オルタナティブバース

曇天

文字の大きさ
上 下
18 / 60

第十八話

しおりを挟む
 遺跡内はひんやりしていた。 少し湿気があるのか苔がはえている。 なぜか遺跡内は暗くない。

「暗くないな......」  

「ええ、なんでだろう?」 

「これ程正確な石の切り出しは、かつての古代文明に関わるか、模倣したものだろう」

 テラリスは壁をさわりながらそういう。

(古代...... 滅んだ文明のことか)

 おれたちが前にすすむと、おれの身長の半分はあるクモやカマキリが大量に現れる。

「アイ!」

「ええ!!」

 おれたちはファイアバードを放った。 炎は円形になり一瞬でクモたちが炎に包まれる。

「うん、連携技、威力が上がってる!」
 
「ええ、フレイムソーサーにかわったわ」

「すごいな。 そうだアイ、クモはその杖で操れないのか」

「ダメね。 クモは虫じゃないからかも、カマキリも仲間にできないね...... この遺跡のものは操れない」 

 おれたちは先へとすすむ。 

「はぁ、ここはクモとカマキリばかりだな」

「はぁ、地上も多かったし、マスターが生み出してるんだろう」

 テラリスが肩から上下させている。

(クモとカマキリを生み出すモンスター。 そんなのがいるのか)

「一度帰るか......」

「いえ、いるこの奥よ」

 目の前に大きな部屋がある。

 なかにはいると、おれの三倍はあるカマキリがあらわれた。

【ヒュージマンティス】そう表示された。

 ヒュージマンティスはミドルマンティスを次々生み出してくる。

「よし! フレイムソーサーだ!」

「わかった!」

 フレイムソーサーでカマキリたちを一掃し、おれは近づく。

「ダブルスラッシュ」

 貯めていたクロウラーソードでヒュージマンティスを一閃した。

「おお! やったな!」

「ああ、こいつは簡単だった」

「まって...... あれ」

 アイにいわれてみると、壁の隅にクモたちがいつの間にかいた。

「なっ!? いつの間に!! ヒュージマンティスは倒したのに!?」

 クリアがピョンピョンとんだ。

「上......」

 部屋の上をみると、高い天井に黒い何かがいる。 それは下へと落ちてきた。

 それは黒い糸にぶら下がった上半身は女性の巨大なクモだった。

「ニンゲン、シネ......」

『ユニークモンスター【アラクネ】』と表示される。

「なんだ!? 二体だと!」

「いや、さっきのがマスターで、これは元々ここにいたやつなのか!」

 アラクネは口から液体を吐き出す。

「あつっ!! 熱湯!??」

「ち、ちがう! これは酸だよ!」

 スリップダメージでHPがどんどんへる。

(まずい!! この痛みだと、HPがなくなるまえに痛みで気絶する!  もう使ってしまったクロウラーソードだとダメージがだせない!)

 アラクネはクモを産みながら、その糸を部屋中に放ちスペースをうばう。

 おれたちは剣と魔法で応戦するが、そうしているうちクモの数がどんどんふえていく。
 
「くっ、このクモもつよい!」

「これはレベル30なんかじゃない!」

「くそっ! クモも強くてアラクネまでちかづけん!」

「つっ!」

 アイの顔が苦痛に歪む。

「アイ!!」

「だ、大丈夫」

(このままだとスリップダメージより痛みで倒れる。 早くやつを倒さないと! なにか...... そうだ!)
 
「アイ! 疑心の笛だ!」 

「あっ! わかった!」

 アイは笛を吹いた。 不快な旋律が部屋に響く。 

 アラクネが酸をはき、自分のクモを踏み潰している。   

「ニンゲン! ニンゲン! ニンゲン!!」
 
「サナ、アイ、私がスキルを使う。 アラクネの足を止めてくれ!」

 テラリスかそういう。

「よし! アイ、フレイムソーサーだ!」

「わかった!」

 おれたちはフレイムソーサーを放つと、アラクネは炎に包まれた。 

「ギャァァア!!」 
 
 アラクネは糸から落ちて地面で悶えている。

 テラリスは走りだし飛ぶと剣をふりかぶる。

「【流星剣】!!」

 光り輝く剣がアラクネの胴にはいると、強く光る。

「あれが、弱点か! クリア! あそこを貫け!」 
 
 クリアは槍のようになると、はねとびアラクネの弱点を貫いた。

「ギャオオオオオオ...... ニンゲン...... ニ...... ン...... ゲン」

 そういいながらアラクネは細かい粒子となって消えた。

(こんなに人間に敵意があるなんて、モンスターだからか?)

 おれたちはなんとかアラクネを倒した。


「なんとネストのマスターモンスターとユニークモンスターを倒しただと!」

「信じられんな」  

 グオラスさんとアルバさんは驚いている。 

「ええ事実です。 兄上」

「ええ!! テラリス兄上って!?」
 
「ああ、わが兄たちだ」 

 そうテラリスは事も無げにいった。 
 
(どこかでみた顔だと思ったら、確かににてはいるな)
 
「......そうだな。 確かにそんな反応をするだろうな」

「ああ、刺客までさしむけたのだからな」

 二人は困った顔でこたえる。

「我らは王にこの地に左遷されたのだ」

「当然の報いだがな......」

「しかし、あれは貴族たちが自分達の優位をとるために、あなた方を利用しようとしたからで......」

「それでもその愚行を、止められず放置したのだから、責任は重い」

「すまなかったなテラリス......」

 二人はそうテラリスに謝る。

「ねぇアイ、この二人ってこんな感じなの?」

「話では傲慢な人物とあったけど、実際あったプレイヤーがいる訳じゃないしね」

 おれたちは小声で話す。

「しかし、テラリス」

「えっ?」

「お前は王に許可なく、勝手についていったであろう」

「い、いや」

「これは守備隊長としてはみすごせん。 違法は違法だ」

「うむ、国へと送還する。 兵士たち!」

「えっ? まって! 兄上!」

 テラリスは兵士につれていかれた。

「すまぬな。 この原野、存分に開拓してくれ」

「我らに必要なことがあればきこう」

 グオラスさんとアルバさんの二人はそういってくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...