁を拳で粉砕する。

「何!?」

 驚いてる人形師《ドールマスター》をリブーストで斬りつけた。

「ちっ! 浅い」

 浅く斬れたが致命傷は与えられなかった。

「くっ! 貴様ら!」 

 魔力を失ったのかモンスターたちが崩れる。

「くっくっく、オレたちをなめるなよ。 お前ごときが」

「そうよ。
 あんたごとき三下ちよっと努力すればこうなんだからね」

 モンスターが崩れるのを確認して、オレとメルアはここぞとばかりに煽る。

「貴様ら一度ならず二度までも!
 この私を愚弄するとは!」

 凄まじい魔力が部屋を包む。
 
「あれ? 魔力まだあんの? なんかまずくない?」

「私のせいじゃないからね! シンジのせいだからね!」

「私の本当の姿をみて後悔するがいい!!」

 そう叫ぶと人形師は仮面を外した。
 仮面のしたの顔は人ではなくまがまがしい骸骨だった。

「やつめリッチだったのか」


 ベルがそういった。
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