オルタナティブバース

曇天

文字の大きさ
上 下
25 / 60

第二十五話

しおりを挟む
(海賊なのに子供...... おれたちよりすこし年上か)

「ああ...... うえっぷ」  
 
 海賊の少年は船のへりにしがみついている。

「か、頭《かしら》!? 大丈夫ですかい!」

「ああ...... うっぷ」

 気持ち悪そうに少年はよたよたしている。

「海賊なのに、酔ってるのか」

「か、海賊が酔ってちゃ悪いのかよ...... うっぷ」

 そう気持ち悪そうにいった。

「くだらん...... さっさと捕まえよう」

 テラリスが慎重に近づくと、少年は腰に携えた大きな曲刀をぬいた。

(カトラスとかいう剣か......)

 テラリスが一瞬で近づき、少年はそれに応じ剣を受ける。  

(テラリスの剣に反応した!)

 テラリスと少年は何度となく斬り結び、どちらもひかない。

(この海賊、強い!)

「この人プレイヤーよ!」

「本当だ!」

 何度となく斬りあう互角だ。

「うえっ」

 よたよたした少年にテラリスは止めの剣をふりあげた。

「ま、まって! 斬らないで!」

「えっ?」

 テラリスは剣を横にして少年を叩いた。

「ぐえっ」

 少年は舌をだしてのびた。


 気絶して縄に縛った海賊の少年が目を覚ました。 

「くそっ! 酔ってさえいなければ......」

「船酔いするのに海賊なんかするなよ」

「仕方ないだろ。 ゲーム始めたら、いきなり海賊どもに襲われて、叩き伏せたらシナリオが始まったんだから」

「ねえ! サナみて! レベル!」

 そこには海賊の少年の名前、ヤマトとレベル5の表示がある。

「ヤマトか...... ん? レベル...... まだ5!?」

「そうだよ。 おれは六期目のテストプレイヤーだからな」

(それでテラリスと互角か...... 元々の身体能力が強いのか)

「でもこんな危険なこと良くできたな。 倒されると死ぬんだぞ」

「はっ? 死んだらリスポーンポイントに戻るだけだろ? なにいってんだ現実と区別がつかないのか?」

 怪訝そうな顔で少年はヤマトはいった。 おれとアイは顔を見合わせる。

(もしかして、今の状況わかってないのか?)

 おれたちは帰れなくなったことをヤマトにつげた。

「な、ななな、なんだって!? 現実に戻れない!!」

 ヤマトは必死に頭をさぐっているが、あきらめた。

「ほ、本当だ...... ログアウトもできない。 バイザーもない......」

 事実をしって青ざめている。

「まあ、そういうことだ。 それで海賊のシナリオってなんだ?」

「あ、ああ、【秘密の海賊島の宝】だ。 なんか古代の秘宝がどうたら、正直推奨レベル20だったからレベルをあげるため、海でモンスターとか海賊、商船とか襲ってた」

「古代の秘宝...... どうするアイ?」

「どうやら名声が20だから多分非道はしてないみたいね。 殺してたら名声は下がるし、まあマナみたいな方法もあるけど、多分してないね」

「当たり前だ。 おれは海賊とか、悪徳な商人の船しか襲わない。 さすがにあのリアルなNPC《ノンプレイヤーキャラ》は殺せないしな」

(まあ、まともな倫理観はありそうか)

「じゃあ、ヤマトさん、おれたちと一緒にいかないか」

「パーティーか...... あんま人とプレイすんのは好きじゃないけどな...... だけど、いま死んだらガチで死にそうだしな...... わかった一緒に行こう。 だが敬語はやめろ」

「本当にこの者を仲間に加えるのか、海賊だぞ」

 そう怪訝そうにテラリスがいう。

「うん。 でもヤマトもプレイヤーなんだ。 しかもレベル5でこの強さ必ず戦力になる」

「ああ、よろしくなキレイな騎士さん」

「き、キレイな。 ......まあ二人がいいならいいだろう」

 ヤマトが仲間に加わった。


「あそこだ海賊島」

 ヤマトの指差すそこは高く細い山が二本たっている小島だった。

「上陸しよう」

 おれたちは上陸する。 

 砂浜があり、別段かわったところはない変哲もない小島だ。

「ここに秘宝が......」

「おれが最初に倒した海賊たちがもっていた地図だ」

 ヤマトがだした地図には島の地形と、✕印がかかれていた。

「ここか......」

「それなら、あの山か」

 そういいながらテラリスは、剣の柄から手を離していない。

(信頼してないな。 まあ本当にヤマトが信頼できるかはわからないからな)

「みんな進もう」

 おれたちは地図をたよりに先へと進む。 次々現れるモンスターを倒していく。

「お前らすごいな。 結構強いモンスターを簡単に倒していく」

 ヤマトは感心の声をあげる。

「ボサッとしてないでお前も戦わぬかヤマト!」

「へいへい」

 テラリスにしかられて、ヤマトはめんどくさそうに戦いに加わる。

(ヤマトはかなり調子がいいけど普通に強いな。 なんか普通の構えじゃない、しっかりしている)

 おれたちは洞窟の奥へと進んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...