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第五十六話

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「ここは......」

 目か覚めると、そこはどこかの部屋のようだった。

「お目覚めになりましたね。 ここはザルデン王の城です」

「よかった......」

 ブレアとクライオがそうほっとした顔をしている。

「あれは......」

「これです」

 クライオの手に魔力結晶がある。

「さすが、マサトさまだ。 あれを浄化してしまうなど」

 ブレアがうなづいている。

(いや、あれは失敗したはず。 おれは浄化どころか逆流してきた黒い魔力にのまれかけた...... これはまさか)

『ええ、私です。 モンスターたちの負の魔力吸収の調整が終わり会話が可能となりました』

(おお! やっぱり精霊ちゃん! 助かったよ! 全部ぶっ壊すとこだった!)

『............』

(あれ、怒ってます?)

『......いいえ』

(で、でもしょうがなかったんだよ! あれを野放しにしたらどんな厄災があるがわからなかったんだもん!)

『それもですが......』

(えっ? 他にあった)

『......あなたはすこし前にも禍々しいものを取り込みましたね』

 その声から刺々しさを感じる。

(禍々しいもの? いや、覚えがないけど......)

『とぼけないでください。 処理がおわったときに禍々しいものがあなたに取り込まれました。 しかも二回も連続で』

(二回も連続で...... あっ! まさか、デュセとリーシェの料理......)

『あれで終わっていた処理を、再びやらなければならなかったのです』

(ああ、うん、ごめん...... でも、もどってくれて助かるよ)

『まあ、いいでしょう』

 いくぶんか声が落ち着いたようだった。

「それであれはなんなの?」  

『......まだなんとも。 ですが、かなり増大したあなたの力と、処理を終えて作った正の魔力、そして私の処理能力があがっていなければ、あのまま取り込まれた可能性が高いですね』

「そうか、黒衣の化者《ダークレイス》の仕業ならきついな」

「あんな力扱えるとも思えませんが......」

「一応警戒は必要ですね。 それと、意識が戻ったらザルデン王より連絡するように言われていますが、どうします」

 ブレアとクライオがそういう。

「会いに行こう」

 おれはベッドからおきザルデン王へと会いに行く。


「起きたか......」 

 そうほっとした顔でザルデン王は答えた。

「あれはなんなのですか? 黒衣の化者《ダークレイス》が仕掛けたものですか?」

「わからぬ...... だが、黒衣の化者《ダークレイス》ではないとおもう。 我らが鉱山を掘るうち、遺跡のような場所にでたらしい......」

「確かにあの場所は人工的なものでしたね」

「最初のものたちが帰ってこぬので確認に向かわせたものたちが、やつをみた。 かなりの犠牲がでたが、あの場所より出られぬらしかった。 しかしやつから放出される魔力は他の鉱山まで届き、普通のものは耐えられぬ」

「なるほど、確かにあそこに長時間は無理だな」

 クライオがうなづく。

「そうだ。 だが、兵を投入してもやつを倒すのは難しいと感じた。 
そこで閉山するしかなかった...... 倒してもらったことは感謝する。 しかし我らは......」

「かまいません。 ザイクロフトにここが攻められるよりましですから、信頼をえられればそれでかまいません」

「すまぬ...... 信頼ならば十二分にした。 なにか他にできることはあるか」

「なら、技術者をお借りしたいです。 うちの職人を育てたいのですが」

「うむ。 それならば容易い。 我が国でも指折りの職人をお貸ししよう」

 そう約束してくれた。


「ここがエルフの国か」

 大きな樹々に囲まれた町へおれたちははいる。

「そうよ。 エルフのセイルスティン国、巨大な樹海に守られた国」

 デュセがそういうと、リーシェがうなづく。

「ええ、【神樹】に守られた国ね」

「神樹って神さまなのか?」

「大精霊よ。 だからエルフは精霊を操ることもできる」

(大精霊ってことは精霊ちゃんと同じか...... そう聞くと、精霊ちゃんはすごいんだな)

『まあ、そうですが』

 声でドヤってるのがわかる。

 門を先に進むと天をつく巨大な木がみえてきた。 その幹に城がある。

「でかぁ! あれが神樹か!」

「そう。 あの神樹がエルフを守ってる。 なんか神さまから与えられたそうよ」

 デュセが思い出すようにいった。

(神...... おれ以外の神か)

 町は静かで人通りも少ない。 通りすぎるエルフもこちらを避けるように通る。

「なんか町も人もきれいなんだけど、なんか冷たい感じがする」

「エルフは自らを特別な存在と考えて、他の種族を極力避けているからね。 いけすかないわ」

 リーシェがそう嫌な顔をしていう。

 おれたちはエルフの城へとむかった。

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