オルタナティブバース

曇天

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第五十六話

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 つぎの日、おれたちが先へとすすむと前方の幹に大きな穴があった。

「......何かいる、人だ」

 アイがそういう。 
 
「行こう」

 中にはいりおくまですすむと広い場所にでる。 そこは明かりがたかれていた。

「やってきたね」

 レインがひとりでいた。

「レイン...... 一人か」

「ああ、僕はギルマスからいわれてここにきたんだ」

「足止めかよ」

「違う。違う。 君たちをここで仕留めてこいってさ」

 そういって笑顔なくいった。

「切り捨てられたのか」

「ちがう!! 僕は......」

「そんなやつのために命までかける必要がどこにある」

「うるさい! どうせ現実に帰っても、居場所なんてないんだ...... 気が弱い僕は、学校でも家でもなにも言い返せない。 ここだけが僕でいられるんだ......」  

 レインは目を伏せいった。

「お前のなんといおうと、我々はほぼ50オーバーが七、お前は60だ。 巨人を使っても勝てる見込みはない。 そこをどけ」

 リンキュルがそういうと、レインは目を開けにらんだ。

「プレイヤーが二人レベル50...... 一人は40、あとはNPCが四体、その程度でこの僕を倒せるとでも、キーガ!!」

 レインの前に魔方陣があらわれ、前の巨人が現れた。

「いけ!!」

 巨人が走ってくる。

「私が抑えている間に少年を!」

 ラクセス団長は前に走る。

「ヘイトムーブ!!」

 ラクセス団長が赤く光ると、巨人は団長をおった。

「よし! いくぞ! サナたちは先へいけ」

 ヤマトとテラリスがレインへと走る。

「僕をなめるなよ! ザーラ!」

 レインの前に魔方陣があらわれ、四本腕の巨人がでてきた。

「また!!」

 ヤマトたちが巨人と戦う。

「いまならレインをおれたちで倒せばいい」

「だめだ! これ以上離されたら追い付けなくなる!」

「ここはおれたちに任せて先にすすめ!!」

 一瞬躊躇するが、アイたちと顔をみて先へすすむと、『シナリオ仮世の王推奨レベル90』と表示された。

「なんでこんなときに......」

「ここまですすむとフラグがたつのかしら!」

 その事に奇妙さを感じながら先へとすすむ。


 階段になった幹を上へ上へとのぼる。

「うああああ!!」 

 そう人の悲鳴のような声が聞こえてきた。

「いる!」

 アイにいわれて少しゆっくりとうえにあがると、誰かが剣を刺され光りに消えていくところだった。

「やっときたね。 待ちかねたよ。 さっき一匹取り逃がしたんでね」

 そういったのはエイジだった。

「お前も帰りたくないのか......」

「いいや、別に。 俺は楽しめればいいんだ」

「人まで殺してか......」

「ああ、そういうゲームでしょ。 現実もここも」

「戦わない方法はないのか」

「もちろん...... 君に斬られた腕は痛かった...... そしてこわかった。 死の恐怖...... だからこそ生の実感がえられる。 現実でもえられなかった実感がね」

 そう恍惚の表情をしたあと、笑みをとめた。

「......これはプレイヤー同士だ。 そいつはいらない」

 そういうと剣を向け、一瞬で間合いを詰められる。

 ガキンッ!!

 おれはリンキュルに向けられた剣をはじいた。

「やめろサナ! こいつは私がやる!」

 リンキュルはそう叫んだ。

「だめだ! こいつは一人でやれない! 死ぬだけだ!」

「かまわない! 私はどうせ生きてない!」

(どういうことだ!?)

 そう考えたとき、目の前にエイジがあらわれる。

「すきだらけだよ。 殺しあいに邪魔だからこんなプログラム消して楽しもうよ」

(しまっ......)

 キィン!

 だれかが目の前でエイジの剣をはじいた。 エイジは後ろに飛ぶ。

「お前は......」

「みんなのアイドル、エミリちゃんよ」

 それはエミリだった。

「頭のおかしい双頭の蛇《アンフィスバエナ》のギルマスがなんのつもり? 邪魔すんなよアイドル」

「あんたとは気があいそうなの。 頭のおかしい同士、あたしと殺しあいしましょうよ」

「おれたちも!」  

「いらないわよ。 私はシンプルに楽しめそうだったから姿を消してあんたたちについてきただけ。 あんたらは先にすすみなよ。 こいつはあたしがやるわ」 

 そういうとエイジと斬りあっている。

「......ここは任せましょう。 私たちでは足を引っ張る」

 アイにうながされる。

「わかった。 エミリ死ぬなよ」

「殺すなよ。 でしょ!」

 そういって剣を振るうエミリを背に、おれたちは先へとすすんだ。
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