罪咎《ざいきゅう》の転移者 ~私の罪と世界の咎~

曇天

文字の大きさ
上 下
11 / 51

第十一話

しおりを挟む
 いくつか依頼を終えると、そのお金で衣服などを大量にかい拠点へと帰り、みんなに服を着させた。  

「さあ、最後の依頼だね」

「いいけど、リンなんでその依頼を受けたんだ? それより高額なものもあっただろ」

 アエルが不思議そうにきいた。

「ええ、だけど依頼者が気になって」

「依頼者...... マムラの話では、町がなくなって住むところを失った職人ギルドの者たちだったな...... 職人、まさか」

「ええ、うまくすれば私たちの拠点に迎え入れられる。 もし無理でも角さえ隠せば技術を教えてもらえるかもしれない。 だから先にみんなの角を消しておいたんだ」

「なるほどな......」

 もう一度転移し、私たちは依頼者のもとに向かった。


「ここか......」

 そこは町の奥、掘っ立て小屋が立ち並ぶ。 スラム化した場所だった。

「かなり、ひどい。 人間の世界にもこういうところはあるんだな」

 アエルが眉をひそめていう。

 指定された場所へと路地のような細い道を進む。 他の建物よりましな外観の少し大きな建物がある。

 中に入ると、大勢の者たちがうつむくように座っている。

「あんたたちが冒険者か」

 背は低いが体格のいい、中年の男性が話しかけてきた。 

「そうですが、あなたがダルドンさんですか?」

「なっ! 頭に声、魔法か...... ああ、そうだ。 まあ座ってくれ」

 ダンドンさんは厳しい顔のままそう答える。 私たちは自分達を紹介すると、少し落ち込んでいるようだ。

(まあ、子供二人ではそうなるか...... ただもともと何か諦めているような風でもある)

「それでご依頼はなんですか?」

「ふむ...... 実は俺たちの町ナーフがなくなったのは聞いているか」

「ええ、いくつかの町がモンスターの襲撃をというのは聞いてます」

「そこを取り戻して欲しいといったら、受けてくれるか」

 そうこちらをうかがうようにダルドンさんはいうと、多額のお金らしきものが入った袋を机においた。

「無理ですね」

「ふぅ、やはりか......」

 ダルドンさんは深いため息をついた。

「取り戻すだけならできるんじゃないか」

 アエルがその様子をみて気の毒に思ったのか、そういう。

「取り戻すだけならね。 でもその町を維持しないといけない。 壊れた建物や壁の補修や修理する期間の防衛、並大抵のお金じゃ無理」

「そうだな...... 他の冒険者も受けてはくれなかった。 ......みんなから金を集めたんだが、これ以上は無理だ。 やはり職人から足を洗って、他の仕事を探すしかあるまい」

 ダルドンさんは覚悟していたのか、すぐに受け入れた。

「ここで状況をたてなおせないんですか?」

「ここも、不法占拠している状態でな。 しかもこの町にも職人はいるから、ここで商売をすると大きな摩擦をうむ。 まず国が認めんだろうな」

「なるほど......」

 アエルをみるとうなづいた。

「どこでもいいというなら、仕事でき住む場所のあてがあるにはありますが......」

「本当か! 住んで仕事ができるのか!」

 ダルドンさんがくいぎみで腰を上げた。 周囲のものたちもざわつく。

「ええ、ですが、問題もあります」

「何でもいい! このまま仕事もせず生きてはいけん! 教えてくれ!」

「わかりました。 まずダルドンさんだけでおつれしましょう」

 外に連れ出し、ダルドンさんに目をつぶってもらうと、拠点へと【瞬間移動】《テレポート》した。


「なっ!? ここは!」

 私たちの拠点をみてダルドンさんは驚いている。

「私の転移魔法です」

「そんな魔法が...... だが、きれいな建物だが、組み方がなっちゃいねえな」

 建物をみながらダルドンさんはそういった。

「ええ、正直見よう見まねで、魔法で作ったものなので」

「あんたが建てたのか...... ふむ、魔法か。 住むだけなら上出来だが...... それで何が問題なんだ」

「ここにいる人たちなんです」

「人? 普通だがな......」

「彼らはゼヌエラの難民なのです」

(魔族よりは受け入れやすいだろう)

「なっ! ゼヌエラの...... かくまっているのか」

「ええ、それであまり知られたくないんです。 もし外の人間にばれると迫害や差別を受けかねない」

「確かにな...... 最悪、国から追放されかねん」

 そうつぶやくと考えている。

「それで、俺たちもここにすめるというわけか?」

「ええ、ただし、ここのことは口外しないこと、あとは彼らは技能がありません。 彼らに技能を教えてもらうことが条件になります」

「もちろんかまわん! 俺たちもここにいる人たちと同じだからな。
仲間も職人だから口も固い!」

 そう興奮気味でダルドンさんは答えた。 

(確かに本当のことをいっている。 なら大丈夫)

「わかりました。 一週間ほど少し準備をするので、用意だけしておいてください」

 そう伝えダルドンさんを町に戻した。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...