49 / 51
第四十九話
しおりを挟む「一人だけでも壊滅させられかねないのに、あの数、1000はいますわ......」
アストエルたち魔族に動揺と恐れが広がる。
「どうするんだリン......」
アエルは不安そうな声を漏らした。
「大丈夫。 ラクエス王! ザルキエルさま! 勇者は人を襲いません。 人間を前衛に出して魔族にせまる行く手をふさいでください。 魔族はモンスターを出し、後方から足止めの魔法だけで、あとは私がやります」
「わかった。 騎士団と兵士は行く手をさえぎれ、攻撃はしなくていい。 盾で押せ!」
「魔族たちよ! 攻撃魔法は使わず、遅延や固定の魔法を使い勇者を近づけさせるな!」
「おおおおお!」
人間と魔族から声が上がる。
私は浮かぶと近づいてくる勇者へと向かう。
(これを使う......)
「【分体】《バイロケーション》」
私は十体の分身をだした。
「【離転移】《アスポート》」
モンスターと人間たちで勇者を一体一体包囲して魔族が魔法で足止めすると、勇者たちが持っている聖剣を次々と転移させ無力化していく。
夕方には全ての勇者を無力化することに成功した。
「聖剣を魔法で石の箱にいれ封印し、動かなくなった勇者たちも手厚く埋葬している」
「ありがとうございます。 ラクエス王」
「これであとはゼフォレイドか...... ならば我らが」
ザルキエルは眉をひそめそういった。
「いいえ、彼も勇者、魔族では勝てません。 私が行きます。 お二人は魔族と人間の今後について話し合ってください。 私たちの町から魔族を呼びますから、彼女に話を聞いてくれれば役に立つと思います」
「君がいっていた魔族と人間の町か...... わかった。 話を聞こう。 しかしゼフォレイドと戦うなら、一人では......」
ザルキエルはうなづいた。
「私たちが行く」
アエル、ケイレス、セリナ、レイエル、アストエルがそういう。
「わかった。 そちらは任せる。 いまモンスターが全土に現れていて、またスタンピードが起こりそうなのだ。 兵力を分散せねばならない。 魔族にも手伝っていただきたいのだ」
ラクエス王は険しい顔でそういうと、ザルキエルはうなづいた。
「承知した。 我らも分担して各町を守りに行こう」
「ええ、お願いします」
「危険だからここで待っていてくれない」
私たちは魔族の町に来ていた。
「いやだ! ついていく」
「そうですわ」
「そうよ!」
「そうですね」
「そうだな」
アエルたちは説得に応じない。
「ゼフォレイドは異常。 勇者なのに自我をもつ。 戦いになれば私もただじゃすまない」
「私たちは魔族として真実が知りたい」
「ええ、人間としてもね」
「そうだ。 一人だけ死地に向かわせるわけには行かない...... 例え死んでもだ」
(この強固な意志はかえられそうにない。 仕方ない)
「【分体】《バイロケーション》」
私は五体の分身を作り出した。
「みんなこの分身のあとについてきて」
そして私たちは、城の地下へとすすんだ。 ゼフォレイドがいた扉を切り裂いた。 奥にゼフォレイドが座っている。
「少しはなれてついてきて」
私はみんなを離してゼフォレイドの前に進む。
「そうかその分身か、わたしが切ったのはそれか...... そしてあの勇者たちを倒したのか......」
「ええ、あなたの野望はついえた。 話を聞かせてもらえる」
「そうだな。 私一人で戦っても仕方ない...... か」
(嘘ではないが...... 何か考えが読みづらい。 哀しみ以外は空虚というか......)
「一体なぜ人間を滅ぼそうとしたの?」
「......それが人間と魔族のためだからだ」
「どういうことだ」
アエルが遠くから聞いた。
「......ついてくるといい。 真実を知って耐えられるならば......」
そういうと、立ち上がり、後ろの部屋へと進む。
私たちは警戒しながらついていく。
その部屋は小さな四角の場所で、そこをゼフォレイドは止まっている。
「これは」
「なに? 何か動いた」
「ああ、体に何か感じる」
「まさか!」
五人が構える。
「いや、危機感はかんじない。 あなたは勇者でしょう。 なぜおかしくなっていない。 そもそもなぜ聖剣は人をおかしくさせるの」
「そうだな...... 私は勇者になり損なった。 あの聖剣は魔素を取り込んだものの自我を壊し、戦闘人形にするものだった」
「ああ、それは知っている......」
セリナはそういう。
「しかし、私はまだ自我を失う前に、聖剣ごと腕を切り落とされた。 そこで異常がおこった。 所詮人間がつくったものだ完璧などとは程遠い......」
「人間が、しかしあの聖剣をつくったものは誰でもなかったはず......」
「そういう意味じゃない。 勇者や聖剣という、その仕組みを人間がつくったという意味だ」
そうゼフォレイドは首を横にふりいった。
「仕組み...... 神がつくったものではないの?」
ケイレスがいうとゼフォレイドは笑う。
「神などいない...... この世にいるのは人間という悪魔だけだ」
「悪魔...... しかし残虐な魔族はいましたよ」
レイエルがそういう。
「そうだな...... そうつくられた」
「それはどういう......」
アストエルがいいかけると何か浮遊感をかんじる。
「......ついたぞ」
部屋の扉があくと、そこにはある景色が飛び込んできた。
「これは!?」
私は驚く、そこは巨大な町だった。
「町......」
「でもみたことがない形式だ」
「そうだな。 どこの町とも違う。 人間とも魔族とも」
(そうだ...... これはどうみても)
私が驚いたのは町の大きさじゃない。
そこに見えるのは現代の町だったからだ。
アストエルたち魔族に動揺と恐れが広がる。
「どうするんだリン......」
アエルは不安そうな声を漏らした。
「大丈夫。 ラクエス王! ザルキエルさま! 勇者は人を襲いません。 人間を前衛に出して魔族にせまる行く手をふさいでください。 魔族はモンスターを出し、後方から足止めの魔法だけで、あとは私がやります」
「わかった。 騎士団と兵士は行く手をさえぎれ、攻撃はしなくていい。 盾で押せ!」
「魔族たちよ! 攻撃魔法は使わず、遅延や固定の魔法を使い勇者を近づけさせるな!」
「おおおおお!」
人間と魔族から声が上がる。
私は浮かぶと近づいてくる勇者へと向かう。
(これを使う......)
「【分体】《バイロケーション》」
私は十体の分身をだした。
「【離転移】《アスポート》」
モンスターと人間たちで勇者を一体一体包囲して魔族が魔法で足止めすると、勇者たちが持っている聖剣を次々と転移させ無力化していく。
夕方には全ての勇者を無力化することに成功した。
「聖剣を魔法で石の箱にいれ封印し、動かなくなった勇者たちも手厚く埋葬している」
「ありがとうございます。 ラクエス王」
「これであとはゼフォレイドか...... ならば我らが」
ザルキエルは眉をひそめそういった。
「いいえ、彼も勇者、魔族では勝てません。 私が行きます。 お二人は魔族と人間の今後について話し合ってください。 私たちの町から魔族を呼びますから、彼女に話を聞いてくれれば役に立つと思います」
「君がいっていた魔族と人間の町か...... わかった。 話を聞こう。 しかしゼフォレイドと戦うなら、一人では......」
ザルキエルはうなづいた。
「私たちが行く」
アエル、ケイレス、セリナ、レイエル、アストエルがそういう。
「わかった。 そちらは任せる。 いまモンスターが全土に現れていて、またスタンピードが起こりそうなのだ。 兵力を分散せねばならない。 魔族にも手伝っていただきたいのだ」
ラクエス王は険しい顔でそういうと、ザルキエルはうなづいた。
「承知した。 我らも分担して各町を守りに行こう」
「ええ、お願いします」
「危険だからここで待っていてくれない」
私たちは魔族の町に来ていた。
「いやだ! ついていく」
「そうですわ」
「そうよ!」
「そうですね」
「そうだな」
アエルたちは説得に応じない。
「ゼフォレイドは異常。 勇者なのに自我をもつ。 戦いになれば私もただじゃすまない」
「私たちは魔族として真実が知りたい」
「ええ、人間としてもね」
「そうだ。 一人だけ死地に向かわせるわけには行かない...... 例え死んでもだ」
(この強固な意志はかえられそうにない。 仕方ない)
「【分体】《バイロケーション》」
私は五体の分身を作り出した。
「みんなこの分身のあとについてきて」
そして私たちは、城の地下へとすすんだ。 ゼフォレイドがいた扉を切り裂いた。 奥にゼフォレイドが座っている。
「少しはなれてついてきて」
私はみんなを離してゼフォレイドの前に進む。
「そうかその分身か、わたしが切ったのはそれか...... そしてあの勇者たちを倒したのか......」
「ええ、あなたの野望はついえた。 話を聞かせてもらえる」
「そうだな。 私一人で戦っても仕方ない...... か」
(嘘ではないが...... 何か考えが読みづらい。 哀しみ以外は空虚というか......)
「一体なぜ人間を滅ぼそうとしたの?」
「......それが人間と魔族のためだからだ」
「どういうことだ」
アエルが遠くから聞いた。
「......ついてくるといい。 真実を知って耐えられるならば......」
そういうと、立ち上がり、後ろの部屋へと進む。
私たちは警戒しながらついていく。
その部屋は小さな四角の場所で、そこをゼフォレイドは止まっている。
「これは」
「なに? 何か動いた」
「ああ、体に何か感じる」
「まさか!」
五人が構える。
「いや、危機感はかんじない。 あなたは勇者でしょう。 なぜおかしくなっていない。 そもそもなぜ聖剣は人をおかしくさせるの」
「そうだな...... 私は勇者になり損なった。 あの聖剣は魔素を取り込んだものの自我を壊し、戦闘人形にするものだった」
「ああ、それは知っている......」
セリナはそういう。
「しかし、私はまだ自我を失う前に、聖剣ごと腕を切り落とされた。 そこで異常がおこった。 所詮人間がつくったものだ完璧などとは程遠い......」
「人間が、しかしあの聖剣をつくったものは誰でもなかったはず......」
「そういう意味じゃない。 勇者や聖剣という、その仕組みを人間がつくったという意味だ」
そうゼフォレイドは首を横にふりいった。
「仕組み...... 神がつくったものではないの?」
ケイレスがいうとゼフォレイドは笑う。
「神などいない...... この世にいるのは人間という悪魔だけだ」
「悪魔...... しかし残虐な魔族はいましたよ」
レイエルがそういう。
「そうだな...... そうつくられた」
「それはどういう......」
アストエルがいいかけると何か浮遊感をかんじる。
「......ついたぞ」
部屋の扉があくと、そこにはある景色が飛び込んできた。
「これは!?」
私は驚く、そこは巨大な町だった。
「町......」
「でもみたことがない形式だ」
「そうだな。 どこの町とも違う。 人間とも魔族とも」
(そうだ...... これはどうみても)
私が驚いたのは町の大きさじゃない。
そこに見えるのは現代の町だったからだ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)
排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日
冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて
スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる
強いスキルを望むケインであったが、
スキル適性値はG
オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物
友人からも家族からも馬鹿にされ、
尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン
そんなある日、
『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。
その効果とは、
同じスキルを2つ以上持つ事ができ、
同系統の効果のスキルは効果が重複するという
恐ろしい物であった。
このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。
HOTランキング 1位!(2023年2月21日)
ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる