オルタナティブバース

曇天

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第四十一話

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「これは......」

 ラーシェは城をみて驚いている。

 おれたちはラクセス傭兵団に協力してもらうために、反対しているラーシェに城にきてもらった。

「あの人たちは......」

「元々はバルトランドのロニーニ村の住人だよ。 男たちが戦いに駆り出されそうだったから、こっちにきてもらった」

 畑を作っているひとたちをみていたラーシェはうなづく。

「......なるほど、プレイヤーではない普通の人々ですね...... 男手がなくなれば生活もままならない。 それでここの防衛を我々に頼むと」

「ええ、襲われたら戦えないものは城へ避難させますけど、プレイヤーは少数とはいえ、さすがに複数箇所から攻められたらまもれない。 警護の人間が必要なんです」

「......天樹にいかせてはならないか...... とはいえ、これだけで信じるわけにはいかない」

「ではどうすれば信じてもらえますか」

「我々と共にネストに向かってもらいます」

「ネストに......」

「ええ、戦場のほうが互いのことがよくわかるでしょう」

『レアシナリオ【傭兵団との絆】推奨レベル40』そう表示された。

(更なるレアシナリオか......)   

「......わかりました」

 傭兵団に一時警備を任せ、おれとテラリス、アイとヤマトでラーシェについてネストへと向かうことにした。


 おれたちはラーシェにつれられ、巨大な木々が生える森へときた。

「ここは、モンマクトル大樹海だ!」

 テラリスは見上げるほどの巨木を嬉しそうにみている。

「そういえばテラリスがきたいっていってたっけ?」

「確かに壮大だな。 天樹ほどじゃないが、一つ一つの木の幹が壁ぐらいある」

「ええ、とてもきれい」

「みなさん、この奥です。 ここのモンスターはかなり強い...... 覚悟してください」

 ラーシェのいうように、モンスターたちはレベル40はあり、かなり強い。
 
「だけど、おれたちも強くなってるし、なんとか進める」

「ああ、俺も殺さずにいけるからバンバンきれるぞ」

「そんなことだと、いずれ覚悟を決めねばならん時に困るぞ」

 そうテラリスはヤマトにいう。

「わ、わかってるよ」

「でもヤマトがHPを減らしてくれるから、虫を捕えるのが楽になったよ」

「......さすがですね。 ですが、私語が多い」

 魔法と剣をふるいながら、ラーシェがあきれたようにいった。

(ラーシェも簡単に倒していくな。 さすがレベル46)

「私は先をみて来ます。 あなた方は警戒を」

 そういって、ラーシェは先に進んだ。

「一人で平気ですか?」

「ええ、私は無音《サイレント》のスキルで気づかれずに索敵できます。 逆に一人じゃないと、気づかれかねない」

(確かにさっきから足音なんかはしないな)

 
 おれたちはしばらく待っていた。

「遅いな......」

「まあ、音もしないし、おそわれた訳じゃなさそうだけどな」

「あれほどの手練れだから、即倒されるってことはなさそうだがな」

 テラリスがそういった。

「とはいえ遅い。 すこし探すか」

 そう立ち上がろうとしたとき、アイは魔法を唱える。

「ブレイズブラスター!」

 猛火が周囲を焼きはらった。

「アイ!? どうした!」

「いるよ......」

「はははっ、やはり姿をけしていても、ばれるね」

 炎のなかから、笑いながらエイジがあらわれる。 

「くっ、エイジか!」

(前とちがって装備が薄い)

「......ああ、君たちを探してやっと見つけた。 さあサナ殺しあいをしよう」

 その目に周囲の炎がうつりこみ、エイジの狂気がやどっているように見えた。

「すきがあるヤマト!! いくぞ!」

「お、おう!」

 無防備にたっているエイジにテラリスとヤマトが切りかかる。

「四連剣!!」

「慈剣《マーシーブレイド》」

 二人の剣をよけもせず、エイジがはじいた。

「ば、ばかなっ!」

「嘘だろ!」

「......パリィだよ」

 そういってエイジはにやつく。

(攻撃時にタイミングをあわせて弾くパリィ、でも狙ってできるもなのか?)

「......俺はさ。 この間の戦いで気づいたんだ。 死に瀕したときの楽しさ...... 俺がこのゲームをするのはスリルを感じたいんだって......」

(だから、また死ぬかもしれないって感覚を得たいがため、防御を捨て攻撃に特化したのか)

 そういうと高速で近づき、連続で剣をふるう。

「ひゃはははははっ!」

「くっ! なんだこの重さ!」 

 おれはなんとか剣を防ぐ。 

「どうしたの!! そのままだと削り殺しちゃうよ! また背中の剣で攻撃してきなよ!」

 激しい攻撃に押される。

 ヤマトとテラリスが攻撃にくるが、容易く弾かれている。

「君たちは面白くない...... 特にヤマトだっけ、君は本気できれないでしょ」

 エイジはヤマトに指を指していう。

「......くっ、うるせえ!」

 ヤマトは剣をふるうが、かわさないエイジの頭の辺りで止めた。

「ほらね......」

 エイジはヤマトをきりさく。

「ぐあああっ!!」

「ヤマト!! アイ!!」

 ヤマトはテラリスとアイにまかせて、おれはエイジに剣を振るう。

「あいつじゃ、ダメだよ。 人も殺せない。 この先お荷物になるよ」

「お前にヤマトのなにがわかる!」

「君だってわからないでしょ。 まあ君たちにこの先なんてないけどね!!!」

 なんどか打ち合うが、全てパリィされた。

(こんなにパリィできるわけがない! なんだ!!) 

「......無駄だ。 防御力がなくなるが、パリィ可能な時間が増える装備を全身につけてるからね」

 パキィン!! パリィされておれのストライクブレイドが地面に落ちる。 目の前に黒い大きな鎌が振り下ろされるが、クリアにぶつかられなんとかかわせた。

(ダメだ...... やはりドレインソードで狙うしかない。 だがパリィされる、こいつそれが狙いだ。 仮に当てられても確実に殺してしまう。 なにか......)

 インベントリをさぐる。

(これは......)

 おれは背中のドレインソードに手を掛けた。

「うふふふふっ、そうだ。 それでいい! 殺す気でこい! 俺か君のどっちが死ぬかだ!」

 エイジはそういって嬉しそうに無防備に左右に両腕をひらいた。 

(やるしかない!)

 おれは走り、ドレインソードを抜き放った。

 パキィィィン

 剣は弾かれた。

「死になよ!!」

 ザシュ!!

 その瞬間、宙を腕がまった。 
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