オルタナティブバース

曇天

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第三十一話

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「レキさんはなんていってるの?」

 アイがそう聞いてきた。

「ああ、東でプレイヤーの説得をしているみたいだ」

 おれたちが船で港をでていた。

「そんな説得なんか聞くのかよ。 正直まともじゃない奴らだ。 うっぷ」

 ヤマトは船の横にへたりこんで怪訝そうにいった。

「わからないけど、今はレキさんのギルドは所属数なら最大勢力だから、戦いは避けるギルドもあるかも、東のプレイヤーも一枚岩じゃないみたいだからな」

「とりあえず、東の大陸を押さえてもらってる間に、私たちは魔導器《マギカレガリア》を先に手に入れましょ」

「アイのいうとおり、西の大陸クオラスクへいって魔導器《マギカレガリア》を手に入れよう」

「......西の大陸か」

「知ってるのかリンキュル」

「......私の生まれた国だ。 故郷はなくなったみたいだがな」

「なら案内してくれ」

「ああ......」

 そういうと、リンキュルは曇った空を見上げた。

(そういえば、なんでリンキュルは、故郷から離れていたんだ? 人嫌いと言ってたけど)

 おれはリンキュルをみつめた。


「ここが西の大陸の玄関口、ロイトロープだ」

 リンキュルがいう。 そこはそこそこ活気のある港町だった。

「意外に賑やかな町だな」

「ここは、小国ガーデンベルトの領地だからな。 他国からも漁師がくる」

「古代文明の遺跡があるのは、ここからさきのマギナエクナだ。 この大陸の半分をようする砂漠地帯だ」

 テラリスとリンキュルがそういい、おれたちはすぐに北へと向かった。

「ここがマギナエクナか......」

 マギナエクナと表示されるそこは、見渡す限り砂しかない砂漠だ。 

「暑いな...... ここまでリアルな必要あるか」 

 うだるような暑さのなか、ヤマトがそうぼやいている。

「明らかに体感が変わっている」

「ええ、感じかたもリアルになってる。 ということは......」

 アイが眉をひそめた。

「ああ、更に危険になってる。 激しい寒暖や毒、不用意に怪我すれば、HPがあっても、辛さで戦闘ができない可能性もあるよ」

「くるぞ! モンスターだ!」

 テラリスが叫ぶ。

「いくぞ!」

 おれたちは武器をかまえる。


「なんとか、倒せたな」

 おれたちは幾度かのモンスターとの戦闘で疲れきり、休憩していた。

「ここのモンスターは強すぎよ......」 

「ああ、リンキュルのアイスゴーレムがいなかったらやばかった」

「ここのモンスターのレベルは軽く30オーバーだからな」

 リンキュルはそう当然のごとくいった。

「リンキュルはレベルを調べられるのか?」

「ああ、アクティブスキル【鑑定】をもってる。 私は先をみてくる......」

「いや、警戒ならアイがしてくれるぞ」

「全方位を常に監視するのは無理だろう......」

 ヤマトにそういうとリンキュルは丘へとあるきだした。

「まだ、私たちに心を許してないわね」

「まあ、しゃあねぇさ。 出会ってすぐだしな。 しかも不本意ときてる」

「仕方ないな。 リンキュルは複雑な人生らしいから」

 そうヤマトとテラリスは、ゴーレムにのるリンキュルの背をみていった。

「少しはなしてみるか」

「そうだね。 お願い」

 アイにもそういわれたおれは、リンキュルのあとをおう。


 丘でリンキュルは偵察をしていたが、こちらにきづいた。

「なんだお前か...... モンスターもプレイヤーも接近はない」

「ああごくろうさま。 そのアイスゴーレム、万年雪の結晶から作ったのか」

「そうだ。 絶対にとけないあの雪の結晶なら、溶けないゴーレムを作れるっておもったんだ。 やっぱり正しかった! いや...... 別に」

 そう興奮気味で語ったがこちらをみて言葉を止めた。

「......それでなんのようだ」 

「いや、この前のことちゃんと謝ってなかったから、すまなかった」

「ああ、あれはもういい...... あそこの霧を見通せるなんて私もおもってなかったからな」
 
「ああ、アイの透視のスキルなんだ」

「そうか、プレイヤーのスキルには透視もあるのか、それで...... 正直プレイヤーはどんな能力をもつかわからないからな」

 そういうとしばらく沈黙がある。

「......サナ、お前たちプレイヤーとはなんなんだ?」

「おれたち?」

「......プレイヤーは明らかに普通の人間とは違う。 同じ様にレベルがありながらその能力は異質だ。 昔はいなかったのに急に世界に現れたという。 神や悪魔などというものもいる......」

 不安そうにリンキュルはこちらを見つめている。 

(そうか、この世界はこの時代になるまでプレイヤーがいなかったから...... 確かにおれたちの存在は異様だな。 だがレキさんの話ではAIは自分の常識内のこと以外、興味をもたないはず......)  

「なにといわれても説明が難しいな。 ただ君たちと同じだよ」

「私は同じじゃない......」

「同じじゃない?」

「......私は古代人の血を色濃く残していた。 だから魔力が生まれつき高く、更にこの魔導器《マギカレガリア》を使えた」

 そういうと首から下げたネックレスを見せた。

「魔導器《マギカレガリア》...... リンキュルももっていたのか」

「ああ、これはゴーレムを作る魔導器【械人のネックレス】...... 私はゴーレムを操れたが作るのは苦手だった」

「それでゴーレムを作れるのか。 なるほど確かにそんな魔法を使う人たちはみたことないな。 確か竜《ドラゴン》を操るプレイヤーはいたみたいだが...... しかしアイスゴーレムは強いな」

「レベル40程度はある。 私は魔法しか使えないから、壁役が必要たからな」

「それならこの国に重宝されたんじゃないのか。 なぜあんなところに......」

「............」

「いや、いいたくなければいいよ」

 リンキュルは少し沈黙してから口を開いた。

「......幼い頃はモンスターを倒せば誉められた。 それが嬉しくて次々ゴーレムをつくりモンスターを倒した。 でも周りはそれを次第にうとましくなっていったようだった」

「恐れだしたのか......」

「そう。 モンスターよりも私を恐れた。 最初私を排除しようとしたが私が反抗する姿勢をみせると、彼らは私を避けその存在がないようにふるまった......」

(そうしてリンキュルを避けていったのか...... いやリンキュルも避けていった)

「お前たちプレイヤーは特別...... 私と同じだ」 

 おれをみてリンキュルはそうつぶやいた。

 リンキュルが孤独感を感じているのを改めてしった。

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