オルタナティブバース

曇天

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第五十二話

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「くっ! レベル30とはいえプレイヤーはやはり強い......」

「ぐはっ!!」

 隣でエレナがプレイヤーをぶっとばしている。 

「こいつ!! 速いし魔法も効かない!」

 ガキッ!

「ぶはっ!」

 腕で剣をうけたエレナは武器ごと相手を殴り倒した。 

 アイも海王の杖で水流をおこし、プレイヤーを飲み込んでいる。 リンキュルも小型のゴーレムたちで次々とプレイヤーをたおしていた。

「ぐあっ!!」

「よし! これで最後か!」

 何とかこっちのプレイヤーは倒した。

(エレナは強いな...... 助かった。 だがあっちは......)

 セイとヤマトたちの戦いは圧倒的にセイが押している。

「このフィールド! 中に魔法も通さない!」

 光のシールドがあり、アイがヤマトたちに近づけないでいた。

「多分、中への侵入を拒むアイテムか魔法、竜《ドラゴン》のスキルかもしれない」

 リンキュルがいった。

「皆やられたか...... やつら口先だけだったな。 やはりギルマスのいうとおりか...... しかたない。 お前たちを倒して他のものたちも私が倒す」

 そういって流麗な剣技と竜《ドラゴン》息吹き《ブレス》でセイは、ヤマトとテラリスを打ち倒した。

「きゃあ!!」

「ぐわっ!」

 フィールドが解除された。

「せ ......セイ、あなたがなぜこんなことを」

 テラリスはそうきいた。

「......私は願いを叶えるためにここにきたからだ」

 セイは言葉少なにそういった。

(あのメールか......)

「戦う前に理由を聞いておきたい。 正直、本当にもとの世界に戻れるならお前たちに城を渡してもいい」

 おれが聞くと少し沈黙して、セイは答えた。

「お金だ...... 妹が病気なんだ渡米して手術には多額の治療費がいる。 どうしても工面がつかない...... 私は絶望の縁にいた。 そこにあのメールがきたんだ。 それでこのゲームに参加した。 ほとんど叶うことのないだろうが、いちるの望みを託してな......」

「だが、そんなのは嘘かもしれない」

「そう思っていたさ。 それでも託すしかなかった...... アイテムや強くしたアカウントを売買できるかもとも思った」

「そんな可能性でこんなことまでするのか?」

「いいや、今はちがう。 プレイしていたとき、あるギルドマスターからメールがきた。 協力すればその金を現実で用意してやると...... 仮世の王を倒し願いが叶わなくても、そっちなら......」

 確信めいてセイは答える。

(どうやらセイは双頭の蛇《アンフィスバエナ》のギルドマスターが本当に金を用意できると確信しているな......)

「だから、お前たちを倒して城を持ち帰る。 私が仮世の王を倒してやる。 だから城を明け渡せ」

 そういって剣を構え、前に進んでくる。

 アイとリンキュルが魔法を放つ、それを剣できりさいた。

「これは魔法を切り裂く剣【魔法剣、アルグルド】だ。 私には魔法は効かない」  

(魔法を斬る剣...... どうする城を渡すか...... ただ強くても一人で仮世の奴らの王を倒せるとは思わない。 おれたちが手伝うか......)

 そう考えるが、ひっかかることがあった。

(さっきのプレイヤーの口ぶりだと、セイが手を下さなくても、そのギルドマスターはおれたちを殺してもいいとかんがえてる...... その考え方が危険だ。 やはり......)

 おれは剣をかまえる。

「戦うのか、確かにお前は強い。 しかし剣術はしろうと、私には届かない」

 一瞬で間合いに入ってきた。 

「クリア!」

 クリアが金属となって飛び出した。

「!?」

 そのとき一瞬のすきをみて剣で攻撃する。

「くっ!」
 
(しまった! かわされた! 浅い......)

 腕をかすりその場所が凍る。

「まさか、私と同じく召喚を使うとはな...... しかもその剣は氷の剣か...... 一瞬で凍らされるとは、だがもうすきはつくらない」

 そういうとセイは腰を低くして居合いの構えをたもつ。

(居合い...... 後ろにフィールドができて逃げられない。 クリア)

 おれはクリアをおれの後ろにつけた。

「何をしようが無駄だ。 悪いが抵抗できないように腕をきらせてもらう!」

(しかたない! 覚悟を決めろ!) 

 目の前に光が見えた。 その瞬間おれは腕をだす。 それと同時にすさまじい痛みが走る。 

「ぐあああ!」

(意識を保て...... 左手で)

 左手で剣をふるう。
 
 ガキッ!!

 剣で防がれた。 おれの手から剣がおちる。

「驚いた。 その怪我で剣をふるうのか......」

 おれは地面に膝をついた。

 ザシュッ

「なっ!」

 驚くセイの顔がみえる。 おれはもっている剣をふるい、セイの胸をきっていた。

「くっ! いつの間に! だがこの浅い攻撃では...... なっ! 凍る! なぜだ。 さっきのその剣は地面に......」

 セイの体が凍っていくのをみて、おれは意識をなくした。

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