オルタナティブバース

曇天

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第十四話

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「さて、アイテムができたらどうする?」

「そうね。 やはりシナリオを進めるべきなのかな?」

「帰るにはやはり仮世の王を倒すしかない...... か。 ただ本当にいるのか......」

「レキさんの話だと仮世の王はいるみたいね。 ただどこにいるのか、わからないし、それを探して倒そうとしてるみたいだけど...... でも多分」

 おれたちは遠くに見える天樹の影をみる。

「普通に考えると、あの天樹かな」  

「そうだと思うけど、根を登ってもそのさきへ辿り着けないらしいわ」 

「やはりそうなのか、あの先も途切れていた...... 何かアイテムか、フラグをたてないと無理なのか」

(天樹の蕾は関係してなさそうだな。 入手に気付きづらすぎるし......)

「つぎにいけるのは」

「この先に帝国があるけど、そのシナリオはかなり難しい上に報酬も少ないらしい。 あとは西の大陸クオラスクか東の大陸バランディアね。 でも東は......」

 そうアイはいいよどむ。

「レキさんは東の大陸はプレイヤーが集まってるって......」

「ええ、レキさんも確認中らしいけど...... どうもプレイヤーが暴れているのは本当らしいよ」

「なんで国なんか......」

「好き勝手やりたいからでしょうね......」

「でもこんなにリアルな反応をするのに、ゲームとはいえよくできるな」

「まあ人間、普段は善良でも、残虐な本性はあるからね。 ゲームだとそれがでやすいのかも」 

「まあゲームじゃなくてもいじめとかそういうのはあるからな」 

「特にこの世界ではプレイヤーという特別な存在になってる。 自分より下にみてる人間に対する卑劣さは、現実もゲームも変わらないのかもしれない......」

「そうだね」

「まあ、後アイテムの補充とゲーム内容の復習をしましょ」

「あ、あの!!」

 町を歩いていると急に声をかけられた。

 そこには軽そうな少年と気弱そうな少女がいる。 

(コージー、マナ...... プレイヤーだな)

「なに?」

「じ、じつは...... 一緒にパーティーを組んでほしくて」

 そう、もしもじとマナはそういった。

「そうそう! おれたちさっきパーティー組んだんだけど、マナは二人じゃ不安だっていうんだ」

 コージが少し不満そうにいった。

「パーティー......」

「いまプレイヤーがおかしいんです。 この間もいきなり襲われて......  
もうソロだと危険で」

(確かに、おれたちもこの間襲われたからな...... ただ二人を、信じていいかわからないな)

「聞いたか...... またプレイヤー同士がやりあってるって」

「ああ、なんかアイテムを奪い合ってるらしいな」

「何人も姿を消してるらしい」

 町の人達がはなしている。

(そんなに起こってるのか、でも二人ともネームが白いからPKをしている訳じゃないな)

「いいんじゃない。 確かに襲われるのはさけたいもの」

 アイがいうので、了承した。 コージーはレベル22、マナのレベルは20、おれたちとほぼおなじだった。

「何ができるのコージ、マナ?」

「俺は弓だな」

「わ、私は回復の魔法がつかえます」

 歩きながら話を聞いた。

「それじゃ、なにしようか」

「あ、あのひとつシナリオがあって、それにいくのはどうでしょうか」

「まあ、かまわないけど、どんなシナリオ?」 

「えっとレベル15推奨の【悪夢の谷】っていうレアシナリオです。 受けるには四人必要なんです」

「レベル15か...... 条件がプレイヤー数か」

「なるほど! それで四人いるのか!」

 コージは納得したようにいった。

「まあ受けられるね」 

「ええ、どうですか......」 

 自信なさげにマナが聞いた。

「ああ、かまわないよ」

「そうね」

「おれももちろんかまわないぜ!」

 マナはほっとした顔をしている。

 おれたちはそのシナリオの悪夢の谷へとむかった。


「ここが悪夢の谷?」

 着いたそこは普通の谷のようだった。

「特におかしな所はないけど」

「まあ、特にモンスターも強くもないな」

「レベル20以上のメンバーだからかもしれませんね」

 そうマナは笑顔でいった。

 しばらくすすむと大きな滝がみえてきた。

「この滝の裏らしいです」

 マナにいわれておれたちは滝の裏へとはいる。 裏には洞窟があった。

「この洞窟にレアアイテムがあるの?」

「ええ、前にそういう噂をききました。 確か【疑心の笛】だったかな......」

「ふーん、別にほしそうなものじゃないな」

 興味なさげにコージは弓をひいている。

「なにか来るよ......」

 洞窟向こうから、大きな紫色のキノコがあるいてくる。 【パープルマッシュ】と表示される。

「キノコかよ。 ちょうど買った新しい弓をためさせてくれ」

 コージが前にでて矢を放った。 キノコに当たると紫色の胞子がとまった。

「ファイアランス!」

 アイの魔法でキノコは光に消えた。

「............」

「大丈夫か、コージ?」

 コージは振り返るとこちらに弓をむけた。

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