罪咎《ざいきゅう》の転移者 ~私の罪と世界の咎~

曇天

文字の大きさ
上 下
14 / 51

第十四話

しおりを挟む
「商人に力を借りるのは難しそうだぞ......」

 アエルはそういう。 

「ええ、先に素材だけでも集めよう」

「ギルドで金を稼ぐのか」

「私たちだけで町に必要なだけの素材を手に入れるのは難しいよ」

 そう私がいうとアエルは腕組みをした。

「そうだな。 探して手に入れるしかないか」

「となると、人が入らない場所だろうね」

「人外地か...... でも私たちの町を広げすぎると魔族の領地と近くなる」

 アエルは眉をひそめた。

「ええ、その危険は避けたいから、別の場所。 ダンドンさんに聞いてみよう」


「ここか......」

 私たちは山岳地帯へとやってきていた。

「ダンドンがいっていた場所だ。 テクシア山、確か昔ラクエス国が領土を拡充しようとして、ここを進み近くに町をつくった。 でもモンスターが増え続け壊されたって」

 アエルがそういう。

「ああ、私たちの町から近いから、ここを開拓できればいいね」

「そうだが、国があきらめた場所だぞ。 かなり強いモンスターがいるんじゃないか」

 アエルがあたりを見回している。

 私は【遠隔透視】《リモートビューイング》を使った。

(かなりの数のモンスターがいる。 一度倒すのは可能だが、増えるモンスターをどうするかが課題か)

「とりあえず壊されたという町までいってみよう」

 山を歩いていき、【遠隔透視】《リモートビューイング》でモンスターを見つけ排除していく。

 しばらくあるいたところで、廃墟を見つけた。

「あれか......」

 石の壁を抜け町にはいる。 かなり壊されているが、一通り区画整理がされていて、そのまま使えそうではあった。

(人がいなくなったら壊さないのか...... どうもモンスターの生態がわからないな)

「壁はあるな。 瓦礫をどけて、建てなおせばこのまま使えそうだが......」

「ああ、でもモンスターをどうする?」

「そうだね。 とりあえず上からみてみるか」

【浮遊】《レビテーション》で空に浮いて辺りをみる。

「あそこに湖がある。 だからここに町をつくったのか」

「だがみろ。 モンスターがうじゃうじゃいる」

 アエルがいう方には確かに周囲にはモンスターが多い。 

「あの程度排除は簡単だけど...... なぜ壁が壊されてないんだ?」

「確かに...... 壁の破損はそれほどじゃないな。 登ってきたのか、あれ!!」

「ああ、きっとあれのせいだ」

 向こうの空からなにかが飛んできている。 大きな羽を持っている。

「ワイバーンだ! あれに上からやられたのか!」

 その竜のような爬虫類は翼をはためかせ、こちらに近づいてくる。

「ガオオオオ!!」

「こいつはかなり強い! 高所から炎をはくから、剣や槍で殺すのは難しい! 上位魔族が召喚することもある!」

「アエル地面から石を尖らせて」

「わ、わかった!」

 ーー地に関するもの、汝の身を固く尖らせよーー

「ビルド、ストーンファング」

「【空念力】《エアロキネシス》」

 羽を切り裂くと次々とワイバーンは地面に落ちていくと、尖った石に串刺しになる。

「あのワイバーンを、こんな簡単に......」

「だが、空から攻撃を受けるならここで住むのはむずかしいな」

「そうだな。 地面の下にでも町をつくらないと......」

「下...... それだ」

「えっ?」


「【召転移】《アポート》」

 転移させると、土くれの山ができた。

「なんとかできたな......」

(やはり能力を使ってきたことで、私の力も増している......)

「すごいな。 でもここからどうする?」

「まず、ここから川へ上下水道を作る。 あとは四角い大きな石の箱だ。アエル土を砂と小石に変えてくれる」

(浄化槽は複数必要だろう)

「よくわからんが、わかった」

 アエルは石の水路と大きな四角い石の槽をいくつかつくった。

「はぁ、疲れた」 

 座りこんだアエルをみながら、できた四角い石の箱に砂と小石をいれ、浄化槽をいくつかつくる。

「これで浄化槽と、上下水道の水路はできた」

「それからどうするんだ?」

「ええ、みてて【念力】《サイコキネシス》」

 さっきできた穴に、つくってもらった石の水路と浄化槽を入れた。

「この町に太い柱をたてその上に石の天井をつくるんだけど、さすがにこれはアエルにもつくれないから、私がやるしかないか」

 近くにある巨大な岩山をみる。

「嘘だろ...... あんなの! 無理だぞ!」

「【念力】《サイコキネシス》【遠隔念動力】《テレキネシス》」

 巨大な岩山を浮かせる。

 ゴゴゴゴゴ......!!

「うあああああ!!」

「アエル...... 集中力がおちる、静かに......」

 アエルはあわてて両手で口を押さえた。

 岩山を分割して、大きな柱と屋根になる厚い板を切り出した。

 ズウウウン!!

 柱を町に数本たてその上から屋根を乗せた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...