オルタナティブバース

曇天

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第三十二話

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(リンキュルはここの人たちより、おれたちにシンパシーを感じているのか...... だからついてきたのかもしれない)

 そうリンキュルの寂しそうな横顔をみる。

(それにしてもここまで、複雑な感情をどうやって情報処理しているんだ...... 信じられないデータ量のはず、特定のキャラクターだけなのか。 いくらなんでも表面上だけだろうが、それにしても)

「そうか......」  

 おれは言葉につまる。

「サナ、お前のもってるスキルをみせてくれないか?」

「クリアを?」

「私はお前たちにとても興味がある...... 特にプレイヤーしか使えない力に」

「ああ、かまわないよ。 クリア!」

 クリアが姿を現した。

「これがスキルか...... 魔力でもなく、なぜ物理的に存在できる? 無から産み出されるのか?」

 リンキュルはそうぶつぶついいながら、クリアをツンツンとさわっている。

(さすがにリンキュルにプログラムされたAIだといっても理解されないか、もしくは理解してもショックを受けるだろうしな......)

「なあリンキュル、その魔導器《マギカレガリア》ってなんなんだ? 普通のアイテムとは違うのか」

「ん? ああ、これは意思をもつアイテムだ」

「意思をもつアイテム?」

「そう。 魔導器《マギカレガリア》は、そのものが生きているようなもの。 所有者の意思を介し発動する。 そうだなこのクリアのようなものだ」

「そんなものが......」

(AIが入ってるアイテムってことか?) 

「おい......」

 おれが考え込んでいると、リンキュルの声色がかわる。

「あそこに人がいる。 プレイヤーだ......」

 見ると複数のプレイヤーらしきものが、歩いてこちらにやって来ていた。

「プレイヤーがくる!」

 おれたちはすぐみんなのもとに戻り伝える。

「くっ! 【廃鬼人】《ディスコードオーガ》か!」

「ヤマト、まだ決まってないよ」

「とにかく戦闘の時のために陣形を!」

 おれたちはかまえた。 戦闘状態になり相手のステータスが表示される。 

(向こうには敵対する意思があるか)

「おー! いるな。 五人か」

「マジで、こんなところにいるってことは、けっこういいアイテムもってんじゃね」

「おい! プレイヤー三人とNPC《エヌピーシー》2体か、 しかも1体はレベル60だぞ! イベントか!」

「60、ボスか...... いやイベントじゃない、プレイヤーもいるな。 あとは30が三、20か...... どうする?」

 五人ほどのプレイヤーがそういっている。 

「最悪よ...... あいつらのタトゥーみて」

 そのタトゥーは二つの頭をもつ蛇だった。

「【双頭の蛇】《アンフィスバエナ》、PK《プレイヤーキル》のギルド...... お前たちここになにしにきてる」

「あん? ああ、なんかここに【廃鬼人】《ディスコードオーガ》の奴らがきてるってきいてな」
 
「そいつら狩りにきたんだよ。 ひゃははははっ」

(こいつら、あいつらと敵対してるのか)

「私たちは敵対するつもりはないよ」

 アイがいうと大笑いしている。

「そっちがなくてもこっちにはあるんだよ。 せっかく獲物がいるのに見逃すわけないわ」

 その中の女がそう笑いながらいう。

「逃げられないな。 相手は五人、全員レベルは40オーバーか...... 問題はEX《エクストラ》スキルだな」

 リンキュルがそう小声でいう。

「やるしかないか」

「いけえ!! パピルザク!」 

 そう向こうの一人がいうと、おれたちは砂嵐に包まれる。

「くっ! 見えないアイ!」

「三人は三方に、二人いないわ! いえ上に一人。 一人が突っ込んでくる!」

「死ね!」

 ビュンビュン、ビュン!

 砂嵐をさいて無数の斬撃がとんできた。

「アイスゴーレム!」

 リンキュルがゴーレムで斬撃を防いだ。 

「ぐっ! 飛んでくる斬撃か!」

「ヤマト!」

「わかった!」

 テラリスとヤマトが剣をふる。

「クロスブレイド!!」

(連携技か! いつのまに!)

 二人の剣が砂嵐を切り裂く。 空に大きな翼のある女性にのる女が飛んでいる。
 
「下からくる!」

 アイにいわれ飛びのくと、地面から鋭い尻尾が飛び出してきた。

「ちっ! はずした」
  
 巨大なサソリにのった男が地面から現れた。

 ヤマトが双身《ダブルボディ》で二人になると剣をふるい、サソリをきりさく。 

「くそ!」

 男は逃げようとしている。 その時、鳥女が砂嵐を起こした。

(あの鳥女が砂嵐か!)

「こいつらけっこうやる。 俺たちもいくぞ!」

 後ろの二人がそれぞれ魔法で攻撃してきた。 

「危ない! テラリス!」

 おれたちは狙われたテラリスの前にたつ。

「アイスフィールド」

 リンキュルが声が聞こえた、その瞬間、砂だった地面は一気に凍りついていく。 プレイヤーたちの足が固まる。

「なっ!」

「くそ! ハーピー! 砂嵐よ!」

「サナ! 空のやつを!」

 リンキュルにいわれ、おれはストームグラディウスで竜巻のような風を空に放った。

「きゃああ!」
 
 地面に鳥女ごと女は落ちてきた。
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