罪咎《ざいきゅう》の転移者 ~私の罪と世界の咎~

曇天

文字の大きさ
上 下
41 / 51

第四十一話

しおりを挟む
「すみません...... 私は負けたのに」

「構わないよ。 剣が選んだんだから。 それより少しさわらせてもらえないかな」

(剣が選ぶというのは比喩じゃなかったのか...... だがどうしてディラルを選んだんだろう?)

 恐縮していうディラルから剣を預かる。 危機感は感じないので抜こうとするも、抜けない。

「どうやら、私には抜けないな」

「ええ、アドミングさまのお話では、勇者以外には抜けないそうです」

 そうディラルがいう。

(やはり何か胸騒ぎがする...... 視てみるか)

【残留思念感応】《サイコメトリー》で情報を読み取る。

(なんだ...... アドミングとディラルの思念以外なにも感じない。 作ったものの感情がない...... 誰にもつくられてないということか。 神がつくったとでも、ただ......)

 わからないままにディラルに聖剣をかえす。

「これは抜かないほうがいい......」

「えっ? 確かに胸がざわつく感じがしますが......」

 ディラルも胸を押さえている。

(アエルに反応しているのか...... やはり聖剣が所有者を操っているということか、ならザルギードから剣を奪えば......)

「とりあえず、一度私たちの町へいこう。 ダルドンさんやケイレス、セリナにも話を聞きたい。 ディラルも来てくれる?」

「えっ? ええ、はい」

 私たちは町へととんだ。

「ここは......」

 急ぐため【瞬間移動】《テレポート》で町へと飛ぶ。 ディラルは口を開けて町の様子を眺めている。

「リンどうだった?」

 警護のケイレスが近づいてくる。

「ええ、ディラルが勇者になったよ」

「うそ!!」

 そうケイレスはディラルを見ている。

「ほ、ほんとうだから。 ほら聖剣」

 ディラルは必死に剣をみせた。

「へぇ、リンが勇者に選ばれると思ってたけど」

 ケイレスは意外そうにディラルを見ている。

「帰ってきたか」

 ダンドンさん、とセリナもやってくる。

「ああ、ダンドンさん。 少しこの剣をみてもらえるか」

 ディラルに渡してもらう。 やはり剣を抜こうとするも抜けない。

「ふーむ、これが聖剣か...... 抜けんな」

「何かわかりますか?」

「......いや、ただ細工や模様が正確すぎる。 人間が作ったむらのようなものが全くない」

 そうダンドンさんは感心して、ディラルに剣をかえした。

「なんだろう......」

「どうしたディラル?」

「ええ、さっきから胸のざわつきがひどくなってる......  人々の歩いているのをみて動悸がはげしくなっている」

 ディラルは胸を押さえて苦しそういった。

(もしかして魔族に反応している...... 離れるか)

「そうか、少し疲れたんだろう。 城へと送るよ」

 私が近づくと、ディラルは剣の柄をもつ。

「なにをしているの?」

「わ、わかりません...... 勝手に手が......」

 震えながらディラルは剣を抜こうとする。

「まずい!!」

【瞬間移動】《テレポート》するために駆け寄ると、ディラルは剣を抜きはなつ。

「うわぁぁぁぁ!!」 

 頭をかかえながら苦しみだした。

 そしてディラルは一瞬でアエルの前に飛び黒い剣をふるう。

 ギィン!!

 ケイレスとセリナが剣で防いだ。

「【瞬間移動】《テレポート》!!」

 その場にいたものたちを森へと転移させた。

「フゥ! フゥ! 殺す...... ダメだ...... リンさん、はなれてください...... おかしい、感情が......」

 ディラルはこちらを苦しげにみる。 なにかに抗うその目は赤く充血している。

「【念力】《サイコキネシス》!」

「がはっ! ダメだ!! もう...... 押さえきれない...... 早く殺して......」

 体の拘束を引きちぎるようにディラルは動く。

「しかたない!」 

 ケイレスは鞘でディラルを殴り付けた。

「ぐう!!! ま、魔族殺す......」 

「気絶しない!?」 

 更に動こうとするディラルからぶちぶちと音が聞こえる。

(くっ、筋繊維がきれる音! ザルギードより強い力! このままだとディラルが死ぬ! あの剣を!)

「ごめん! ケイレス、セリナ少しだけ動きを止めて!」

「わかった!」

「ええ!!」

 私は【念力】《サイコキネシス》をとめ、【瞬間移動】《テレポート》でディラルのそばに飛ぶと、セリナとケイレスがおさえている剣にふれる。

「【離転移】《アスポート》、ぐっ! なに!?」

 剣を離れたところに飛ばした。

「うっ...... あっ」

 ディラルは痙攣しながら、その場に倒れた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

処理中です...