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第四十八話
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「うっ!」
私はベッドに寝ていて、こちらを心配そうにアエルがみている。
「大丈夫かリン!」
「ええ、なんとか...... それでどうなっているの?」
「今、魔族とラクエス王たちが会談をしている」
不安そうにアエルがいう。
どうやらあのあと、正気に戻った魔族たちと会談することに成功したらしい。
「アエルどの、リンどのはどうでしょうか」
「ああ、私は大丈夫だ」
部屋のドアがあいた。
そこにはフォグたちがいた。
「よかった...... 無事でしたか」
「心配したわよ。 二日も眠っていたからね」
「ああ、もう目覚めないかと思ったぞ」
ケイレスとセリナはそう安心したような声を出した。
「それで、どうなっているの?」
「ええ、会談は終わりました。 魔族たちは急に殺意や敵意がなくなり、困惑したそうです。 それで会談に応じたと」
フォグがそういうと、ケイレスがうなづいた。
「一応停戦し、ここに滞在してもらっているわ。 説明はしたけど、いまいち理解が追い付いていないようね。 レイエルとアストエルが説得を続けているわ」
「魔族をここにおいているが構わないのか」
セリナがそういう。
「ええ、ゼフォレイドが動くはず。 彼らが今度は狙われる」
「そのことで上位魔族の長、ザルキエルさまが、リンどのに会いたいと、そしてアエルどのにも......」
「私も......」
アエルをみると目を伏せている。
「......わかった。 いこう」
私たちは客間へと向かった。
部屋には長身の魔族がいた。
「君がリンどのか、私はザルキエル、魔族を束ねているものだ」
「そうですか」
「アエル...... すまなかった。 記憶もさだかではないが、私はおろかなことをしたようだ」
そうアエルに目をやる。
「......いえ、お父様。 魔族の世界ではあれが通常、私が異常だったのです」
そう言葉少なにこたえる。
(アエルの父親か)
「どうやら、何かの洗脳のようなものがなされていたようだ。 今ではあの狂いそうなほどの異常な怒りや敵意などが嘘のようになくなった。 いまならば冷静に話ができる......」
「魔族の国には、文化的なものもありましたよね」
「そうか、魔族の国をみたのだったな。 あれはただの人間の真似事にすぎん。 姿はどうあれ、言葉をはなす獣のような中身だ。 自分でも今は恥ずかしい......」
苦悩するようにザルキエルはこたえる。
「それで、魔王の城へといったときいた」
「ええ」
そのときの話をザルキエルにはなす。
「ゼフォレイド...... 勇者が、なぜ魔王の城に......」
「魔王の城にははいれないとか」
「ああ、あれはただの飾りだとおもっていた。 魔王の命は頭に直接伝わる。 だがそこに歴代の勇者がいた...... 全くわからないな」
(嘘はついてない...... か)
「確かに今冷静になり思えば妙な話だ。 あの粗暴な気性だった我々が、魔王などとみたこともないものに従うなど...... それに勇者があらわれると、我々は絶滅の危機に瀕していたのに、根絶することなくそのままにしていたなど、おかしなことは考えればきりがない」
「勇者が現れるのはいつなのですか」
そうアエルが聞くと、思い出すように眉をひそめた。
「うむ、我々が魔王の命をうけ、人間を襲うと必ず現れたという」
「それ以外に襲われることはなかったのですか?」
「......そうだな。 まれに人口がふえたりすれば襲ってくるともいわれていた」
(人間側と同じ...... どういうこと?)
「それでリンどの。 我々をここにとどめる理由はなんだ? これは貴公の考えだと聞いたが」
「ええ、あのゼフォレイドという男、人間を救いと称して滅ぼそうとしていた。 魔族が人間との戦いを止めると必ず動くはず......」
「元勇者が人間を滅ぼす...... 一体なにをしようとしている......」
「わかりません。 ただ膨大な年月を賭けて、その機会をうかがっているようでした」
そのとき部屋に声が聞こえる。
「ザルキエルさま! リンさま! 外に!」
そういわれて外にでる。
そこにラクエス王たちも城壁の外を並んでみている。
「おおリンどの。 あれを」
向こうから、甲冑の軍団が現れる。
「やはりきた勇者たちだ......」
私が放った一言に周囲がざわついた。
私はベッドに寝ていて、こちらを心配そうにアエルがみている。
「大丈夫かリン!」
「ええ、なんとか...... それでどうなっているの?」
「今、魔族とラクエス王たちが会談をしている」
不安そうにアエルがいう。
どうやらあのあと、正気に戻った魔族たちと会談することに成功したらしい。
「アエルどの、リンどのはどうでしょうか」
「ああ、私は大丈夫だ」
部屋のドアがあいた。
そこにはフォグたちがいた。
「よかった...... 無事でしたか」
「心配したわよ。 二日も眠っていたからね」
「ああ、もう目覚めないかと思ったぞ」
ケイレスとセリナはそう安心したような声を出した。
「それで、どうなっているの?」
「ええ、会談は終わりました。 魔族たちは急に殺意や敵意がなくなり、困惑したそうです。 それで会談に応じたと」
フォグがそういうと、ケイレスがうなづいた。
「一応停戦し、ここに滞在してもらっているわ。 説明はしたけど、いまいち理解が追い付いていないようね。 レイエルとアストエルが説得を続けているわ」
「魔族をここにおいているが構わないのか」
セリナがそういう。
「ええ、ゼフォレイドが動くはず。 彼らが今度は狙われる」
「そのことで上位魔族の長、ザルキエルさまが、リンどのに会いたいと、そしてアエルどのにも......」
「私も......」
アエルをみると目を伏せている。
「......わかった。 いこう」
私たちは客間へと向かった。
部屋には長身の魔族がいた。
「君がリンどのか、私はザルキエル、魔族を束ねているものだ」
「そうですか」
「アエル...... すまなかった。 記憶もさだかではないが、私はおろかなことをしたようだ」
そうアエルに目をやる。
「......いえ、お父様。 魔族の世界ではあれが通常、私が異常だったのです」
そう言葉少なにこたえる。
(アエルの父親か)
「どうやら、何かの洗脳のようなものがなされていたようだ。 今ではあの狂いそうなほどの異常な怒りや敵意などが嘘のようになくなった。 いまならば冷静に話ができる......」
「魔族の国には、文化的なものもありましたよね」
「そうか、魔族の国をみたのだったな。 あれはただの人間の真似事にすぎん。 姿はどうあれ、言葉をはなす獣のような中身だ。 自分でも今は恥ずかしい......」
苦悩するようにザルキエルはこたえる。
「それで、魔王の城へといったときいた」
「ええ」
そのときの話をザルキエルにはなす。
「ゼフォレイド...... 勇者が、なぜ魔王の城に......」
「魔王の城にははいれないとか」
「ああ、あれはただの飾りだとおもっていた。 魔王の命は頭に直接伝わる。 だがそこに歴代の勇者がいた...... 全くわからないな」
(嘘はついてない...... か)
「確かに今冷静になり思えば妙な話だ。 あの粗暴な気性だった我々が、魔王などとみたこともないものに従うなど...... それに勇者があらわれると、我々は絶滅の危機に瀕していたのに、根絶することなくそのままにしていたなど、おかしなことは考えればきりがない」
「勇者が現れるのはいつなのですか」
そうアエルが聞くと、思い出すように眉をひそめた。
「うむ、我々が魔王の命をうけ、人間を襲うと必ず現れたという」
「それ以外に襲われることはなかったのですか?」
「......そうだな。 まれに人口がふえたりすれば襲ってくるともいわれていた」
(人間側と同じ...... どういうこと?)
「それでリンどの。 我々をここにとどめる理由はなんだ? これは貴公の考えだと聞いたが」
「ええ、あのゼフォレイドという男、人間を救いと称して滅ぼそうとしていた。 魔族が人間との戦いを止めると必ず動くはず......」
「元勇者が人間を滅ぼす...... 一体なにをしようとしている......」
「わかりません。 ただ膨大な年月を賭けて、その機会をうかがっているようでした」
そのとき部屋に声が聞こえる。
「ザルキエルさま! リンさま! 外に!」
そういわれて外にでる。
そこにラクエス王たちも城壁の外を並んでみている。
「おおリンどの。 あれを」
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「やはりきた勇者たちだ......」
私が放った一言に周囲がざわついた。
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