オルタナティブバース

曇天

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第三十七話

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「あそこでいいか」

 ルーテシアの森の奥に城を浮かせる。 

 おれとアイ、ヤマトはクエイグさんのもとに向かった。

「下に筒のエレベーターがおりるのか。 わざわざ着陸しないですむからいいな」

 ヤマトはそうエレベーターをみていう。

「襲われるのは誰かが天空船を手に入れたらか......」

「リンキュルとテラリスが残ってくれてるから平気でしょ」

 アイがそう話す。 


「おお! サナか! 元気だったか」
  
「むおっ! 苦しい」

 おれはクエイグさんに、抱き締められる。

「ああ、悪いな! がはっはっ」

「はぁ、クエイグさんアイテムをみてほしいんだけど......」

「おお! どれ!」

 クエイグさんに、アイテムやドロップしたモンスターをみせる。

「なるほど...... すまないが、俺にはもうこれ以上の強いアイテムはつくれないな」

 困ったようにクエイグさんはこたえた。

「そうか......」

「ああ、それ以上の装備やアイテムなら、バルトランドのルブロにいるラバンドという錬金術師《アルケミスト》に教えてもらいな。 いま場所を教えてやる」

『シナリオ【ルブロの錬金術師《アルケミスト》推奨レベル30』と表示された。

「あたらしいシナリオか。 いってみるか」

「そうね」

「ああ」 

 おれたちはクエイグさんから場所をおしえてもらった。


「ここがルブロ、湖だったのか」

 ヤマトが大きな湖をみていう。【ルブロ湖】と表示されている。

「このほとりに...... あった工房だ」

 木造の工房を訪ねる。 中からはなにかを作っている音がする。

「すみません」

「なんだい? 忙しいからよそを当たんな」

 そうドアごしに声がする。

「いえ、クエイグさんから教えられてきたんです」

「クエイグ...... わかった入んな」

 なかにはいると、一人の小柄な老婆が、釜で紫の液体を混ぜていた。

「......魔女」

 小声でヤマトがいうと、こちらを老婆はにらんだ。

「錬金術士《アルケミスト》だよボウズ」

「ひっ」

「あのラバンドさん。 おれたちアイテムを作ってほしいんですけど」

「ならクエイグにいいな。 あのクエイグの小僧の作ったもんで十分だろ」

「それがクエイグさん本人から、もうこれ以上のものは作れないといわれまして」

「ふぅん。 あの小僧がねぇ...... まあ見せてみな」

 おれたちはアイテムを見せた。

「なるほどね...... 確かに高レベルなモンスターの素材やアイテムだね。 それであたしに会いに来たってことかい」

 そういうと、ラバンドさんは椅子に座り、葉巻をくわえると火をつけた。

「すごいばあちゃんだな......」

「お姉さんといいな!」

 ラバンドさんはヤマトにそういった。
 
「いや、それは無理だろ......」
 
 ヤマトは困惑している。

「で、作ってほしいってことは、ただって訳にはいかないね」

「お金なら......」
 
 アイは金額をきいた。

「いいや、金はいい。 ちょっと取りに行ってもらいたいもんがある」

「......おつかいかよ」

「ただの使いじゃない。 ほとんどだれも寄り付かない場所だよ。 やばすぎてね」

 そういってヤマトにラバンドさんはニヤリと笑った。


「ここがリステンの洞窟か」

 おれたちはラバンドさんから頼まれた【ブルークリスタル】を手に入れるため、湖の近くの洞窟へやってきた。

「ええ、【錬金術士のお使い】っていうレアシナリオにはいったわ」

「二人をおいてきたのはまずかったか......」

「まあレベル30のおれたちでやれるだろう」

 ヤマトは笑顔でそういう。

【リステン青の洞窟】と表示された。

 洞窟内は青く光り幻想的な光景をうつし出していた。 モンスターを倒しながらその美しさに目を奪われる。

「すごいな。 忙しすぎて今まで景色をちゃんとみてなかったけど」

「きれいね。 この世界は自然も破壊されてないから......」

 アイがそうつぶやく。

「苔か、青く光ってる」

 ヤマトが壁をさわる。 手のひらに光る苔がつく。

「一応ドロップするな」

「ここの生態系も環境から生まれたはず」

 アイも興味深げに苔をさわっている。

「そこまで計算できるってどんなシステムなんだ? それにキャラクターの人格で普通のゲーム何倍分...... そんなものじゃないだろうな」

「わからないわ...... 私このゲームの会社を調べたんだけど、元々は外国のAI技術の会社だった。 そこを買収して今の会社【エルダーバース】ができたみたい」

「こんなゲームつくるなんて巨額の資本が必要だな」

「ええ、新規参入なのにその巨額な資金がどこからでたのか? それにMT《マインドトランスファー》技術はまだ安全性も確立してないのに、ベータとはいえリリースできたことも謎なのよね......」

 アイはそう怪訝な顔をしていう。

「それで実際に事故が発生した...... か」

(本当にこれは事故なのか...... もし意図的なら...... 一体なんのために......)

 おれたちは地下へとおりていった。


「おい! 湖がある」

 先に下にいったヤマトに言われておりると、エメラルド色をたたえた地下湖がある。

「何かくる!」

 アイがいうと、みどりの湖の底から黒い影が近づき、湖の水面を盛り上げる。

「ギャオオオオゥゥ!!」

 そう咆哮して水棲恐竜のような青い光沢のモンスターが現れた。
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