44 / 51
第四十四話
しおりを挟む
かなり深く地下を降りると、大きな部屋へと繋がっていた。
「ここは......」
そこにはさまざまな機械があり、膨大な本などがある。 その中で学者風の人物が大勢働いているようだ。
(これは機械...... 古代の遺物か)
触って【残留思念感応】《サイコメトリー》をつかっても古すぎるから思念も何も残ってない。
「ここは私の研究室...... いや、もともと私たちの祖先から、古代の遺物や文献などを分析してきた場所です」
そういって机に、巻物を広げる。 そこには何らかの機械の設計図のようなものがかかれている。
「これは...... 何かの機械か、そして宝玉、いやこれが操魔球」
「操魔球のことも知っていたのですか...... そうです。 これは魔族を操作できるといわれる装置、古代の文献から写したものとされ、私たちはこれを探して遺跡を調べてきたのです。 古代の遺物から記憶を呼び戻す薬をつかったり、断片的なものを分析してここまできました」
「それがメモリア?」
「ええ、ご存じでしたか」
「あれをラクエスに流したのはなぜ?」
ケイレスが聞く。
「少しでも古代の知識を持つものを探したかったからです。 ここにいる何人かは薬によって知り得ない記憶を思い出し、ラクエスで遺跡を調べていた者たちです」
「それなら、なぜラクエスに頼らない」
セリナが聞くと、フォグは眉をひそめる。
「さっきもいったように頼りましたよ。 ですが彼らは信じなかった。 何度も話しましたが、信じてくれたのはザルギードさまだけ...... 彼がまだ意識があるうちに調べるように私に命じたのです」
「まあ、魔族を操れるなんて眉唾だものね」
ケイレスがいうと、フォグがうなづく。
「そんなことはありもしない。 ここの技術を引き渡せとも...... ダルグタール大臣にそういわれました」
(あの人か......)
「それで独立したのか。 皆を犠牲にして」
怒りを抑えたようにセリナがいう。
「怒るのはわかります。 ですが、勇者となり魔族との戦いで次々と犠牲者をふやし続けるわけにはいかない...... それがザルギードさまのご意志でもあった」
そうフォグにいわれてセリナは黙る。
「それでわかったことは」
「魔族の角です。 あれは魔族の感情を高ぶらせ、攻撃性をますのです。そしてこの装置はそれを制御する装置」
「角を折ればいいのは知っている」
私がいうと、フォグはうなづく。
「ええ、ですが、あの角はとても固く、並みの剣では切れない。 折ろうとすると衝撃で死ぬこともある。 まれにうまく折れることもありますが、そう簡単には折らせてくれないでしょう」
「何人かはこのリンが折ってるわ」
「本当ですか...... まあ、あなたならば可能でしょう。 ですが簡単ではないはす」
「そうだね。 一度に大勢はむり。 それでその装置はつくれるの」
「それが、一つ部品が足りないのです」
そう机の巻物をゆびさす。
「ここに王魔石が必要とあります」
「それも古代の遺跡か」
「いいえ、これは魔王城にあるとかかれています」
「つまり、魔王とやらを倒して手に入れなければならない...... か」
「無理よ! 魔王なんて歴代の勇者だって倒せなかったもの!」
ケイレスがそういうと、フォグは首を横にふる。
「いえ、正確には魔王を倒さなかったというのが本当でしょう」
「どういうこと?」
「ザルギードが魔族との戦いのあと、その精神力で少しだけ自我が残っていました。 そのとき彼はいったのです。 魔王を倒すために魔族の城にむかったあと、自らの意思に反しそのまま帰った、と」
「なぜだ? 魔王を倒せばこの戦いが終わるかもしれないのに、勇者はそのために生まれたんじゃないのか」
セリナが眉をひそめた。
(勇者には魔王を倒せない? あの強制力なら死んでも殺しに向かうはずなのに......)
「つまり、魔王を倒せばいいということなのね......」
「リン正気!?」
「さすがにそれは......」
ケイレスとセリナは言葉を失う。
「......しかし、それしかありませんね」
フォグはそう呟いた。
「その前にザルギードを眠らせてやりたい」
「......それは、もうザルギードさまの力を使えないということですよ」
フォグは私の目を見据えていう。
「その装置が完成すれば、ラクエスとも魔族とも戦わずにすむでしょ」
「......わかりました。 もはや、彼の体は限界を越えている。 私とて彼をこのままにしたいわけではない。 眠らせてあげてください......」
私はザルギードから聖剣を【離転移】《アスポート》させ、動きを止まったザルギードを丁重に弔った。
「ここは......」
そこにはさまざまな機械があり、膨大な本などがある。 その中で学者風の人物が大勢働いているようだ。
(これは機械...... 古代の遺物か)
触って【残留思念感応】《サイコメトリー》をつかっても古すぎるから思念も何も残ってない。
「ここは私の研究室...... いや、もともと私たちの祖先から、古代の遺物や文献などを分析してきた場所です」
そういって机に、巻物を広げる。 そこには何らかの機械の設計図のようなものがかかれている。
「これは...... 何かの機械か、そして宝玉、いやこれが操魔球」
「操魔球のことも知っていたのですか...... そうです。 これは魔族を操作できるといわれる装置、古代の文献から写したものとされ、私たちはこれを探して遺跡を調べてきたのです。 古代の遺物から記憶を呼び戻す薬をつかったり、断片的なものを分析してここまできました」
「それがメモリア?」
「ええ、ご存じでしたか」
「あれをラクエスに流したのはなぜ?」
ケイレスが聞く。
「少しでも古代の知識を持つものを探したかったからです。 ここにいる何人かは薬によって知り得ない記憶を思い出し、ラクエスで遺跡を調べていた者たちです」
「それなら、なぜラクエスに頼らない」
セリナが聞くと、フォグは眉をひそめる。
「さっきもいったように頼りましたよ。 ですが彼らは信じなかった。 何度も話しましたが、信じてくれたのはザルギードさまだけ...... 彼がまだ意識があるうちに調べるように私に命じたのです」
「まあ、魔族を操れるなんて眉唾だものね」
ケイレスがいうと、フォグがうなづく。
「そんなことはありもしない。 ここの技術を引き渡せとも...... ダルグタール大臣にそういわれました」
(あの人か......)
「それで独立したのか。 皆を犠牲にして」
怒りを抑えたようにセリナがいう。
「怒るのはわかります。 ですが、勇者となり魔族との戦いで次々と犠牲者をふやし続けるわけにはいかない...... それがザルギードさまのご意志でもあった」
そうフォグにいわれてセリナは黙る。
「それでわかったことは」
「魔族の角です。 あれは魔族の感情を高ぶらせ、攻撃性をますのです。そしてこの装置はそれを制御する装置」
「角を折ればいいのは知っている」
私がいうと、フォグはうなづく。
「ええ、ですが、あの角はとても固く、並みの剣では切れない。 折ろうとすると衝撃で死ぬこともある。 まれにうまく折れることもありますが、そう簡単には折らせてくれないでしょう」
「何人かはこのリンが折ってるわ」
「本当ですか...... まあ、あなたならば可能でしょう。 ですが簡単ではないはす」
「そうだね。 一度に大勢はむり。 それでその装置はつくれるの」
「それが、一つ部品が足りないのです」
そう机の巻物をゆびさす。
「ここに王魔石が必要とあります」
「それも古代の遺跡か」
「いいえ、これは魔王城にあるとかかれています」
「つまり、魔王とやらを倒して手に入れなければならない...... か」
「無理よ! 魔王なんて歴代の勇者だって倒せなかったもの!」
ケイレスがそういうと、フォグは首を横にふる。
「いえ、正確には魔王を倒さなかったというのが本当でしょう」
「どういうこと?」
「ザルギードが魔族との戦いのあと、その精神力で少しだけ自我が残っていました。 そのとき彼はいったのです。 魔王を倒すために魔族の城にむかったあと、自らの意思に反しそのまま帰った、と」
「なぜだ? 魔王を倒せばこの戦いが終わるかもしれないのに、勇者はそのために生まれたんじゃないのか」
セリナが眉をひそめた。
(勇者には魔王を倒せない? あの強制力なら死んでも殺しに向かうはずなのに......)
「つまり、魔王を倒せばいいということなのね......」
「リン正気!?」
「さすがにそれは......」
ケイレスとセリナは言葉を失う。
「......しかし、それしかありませんね」
フォグはそう呟いた。
「その前にザルギードを眠らせてやりたい」
「......それは、もうザルギードさまの力を使えないということですよ」
フォグは私の目を見据えていう。
「その装置が完成すれば、ラクエスとも魔族とも戦わずにすむでしょ」
「......わかりました。 もはや、彼の体は限界を越えている。 私とて彼をこのままにしたいわけではない。 眠らせてあげてください......」
私はザルギードから聖剣を【離転移】《アスポート》させ、動きを止まったザルギードを丁重に弔った。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
荒野で途方に暮れていたらドラゴンが嫁になりました
ゲンタ
ファンタジー
転生したら、荒れ地にポツンと1人で座っていました。食べ物、飲み物まったくなし、このまま荒野で死ぬしかないと、途方に暮れていたら、ドラゴンが助けてくれました。ドラゴンありがとう。人族からエルフや獣人たちを助けていくうちに、何だかだんだん強くなっていきます。神様……俺に何をさせたいの?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる