罪咎《ざいきゅう》の転移者 ~私の罪と世界の咎~

曇天

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第三十九話

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 城内に案内されると、訓練をする騎士たちの中にディラルはいた。

「ああ! リンさん、アエルさん! お久しぶりです!」

「ディラル少し話があるんだけど」

 ディラルに聖教会のことをきく。

「......ええ、私は勇者を目指すため、聖教会へと向かいたいと思っています。 騎士団に希望者を募る教会から手紙が届いているのです」

「私たちも行きたいんだ」

「えっ!? まさか勇者に!」

「いや、少し気になっていただけだけど、いいかな」

「そうですか、お二人なら私より適任かもしれませんね......」

 自重気味にディラルがいう。 

 それから手紙にかかれた期日になると、私たちは聖教会のあるヘルベニア山脈へと馬車をはしらせた。


「すごい高いな......」

 アエルが馬車から見える山岳の景色をみて、体を揺らして興味深そうにいった。

「ここを越えると聖教会の大聖堂があります」

 ディラルが緊張しながら笑顔でそういう。

「ディラル本当に勇者を目指すつもり?」

「......ええ、なぜですか?」

「勇者になったものはみんな姿を消すと聞くぞ」

 アエルはそう付け加えた。

「そうですね。 確かに...... しかし魔族が攻めてくれば、多くの死者がでます。 前の大戦のように......」

 そう思い詰めたような顔をした。

(心を読まなくても、その事がトラウマになってるのがわかる)

「それで勇者にはどうやってなるんだ?」

 アエルが神妙な顔で聞いた。

「聞いた話では、試練のようなものがあり、それを突破したものが聖剣を与えられ勇者となるらしいです」

「試練か......」

(あのザルギードは異常だった。 あの黒い剣、聖剣のせいだったのか?)

 馬車が巨大な建物の前にとまる。

「ここが大聖堂です」

 ディラルにつき建物のなかにはいる。 白いローブを着たものたちが大勢いて、礼拝しているようだった。

 大聖堂の天井はドーム型にっており中にはいると、荘厳な装飾が施され壁には宗教画なのか、剣を持つ勇者の姿がかかれている。 

「よく来られました。 勇者の試練を希望されるかたですね」

 私たちの風貌をみて、一人の司祭らしき人物が案内してくれる。

「奥に試練の間があります。 どうぞ」

「勇者になるのに期限があるの?」

「ええ、魔族の動きが活発になると、聖剣が産まれることで、教えてくれるのです。 そうして我々は全土に募集をかけ、剣の選ぶ勇者を見つけます」

 そう司祭は私のといに答えた。

(剣が産まれる?)

「それで勇者になったあと、おかしくなるという話は」

「......聞き及んでいます。 それほどその力は強大...... それを含めて覚悟を持たれたかた以外は試練を断っております」

 司祭はそういいながら苦悶の表情をした。

(悪意もないし、嘘も言ってはいない)

「ここです。 おはいりください」

 巨大な部屋の扉をあけられ、私たちはなかにはいる。

 大きな石造りの部屋にかなりの人数があつまっている。

(全員、勇者志望か......)

 そこでしばらく待っていると、扉が閉められた。 そして壇上に一人の赤いローブをまとった司祭が剣をもち現れた。

「みなさま。 私は大司祭アドミングともうします。 これより試練を行い。 勇者となる一人を聖剣自らが選出します」

 そういいアドミングは剣を両手で掲げた。

(聖剣みずから? さっきも言ってたけど、そんなことが本当にあるの......)

「では、試練としてまず一対一で戦っていただきます」

 そばいた司祭が私たちをふたてに分け、六つある長方形の線のなかにはいるよう促す。

(対戦...... トーナメントのようなものか)

「魔法を使っても構いません。 ですが相手を殺すことは禁止します。 これも聖剣のご意志です」

 そういうとそれぞれで戦いが始まる。

「ずいぶん若いな。 そんな体で戦えるのか?」

 中年の大柄な斧をもつ男が目の前にたった。

「魔法をつかってもいいんでしょう?」

「簡単には使わせないがな!」

 巨大な斧をふるい、攻撃してくる。

(この巨体でかなり速いな。 さすが勇者を目指すだけはある)

「殺しは禁止だったけど」

「ああ、刃はあてんさ!」

 斧の柄で当てようと振り回してくる。

(アエルとディラルは)

 アエルはそうそうに相手を倒していた。 ディラルも相手を押している。

(二人とも大丈夫そうだな)

「よそみか!! なめるな!」

「【雷念力】《ヴォルトキネシス》」

 斧に電撃が走り大男に落ちた。 

「なっ...... 詠唱もなしに......」

 男はそのまま前のめりにたおれた。
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